すべてのことには遅れがあり減衰力にも発生遅れがあり、その原因がダンパーの圧縮性によるものだという話です。
ヒステリシスのほとんどの原因は前回説明したオイルの圧縮性です。
図を見てください、シャフトのポンプ作用を使ったダンパーです、オリフィスがオイルの流れを絞って圧力を発生させ減衰力を発生させています。
シャフトを押し込むと押されたオイルがオリフィスを通り圧力差を生みます、この圧力がシャフト断面に掛かり減衰力として出力します。
すべてが剛体であったとするとシャフトにより押し出されたオイルは瞬時にオリフィスを通り抜け圧力差を発生させます。減衰力に遅れはありません、シャフトが動いただけ減衰力が発生しますから減衰力特性は図の赤線のように一本線です。
ではオイルが圧縮できる柔らかい液体だったらどうでしょうか?
話を分かりやすくするためにオイルの圧縮性をゴムボールに置き換えてモデル化してみました。
シャフトが動き始めるとシャフトに押し出されたオイルはオリフィスを通り抜けますが同時にゴムボールをつぶすのにも使われてしまいます。つまりオリフィスを通るオイルの量が減ってしまい発生する圧力差も小さくなってしまいます、圧力差は流量の2乗に比例なのです。
更にシャフトが動くとオイルはやはりゴムボールをつぶしますがもうゴムボールもつぶされて踏ん張りが出てきましたからもうあまりつぶれません、オリフィスを通り抜けるオイルは増えて圧力差もゴムボールがない時とそん色なく発生してきました。
これがグラフの(A)の部分で起きていることです、ボールのつぶれにより圧力の立ち上がりが遅れてしまい、結果減衰力も遅れて低くなっています。
同じことが圧力が下がるときにも起きます、今度はシャフトが止まろうとしているのにゴムボールが膨らんできて流量が減らず圧力差が小さくなるのが遅れます。
これが(B) の部分で起きていることです、圧力の減少の遅れにより減衰力が高くなっています。
ヒステリシスはゴムボールの収縮、膨張によりオイルの流量が減少、増加して圧力差発生に遅れが生じることであります。
ヒステリシスはあくまで減衰力の遅れですからシャフトが同じ速度で動き続ければ減衰力は追いついてきます、減衰力が過渡的に低くなるということでいつも低くなっちゃうという話ではありませんからご注意。
これは太陽は12時にてっぺんなのに一番暑いのは2時、冬至は12月なのに2月のほうが寒いのと同じことで制御で言うと1次遅れ、電気で言うとフィルター回路です、株が下がってきてるのにまだまだ買っちゃうのも同じようなもんです、理性の一次遅れですね 。
ヒステリシスをモデルにするとダンパーに直列のスプリングになります、そうです勘のいい人は気がつきましたね、ダンパーの両端についてるゴムブッシュはヒステリシスの元だということを。
ダンパーがどんなにヒステリシスが小さくてもそれをブニャブニャのゴムブッシュで車体につけたら台無しです。
まあヒステリシスを変えるのは難しいので乗り心地、操安のチューニングをブッシュでするのはよくあります。