第48回

48. <内部圧力と減衰力の関係、ピストン>

=このページのまとめ=
モノチューブの減衰力は、ピストン面積からシャフト面積を引いたドーナッツ面積にピストン両面に掛かる圧力差(ΔP)を掛けて算出できる。 実際はピストンの片側に掛かる圧力はいつもガス圧なのでもう一方の圧力からガス圧を引いたものが圧力差(ΔP)となる。
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ダンパー内部で発生する圧力がどう減衰力となって出力されるかを解説します、まずは一番単純なモノチューブダンパーです。

ボディを固定したとしてシャフトを押したり引いたりする時に必要な力が減衰力です。 その力はダンパー内部の圧力により生まれています。 じゃあ順番に見ていきましょう、ピストン、シャフトにはどんな圧力がかかっているでしょう? まずはガス圧ですね、これはダンパーが動いていなくても掛かっています、じゃあ減衰力じゃありませんね。 これは後で引いてあげる時に出てくるので覚えておいてください。

ではダンパーが動いているときの圧力です、図を見てください、例にリバウンド工程を出してあります。
リバウンドの時ピストンの下側の圧力が上がり、上側の圧力はガス圧のままです。
シャフトに掛かる力はピストンを上から押し下げる力、逆にピストンを下から押し上げる力、シャフトを下から押し上げる力の3つです。
ここでシャフトを押し上げる力は大気圧で圧力がゼロですから無視します。

圧力による力Fの方向を図のように決めます、これの反力が測定される減衰力になります、つまりバンプ減衰力が正、リバウンドが負になります。
さてFはピストンを押し下げる力(Fdown)からピストンを押し上げる力(Fup)の差となります。 --(1)

そのFdownは(ピストン面積)x(ガス圧)です、Fupはピストン面積からシャフト面積を引いた(ドーナッツ面積)x(下室圧力P1)です。 -- (2)

ここで面積の関係は(ピストン面積Ap)は(ドーナッツ面積Ad) と(シャフト面積As) を足したものです。 --(3)

Apに替えて(3)よりAd+Asを(2)に代入します。 --(4)

(4)を面積で整理します。 --(5)

さて(5)でシャフトに掛かる力が分かりました、でもこれは始めに触れたガス圧による力を含んでいるので引いてあげないといけません。
そこで減衰力をFdとするとFdはFからガス力を引いた物になります。-- (6)

ガス力は(シャフト面積)に(ガス圧)をかけたものです。-- (7)

(7)を(6)の(ガス力)に代入します。-- (8)

(5)を(8)のFに代入します。--(9)

整理しましょう、打ち消しあって簡単になりました。--(10)

ここで(ガス圧)から(下室圧力P1)を引いたピストン上下差圧をΔP と呼びましょう。--(11)

すると減衰力は(ドーナッツ面積Ad)に(差圧ΔP )をかけたものであることが分ります。--(12)

リバウンドはΔPの負号が“-”なのでリバウンド力は“-”、バンプ力は“+”となります。

減衰力を決めるのは差圧ΔPですからガス圧を変えても減衰力は変わりません。 ドーナツ面積と差圧は反比例の関係ですから小さいダンパーを作ったら高い差圧が必要になり、大きいダンパーは小さい差圧でいいことが分ります。

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