第71回

71. <乱流の利用>

もう一つニードルについて

流れには層流と乱流の2つがあると以前説明しました、層流はバームクーヘンのように層になった流れで乱流はてんでばらばらのぐちゃぐちゃの流れです。 ここで大事なのは圧力損失が層流は粘度の影響を受けるが乱流は受けないということです、粘度は温度で変化するので層流は温度により圧力損失が変化します。
つまりは層流による減衰力は温度に影響されやすく、乱流による減衰力は温度に影響されにくいという事です。 どういうことかというと層流による減衰力は暖まると粘度が下がって減衰力が下がり、寒いと粘度が上がって減衰力が上がり減衰力が安定しない問題が出てしまいます、「熱で減衰がタレる」なんて言い方もしますね。

ニードルを使ったアジャスターはニードルがテーパーになっていて流れを整えやすく流れの方向も変わらないのでオリフィス部の流れが層流になりやすくなっています。 対してシムによるピストン部の流れは局部的に流れが絞られるのと流れの方向が急に変わるので乱流になりやすいです。 ダンパーは低速の減衰力ををニードルで、高速をシムで出しているので低速域のほうが温度の影響を受けやすいことになります。 困ったことに人間は低速の減衰力に敏感なので温度が上がって低速の減衰力が下がると「フワつく」とか「タレた」とか感じます。

低速アジャスターを乱流を使うべくニードルではなくスロットにして実験してみました。 絞りを急激にして流れの方向を変えて流れが整わないようにしています。 ニードルアジャスターと乱流アジャスターで室温で同じ減衰力になるように調整してから温度を上げて行き減衰力の変化を見ました。
図にあるように乱流のほうが温度変化に対して減衰力が安定しているのが分かります。

減衰力の温度変化に対する安定度はオイルの粘度の温度による変化(粘度指数)の向上に頼ってきましたがダンパーの設計によっても向上することができるということを説明したかったのです。

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