第32回

32. <ダンパー部品、オイルシール>

オイルシールはダンパーの中のオイルがシャフトから外に漏れ出ないようにします。 ダンパーには部品のつなぎ目ごとにオイルが漏れないようにシールが装着されていますがそれらはほとんどすべてOリングです。シャフト部だけオイルシールを使うのはなぜでしょう?
シャフトのシールにOリングを使ったらフリクションでとてもスムースな動きは出来なくなってしまいます。 低フリクションはダンパーの性能のうちでも重要な項目ですから 作動がコキコキではいけません、スルースルーと動かなくてはいけません。

その為のシャフト専用のオイルシールです、まずシャフトとの接触がOリングの面から線になります(オイルシールのここをリップと言います)、これでフリクションを減らします、またシャフトからオイルを掻き落とすように角度が付いています。

量産車用のダンパーのオイルシールはゴムで出来ています油用では一般的な二トリルを使うのが普通ですが高温(120℃以上)になるダンパーは二トリルではもたないのでバイトンという材質を使います。二トリルは黒ですがバイトンは緑とか茶色とかの色が付いている場合が多いです。

純レース用のダンパーはゴムのオイルシールではなくテフロンベースの素材のオイルシールを使います。焦げ付かないつるつるのフライパンにも使われるあのテフロンです、フリクション低減のためですね。実際にはステップシールというTrelleborg という会社の製品を使っているのが多いのではないでしょうか。
格好が量産車用のゴムシールと大分違います、断面がモアイあるいはトリスのおじさんのようです、その鼻でオイルを掻き落とすのです。
量産車用のゴムシールはシャフトが横方向に多少ぐらついてもオイルが漏れないようにリップに横方向の柔軟性を持たせています。図でリップが垂れ下がったようになっているのがそれです、垂れ下がり部分で柔軟性を持たせているのです。 しかしレース用のダンパーはほとんどガス加圧式ですからこの垂れ下がり部に圧力が掛かってリップをぎゅーっと締め付けてフリクションが高くなってしまいます。
そこで垂れ下がりのない形状で柔軟性は裏から支えるOリングでまかなう形になったのです。でもゴムシールほどの柔軟性はありませんからシャフトやピストンのはめあいを精度良くして横方向のガタを小さくしないとオイルが漏れてしまいます。 このようにレース用のテフロンシールのフリクションは圧力に鈍感になるように作られているのでガス圧が高くてもそれほどフリクションが上がらないようになっているのです。

フリクションを減らすためにレース用のオイルシールにはダストリップがありません、ダストリップとは外から砂や塵が入り込まないようにするシールの部分の名称です、左の図に外を向いて付いているリップがそれです。
ですからレース用のダンパーはサービスが必要になりますし公道で使うとオイル漏れの危険が増します。

ステップシールを使っているのは純レース用ダンパーでアフターマーケット用とかビギナーレベルダンパーなどではゴムのOリングではなくて断面がXのXリングというのが使われたりします、Oリングのべた当たりを防ぐためにXの2箇所の線で接触するシールです。 ステップシールは価格が高いので。

いまどきはシャフトの表面粗さも良くなり、組み付け精度も高くなってガタも減り純レース用ダンパーでもオイルは漏れなくて当たり前になってきましたが昔はよく漏れたもんです。
オイル漏れはダンパー最大の敵ですね。

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