減衰力特性グラフつながりで今回はガス反力についてです。
レース用のダンパーの多くがガス(通常窒素か空気)を押し込んだ加圧ダンパーです。よくガスダンパーとか呼ばれます。昔ダンパー工場の製造のおじちゃんが私に「ガスダンパーって言うのはオイルは入れないんかい?」と聞いてきたことがあります。“ガスダンパー”っていう呼び方が誤解を呼んでいますがしょうがありません。
加圧するとガス圧がシャフトを押し出そうとします、シャフトをダンパーに押し込んで手を離すとシャフトが伸びてきます。このシャフトを押し出すガスの力をガス反力と呼びます。
このダンパーを減衰力試験機に取り付けると取り付けた時点でガス反力がロードセル(力を測るセンサー)を押す方向に掛かります、そのままクランクをグルグル回して減衰力を測ると左上のよう図のような力-変位グラフになります。
ガス反力の分だけたまご波形が上(バンプ)へずれてしまっています、ガス反力は静的な力であって減衰力ではないのでこれを引き去ってやらなければいけません。
試験機はグルグル回転を始める前に静的な力(ガス反力)を測定してその値をグルグルの測定値から引き去ります。
ガス反力の測定方法は試験機メーカーにより異なります。昔々使った試験機は上死点と下死点で止めて2点の力の平均を取っていました、Roehrigは確かストローク中央で上昇と下降の2点を取り平均してたと思います(うろ覚え)、Dynamicは下死点のみで計測します。
理屈からいうと上げと下げのストローク中央で2点取るのが一番正しいと思います、上死点下死点の2点もガスばね定数を線形として扱えば正しいです。下死点のみはイマイチです。
ガス反力の強さはガスの圧力とシャフトの面積で決まります。
(ガス反力)=(ガス圧力)x(シャフト面積) です。
今時ガソリンスタンドでタイヤに空気入れようとしても機械の表示はkPa(キロパスカル)です、天気予報もヘクトパスカルです。力にkgf、圧力にkgf/cm2を使っている人はまだまだ多いと思いますがだんだんSI単位に切り替えていきましょう。込み入った計算をすると単位換算が難しくなって訳が分らなくなりますがSIならそんなこと考えなくて済みます。
ちなみに一気圧(1kgf/cm2) が“ほぼ”100kPa、0.1MPaです、1barは“ちょうど”100kPaです。