第90回

90. <エクセルでもできるシミュレーション (1)>

これまで理論を説明してきましたがやはり理解を深めるには自分で振動のシミュレーションをしてみないと!

世の中にはMatlabのようなパワフルな数値演算ソフトがありますが高価だし誰でも持ってるわけではありません。 そこで簡単なモデルのシミュレーションをエクセルでやろうというのを2回に分けて説明します。
まずシミュレーションとか聞くとそれだけで難しく聞こえて「微分方程式を解いて計算するのか??」とか考えてそこで終わっちゃう人がほとんどだと思います。 でも全然そんな難しいことはしません、それでも図の左下にあるようにステップ入力に対するマスの動きが減衰していくところをシミュレーションできます。

時間シミュレーションは簡単な計算をすごく細かい時間きざみで計算するだけです、「今」は「一瞬前」の状態に「一瞬前から今への変化」を足した状態です、それを「今」から「一瞬先」、「そのまた一瞬先」と繰り返して計算するのがシミュレーションです。 簡単な仕事を繰り返すのはコンピュータがやってくれますからエクセルで1行だけ式を書いてあとはコピーすればOKです。

今回はその考え方と計算の流れを説明します。

シミュレーションの考え方はこんな風です
「今の変位」からマスに掛かる力を計算する
力をマスで割ると加速度が求められる
加速度を積分すると速度が求められる
速度を積分すると「新しい変位」が求められる

「新しい変位」を使って力を求める
以下1-4の繰り返し

まっそんな感じです、ちょっと違うけどイメージはこんなでしょう、実際に求められるのは速度の変化、変位の変化です。

積分っていう言葉で引いちゃってる人がいると思いますが心配ありません、微小時間で計算する限り微分、積分はただの割り算、掛け算です。
変位を時間で割れば速度ですね、もう一回時間で割れば加速度です、これが微分です。
逆に加速度に時間を掛ければ速度、もう一回時間を掛ければ変位です、これが積分です、そんだけのことです。

曲線を描くのにすごく短い直線をいくつもつなげて書くのと同じでどんなに無茶苦茶な変位でも微小な時間では直線運動です、だから単純に微小時間で割ったり掛けたりできます。 この時間が長いとその時間の中で曲線になってしまってうまくないので計算は細かい時間きざみでしないといけないのです。
では上の1-4を説明します、モデルは今まで使ってきた1自由度のマスばねモデルです、一番シンプルなモデルです。 モデル図の下にある式、これが1自由度のマスばねの微分方程式になります、慣性力と減衰力とばね力が釣り合ってますよ、という式です。
慣性力は加速度の関数、減衰力は速度の関数、ばね力は変位の関数、そういうわけで微分が出てきちゃうわけです。
入力は路面から“Z“として入力されます、形状はステップ入力、つまりは階段の1段みたいな入力です、求めるのはマスの動きです。

図の右側を見てください。
時刻(a)
あるとき(a)の加速度、速度、変位の3点セットがあります。

時刻(b)
微小時間Δt経った時、時刻(b)、路面から速度、変位が“・Z(b)、Z(b) ”の入力がありました。
ばね力はばねのたわみ(マスの変位と路面の変位の差)にばね定数を掛けた物
減衰力はダンパーの速度(マスの速度と路面の速度の差)に減衰係数をかけた物
この時マスの速度と変位はまだ求められていませんから一個前の値“・X(a)、X(a) ”を使います。
ばね力と減衰力の合計を質量で割ったら時刻(b)の加速度が求められます。

加速度が分かれば後は簡単です、加速度にΔtを掛ければ速度、もう一回掛ければ変位です。
これらは微小時間Δtの間の速度と変位です、いわば変化分ですから一個前の時刻(a)の速度、変位と合わせて時刻(b)の速度と変位が求められます。

新しい変位、速度と入力から次の加速度を求めます、あとはひたすらこれの繰り返しです。

===
- 今の加速度
- 速度、変位の変化分
- 前の速度、変位と合わせて今の速度、変位

- 今の速度、変位から次の加速度
===

このステップを覚えておいてください、次回実際にエクセルを作ってマスの変位を計算してみます。

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