第89回

89. <位相遅れ>

周波数特性、伝達関数ときたら位相の話はセットなので解説しておきたいと思います。

前回まで地面の動きに対してマス(車体)がどれだけ動くか、それが周波数によってどう変化するか見てきました。 今回は車体がどのように動くかを見ていきます、前回までが動きの量を見てたのに対し動きの関係を見ていきます。。 地面と車体が同じ方向へ動くのか、お互いに逆方向へ動くのか、その中間なのか、そういった2つの動きの方向の関係を位相と言います。

解説をイメージしやすくするために水ヨーヨー、ボンボンを使います、お祭りの夜店でするヨーヨー釣りのヨーヨー、水の入ったゴム風船にゴムひものついたあれです。 手が地面でゴム風船が車体です、地面と車体の関係が逆でばねが引っ張りばねですが理屈は同じことです。

ではまずはゆーっくり手を上下に動かしてみましょう、手とゴム風船は一緒に動きます、これは想像しやすいと思います、これを同相と言います、同じ方向へ動くから同相です。

ではだんだん地面の動きを早くしていきましょう、ゴム風船の動きが手の動きとずれてきます、位相が同相から変化してきています。 ヨーヨーを大きく連続して振ろうとしたらどうします?手と風船のタイミングをうまく合わせますよね、風船が降りきるちょっと手前で引き上げ始めて風船が上がりきる手前で力を抜いて手で押し返しますよね。 これこそが共振であり、手と風船のタイミングが共振の時の位相なのです。意識はしていなくても風船を大きく振ろうとして共振点を探って手を動かす速さとタイミングを変えているのです。 ゴムが強くなっても風船に水が多くて重くなってもうまいこと共振なんていう言葉を知らなくても共振を見つけるんですから人間の感覚は大したもんです。

この共振の時手はどう動かしてます? 意識してないからわかんないですよね、手と風船は1/4周期ずれて動いているんです、更にいうと手の動きが先行して風船がついていく形になっています。 1/4周期ずれってどれくらいよっていわれそうですがこれは0と1/2の半分ってことです、0周期ずれはさっき出てきた同相です、手と風船は同じタイミングで上下します。 1/2周期ずれは手と風船の動きがそれぞれ山と谷、谷と山というように真逆になります、これを逆相と言います。

1/4周期ずれは同相と逆相の中間、上に描いたように風船が降りきるちょっと手前で引き上げ始めて風船が上がりきる手前で押し下げるというタイミングになります。 1周期が360°ですから1/4で90°、さらに風船は手に対して遅れて動くので、「風船は手に対し90°の位相遅れ」という風に言います。

共振の時は位相90°遅れ、これは覚えておきましょう。

次に手がちぎれんばかりに速く上下してみましょう、もう風船はあんまり動きませんね、これは前回の周波数特性でも説明した通りです、さらに風船の動きを見ると手と逆方向に動いていると思います。 上にも書いた1/2周期、180°ずれの逆相の状態です、逆なので手より遅れてるのか先に進んでるのか見た目分かりませんが前からのつながりで遅れています。

ヨーヨーの例は共振と位相を理解するのに分かりやすいと思います、こんどヨーヨーするときは気にしてみてください。

図のように低周波から高周波へ車体の位相は地面の入力に対し低周波のゼロ(同相)から遅れていき共振で90°、高周波で180°(逆相)へと変化していくのです。

上側の図のように周波数特性の大きさの比率(ゲインというとプロっぽい)のグラフと下側の位相のグラフを組み合わせたものをボード線図(Bode plot)と言います、「1自由度のマスばねの伝達関数をボード線図で示し共振点がxxHzであることが分かります」なんて言ったらもう専門家のようです。

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