ヒステリシスつまり減衰力の遅れはダンパー形式により違うでしょうか? 大違いです。
図に2種類のダンパーを例として出しました。
左はモノチューブダンパーです、ピストンのポンプ作用により減衰力を発生させるダンパーです、バンプもリバウンドも同じですが圧力の上がるリバウンドを例として出しました。
右はピギーバック型のダンパーのバンプ時を表しています、シャフトのポンプ作用によるダンパーです。
さてどちらがヒステリシスが小さいでしょう?
左のモノチューブダンパーのほうが断然ヒステリシスが小さくて高レスポンスです。
なぜかというと圧力とオイルの量が違うからです。
順番に行きましょう、前にも説明しましたがシャフトはピストンに比べ断然面積が小さいので同じ減衰力を出すのに高い圧力が必要になります、例えばシャフトが14mmでピストンが45mm(2輪のリヤとかにありそうなサイズです)だとすると面積は(ピストンの面積はピストン-シャフトのドーナッツ面積)9.3倍も違うのです、約10倍です。
つまり同じ減衰力を出すのにシャフト式のダンパーはピストン式の10倍もの圧力が必要なのです、10倍圧力が高いと10倍オイルがつぶれるのでヒステリシスはとても大きくなります。
さらにオイルの量です、左のピストン式はダンパー内の半分以下の量のオイルを圧縮しています(赤い部分の体積です)、シャフト式はダンパーの中のほぼ全部のオイルを圧縮しなくてはいけないのです。
ピギーバック式のバンプはたくさんのオイルを高圧で圧縮して減衰力を出しているのです。図の例の場合2倍の量のオイルを10倍の圧力で圧縮するのですから20倍のオイル体積変化です。
ヒステリシスの大小はオイル体積変化によりシャフトがどれだけ動くかということですから体積変化を面積で割ると出ます、すると20倍の体積を1/10の面積で割るのでなんと200倍です、
ピギーバック式のダンパーのバンプはモノチューブの200倍もヒステリシスが大きいのです。(図の寸法のダンパーの場合ね、いつも同じじゃないですからね)
ピギーバックのリザーバにバンプのアジャスターが付いていて喜んでる場合じゃありません(減衰力変えられるのはうれしいですが)、このタイプのバンプはヒステリシスが大きい、レスポンスが悪いことを理解しておいてください。
まあこのおかげで乗り心地がいいのも確かです。
レース用ダンパーがダブルチューブの外付けバルブ式(SachsのFMD、オーリンズのTTX 等)に移行していったのもこういう理由です、レース用ダブルチューブはバルブが外についているだけで理屈はモノチューブダンパーですから。