ちょうどいい機会なのでピギーバックダンパーの圧力バランス取りについて解説します。ここで言うピギーバックダンパーとはバンプ減衰力をピストンとシャフトの両方のポンプ作用で発生させるタイプのダンパーの事です。
ホースでタンクがつながれていたり、一見モノチューブの様だけどシャフトによるオイル流への減衰バルブがチューブに内蔵されているタイプもここに含まれます。
52番シートで解説したようにピギーバックは2つのダンパーが1つのダンパーに入ってバンプ減衰力を出しているので2か所で差圧が生まれています、ΔP1とΔP2ですね。
この2つの差圧をうまいこと設定すればガス圧をなしあるいはすごく低く抑えることができるのです。
ガス圧が高いことのメリット、デメリットはこれまでに少し書きましたしどこかでまとめて書くかもしれませんがまあ高いより低い方がいいだろうということです。
確実に言えるのはガス圧が低いとキャビテーションの危険性が高くなってしまうということですが圧力のバランス取りをすればガス圧が低くてもキャビテーションの危険がなくなるのです。
キャビテーションというのはダンパー内部の圧力が負圧になってオイルに空洞が発生してしまう現象でしたね、この空洞により減衰力がきちんと出なくなってしまうのでキャビテーションは避けなければなりません。
モノチューブダンパーはキャビテーションを避けるために20barくらい加圧するのが普通です。
さて図を見てください、ガス圧は0です、モノチューブだったすぐにキャビテーションして使い物になりません。
タンクにある減衰バルブがシャフトによるオイルの流れを絞ってΔP2を発生します、ここではΔP2が1.0MPaとしましょう。
この差圧によりダンパー本体内の圧力が上がり、ダンパー本体内圧力P1は1.0MPaになります。
次にピストン部でも差圧が発生しています、ΔP1です。
もしここでもΔP1が1.0MPaだったらピストン下室の圧力P2は“0”MPaになります、ぎりぎりですがキャビテーションしていません。
ここでこのダンパーが53番の例題のダンパーだとします、例題でもΔP1、ΔP2は1.0MPaでした、そのダンパーは2500Nの減衰力を発生しています。
つまりガス圧が“0”なのに2500Nの減衰力がキャビテーションなしに出せるのです。
ΔP2>ΔP1であればガス圧は必要ありません、ΔP2でダンパー内圧を上げて、その圧力を使ってΔP1を作り出せばピストン下室の圧力P2を負圧、つまりはキャビテーション状態に入り込まないようにすることができるのです。
クァンタムはホームページに同じことを書いています、ベースバルブがあるおかげでガス圧を低くすることができると。
ガス圧が低いと偉いのか?というのはまた別の話なので機会をみて書きたいと思います。