第5回

5. <空気だまり、リザーバー>

前回シャフトのポンプ作用の説明でシャフトの出入りによりダンパー室からオイルが あふれ出たり戻ったりすると書きましたがダンパー室からあふれたオイルがダンパーの外へ流れ出てしまっては困るのでダンパーにはリザーバーという空気だまりがあり、あふれたオイルはこの空気だまりへ流れ込むようになっています、そしてシャフトが抜け出ていくとオイルも空気だまりからダンパー室へ流れ戻るのです。
走行中はダンパー本体は上下に揺すられていますからオイルと空気がシャカシャカとシェイクされて 泡だらけになってしまいます、そうすると減衰力が正しく発生できなくなるのでレース用のダンパーは図のようにフリーピストンと呼ばれる仕切り板をオイルと空気の間に設けています。フリーピストンは回りにOリングが付いていてオイルと空気を遮断し、またオイルの増減にあわせて抵抗なく動けるようになっています。

シャフトがダンパーに入り込みオイルを押し出し空気だまりの空気を押すので空気は圧縮されて圧力が上がります、これは空気ばねとして作用します。
レース界のエンジニアでも「ダンパーのガスばね要素が温度上昇により変化して ...」とか「ガスばねの分ばねが硬くなって...」などと言う人がいますが、ガスばねによるばね定数を数字ではなく感覚で捉えてるためではないかと思われます、コイルスプリングのばね定数を100としたらダンパーのガスばねが30なのか10なのか0.1か分らないで、どれくらい影響があるのかを妄想で語っているんだと思います。 この講座では妄想抜きで後のほうで数字と式で説明します。

さらに空気だまりには圧力を掛けたりします、それはキャビテーションを防止するためです、つい最近このキャビテーションについてあるエンジニアが面白いことを言っていたのですが長くなるのでキャビテーションの説明の所で書きます。

ステアリングダンパーやレース用などで一部に使われるスルーロッドダンパーといわれるダンパーはシャフトが一方から入り込むと反対側から出て行くのでダンパー内部で体積変化がなく空気だまりは必要ありません。ですから空気だまりはダンパーとして絶対必要という要素ではありません。
しかしステアリングダンパーやスルーロッドダンパーはままだ少数派で99.9%のダンパーは空気だまりを必要とするので本講座では空気だまりがあるダンパーをベースに説明していきます。
実際にはステアリングダンパーにもスルーロッドダンパーにも空気だまりはあります、なぜかというと温度によりオイルが膨張、収縮するからです。

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