第75回

75. <リグレッシブ>

ブローオフつながりでリグレッシブダンピングです。
かなりマイナーなデバイスで、私の知る限り2社からしか発売されていませんから知っている人も少ないかもしれません。 2000年代の前半に一時期F1で使われましたがその後姿を消し、今は別のところから発売されています。

目的も効果もブローオフと同じですがブローオフの過激版と言ってもいいと思います。ブローオフがバンプ高速域で減衰力が上昇しないようにするのに対してリグレッシブは高速減衰力が中低速より低くなります。

原理はブローオフと同じくもう一つのバルブがバンプ高速で開くのですが、ブローオフが直動型の圧力制御弁なのに対してリグレッシブはパイロット型の圧力制御弁の変形になります。 パイロット型圧力制御弁のしくみは、まず設定圧力でパイロット弁が開いてオイルがリグレッシブ弁のオリフィスを流れ始めます、するとオリフィスの前後に圧力差が生じこの圧力差がリグレッシブ弁を押し開くという2段構えの弁です、これの特徴はリグレッシブ弁のスプリングには実際の圧力ではなくオリフィスの前後の圧力差しかかからないので高い圧力を制御するにも柔らかいスプリングを使ってバルブを大きく動かすことができる事です。

まあ同じ圧力制御弁ですからまともなら圧力は一定になっても下がることはありません、このリグレッシブ弁は圧力制御弁としては出来そこないで弁が開き始めると全開で開きっぱなしになってしまい圧力が下がるようにワザとしているのです。 一度開ききった弁はオイルの流れが変わるまで閉じないので減衰力はダンパーストロークの向きが変わってリバウンドになるまで低いままです。

本当にそんなこと出来るのかと思う人もいると思うので実測のデータが手元にあったのでのせておきます。(弁の開く圧力違いのプロットです)

ちょっとキワモノみたいなデバイスなので広がることはなかったですし今使っている人がいるかわかりません。

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