第8回

8. <圧力調整バルブ>

さてダンパーの最小構成を説明しましたが実際のダンパーが穴だけで減衰力を発生させている訳ではありません、希望の減衰力を実現するために圧力調整のバルブが組み込まれています。もう少し詳しくダンパーのバルブ機構について見て行きましょう。

これまではオイルの流れを絞っていたのはオリフィスという小さい穴でした、大きい穴では低い減衰力が、小さな穴では高い減衰力が発生します。納豆のタレをかけようとして袋を切ったときにちょっとしか切れなくて押し出すのに力は要るはタレは飛び散るはになったりしますがそれと同じようなものです。

減衰力の大小は穴の大きさで調整できますがその特性自体はどれも同じになります、速度に対して2乗カーブになります。 (ここでの速度は車の速度ではなくてダンパーの作動速度なのはよろしいですよね)
2乗カーブは弓なりのバナナ形状ですからゆっくりの動きの時は減衰力が低くても、速度が上がると減衰力がぐんぐん高くなります。こうなると減衰力が高すぎてサスペンションが動かなくなってしまい、乗り心地も非常に悪い物になってしまいます。逆に速い速度でちょうどいい減衰力にするとゆっくりの速度のときには減衰不足でふわふわしてしまいます。
穴だけのダンパーは構造は簡単ですがその代わり出来ることも限られてしまうのです。
そこで登場するのが圧力調整バルブです、簡単に言うと圧力で開いたり閉じたりする圧力逃がし弁です、ターボ車のブローオフバルブみたいなものです。圧力によってばねで抑えられた穴が開いてオイルが流れ出ることで圧力が上がりすぎるのを防いでいるのです。
このばねの固さやばねに掛けるプレロードやらを調整することで圧力(=減衰力)の特性を変えることが出来るのです。

次からそのバルブの仕組みを説明していきます。


と、その前にここで重要な事柄です、ダンパーが縮むことをバンプ、伸びることをリバウンドといいます、この時の減衰力をそれぞれバンプダンピング、リバウンドダンピングと言います。 他にはテンション/コンプレッション、伸び/縮み、伸び/圧、引っ張り/圧縮 とかいろいろの言い方がありますが、バンプ/リバンプ、バウンド/リバウンドとは絶対言いません。 どっちも「リ」をつけたりはずしたりして誰かが作ったと思われますが、「rebump」という単語自体存在しません、完全な和製英語もどきです、下手すると「revamp」(改良する)と間違われます。 驚いたことに素人ならいざ知らずサスペンションのチューニングを商売にしている人、ドライバー、さらに某シャシエンジニアまでが「リバンプを閉めて...」などと言ったりホームページやブログで書いたりしています。
ぜひ バンプ/リバンプ、バウンド/リバウンド はお使いにならないようご注意ください。

さらに言っておくとダンパーをひっくり返して付けるとバンプとリバウンドが入れ替わるって言った人もいますが逆さにしても伸びは伸びですから。

Copyright(C) 2007-2014   富樫研究開発