オリフィスの次は当然バルブ、シムです。 ダンパーは基本的にオリフィスとバルブの2つしかないので2つ覚えればよしです。
オリフィスはオリフィス面積が固定ですがバルブはその時のバルブ前後の圧力差(圧力損失)によってバルブの開口面積が変わるのが厄介です。
バルブのリフトで決まる開口面積でオイルの流れが絞られて圧力差が生まれて、その圧力差によりリフト(h)が決まり…(以下繰り返す)…で、ある流量で一定のリフトでバランスするわけです。
その開口面積がオリフィスの面積に相当するのです。
順番にやっていけば大丈夫です。
まずはポペットバルブのポートの面積です、これは説明いりませんね、ポート径はdです。 --(1)
ではバルブのリフト(h)を求めましょう、バルブ前後の圧力差はΔPですね、それを(1)で求めた面積にかけるとポートに掛かる力です。
それをバルブのばね定数で割ればばねの変位、つまりはバルブのリフト量(h)が出ます。 --(2)
(2)に(1)で求めた面積(Ap)を代入しておきます。 --(3)
ではリフトによるオイル開口面積を求めましょう、これはポート径の円筒で高さはリフトとなります。
その面積はポートの周長x高さです、周長はπdですね。 --(4)
(4)の式に(3)で求めたhを代入しておきます --(5)
さてここで56番のシートで解説したオリフィスの式の登場です。オリフィスの面積(a)による圧力損失(ΔP)の式ですね。 --(6)
(6)の式に(5)で求めたバルブの開口面積(a)を代入します、いっきなりごちゃごちゃの式になってしまいました。 --(7)
(7)を整理します、変数の数は変わらないので分母、分子を整えただけです。 --(8)
さて(8)の式は両辺にΔPがあります、ΔPを求めたいのにこれではいけません、ですから両辺にΔPの2乗を掛けてあげます。
右辺のΔPはこれで消え、左辺はΔPの3乗になりました。 --(9)
両辺の3乗根をとります、これで左辺はΔPになりました、めでたしめでたし。
ダンパー速度(v)以外は全部値の変わらない定数ですね、ひとまとめにしてかっこに入れます。 --(10)
これがポペットバルブによる圧力損失の式です、ポペットバルブによる流れはほぼ乱流ですから粘度の入らないこの式でOKです。
式を見るとオリフィスの式がVの2乗に比例だったのに対しダンパー速度Vの2/3乗に比例です。
2/3乗に比例って言ってもよくわかりませんよね、エクセルで計算してグラフにしてみましょう。
グラフのようになりました、ばね定数というか(10)の式のかっこの中の定数違いで2本プロットしました、値の高い青の線がバルブのばね定数が高いイメージです。
オリフィスの2乗のグラフのx軸とy軸を入れ換えたみたいな形ですので上反りの逆で下反りと言っときましょう。グラフの始めの方は盛り上がって先の方はほぼまっすぐになっていきます、これが2/3乗特性です。
ダンパーは2乗特性と2/3乗特性を組み合わせて希望の減衰力特性になるようチューニングしているのです。
バルブによる減衰特性は2/3乗特性、これを覚えておきましょう。