ちょっと話が流れからそれますがダンパーについて面白い記事を見つけたので解説します。
SAEのウェブサイトで新しいカマロに採用されたマルチマチック(ダイナミックサスペンションズ)のスプールバルブダンパーの紹介をしています。
スプールバルブはダイナミックサスペンションがレース用に開発して10年近く前から使われています。いろいろなダンパーの章で書こうと思ったのですが内部構造は一般には公開していなかったようなので遠慮していました。 今回ロードカー用のスプールバルブの断面図が公開になっていたので晴れて書くことができます。
構造は右の図のようなのですがワザとなのか分かりにくいので簡単にした絵を左下に載せました。
言ってみれば2サイクルのエンジンみたいでスプールが圧力に押されるとシリンダーに空いているポートが顔を出してオイルが流れるというものです。
ポペットバルブのポートが底じゃなく側面にある感じです。
何が良くて何が良くないのか?
最大の利点は減衰力の自由度が非常に高いことです。ポートの形状とばねの硬さしだいでどうにでもなります、図にポート形状と減衰力の特性の概略を示しました。
先すぼみや末広がりのポート形状でリニアやダイグレッシブな特性を自由に設定できます、ポートも放電加工やレーザー加工で開けるのでいかような形状にもできます。
レース用のダンパー場合バルブはダンパーのボディについているのでダンパー本体を開けなくてもバルブのシリンダーだけ交換すれば違った減衰力に変更できます。
スプール自体高精度な工作を要求するので減衰力の再現性が高い。
欠点は値段が高い。
なんか今までとは違うっていうのも特徴でそれで値段が高いのは我慢してねってところでしょうか。
ダンパーの原理としてはシム式やポペット式と何ら変わるものではありません。圧力損失によって圧力差が生まれ、圧力差がオイル流路を開き、開口と圧力損失がバランスするところで止まる、と。
すべてのダンパーは圧力制御弁です。ダンパーの動きが流量を決めて、その流量で何気圧の圧力損失を発生させるかがダンパーです。
記事の中でもじゃもじゃ頭のラリー ホルト副社長はレスポンスが素晴らしくいいと言っていますが、どうなんでしょう?
まずポペットやスプールの方がシムより質量が大きいですからバルブ自体のレスポンスはシムが良いはずです、そのスプールの動きの遅れがオイルの圧縮による圧力上昇の遅れを帳消しにするのでしょうか?するような気もするけどしないような気もします、どこかにそんな論文があってもよさそうなので要調査ですね。
お分かりの方、教えてください。
シム式ダンパーは減衰力のバラつきが大きい、対してスプール、ポペットは小さい、その中でもスプールは減衰力設定の自由度が高い、その意味でスプールダンパーは優れています、高い減衰力のシム式ダンパーはたくさん組むといやんなっちゃいますから。