第34回

34. <減衰力の計測>

減衰力を測るときの入力はサイン波です、どうしてもこうしてもなくサイン波です。
そのストロークは前回書きましたがJASOで+/-25m、レース界では+/-10から+/-15mmです。

さてここでモーターを一定速度でグルグル回します。この時のダンパーの加振の速度(m/sec)のピークは (2π)x(R)x(n) で表されます。Rは上記の片振幅(m)、nは回転数(cycle/sec)です。

グルグル回っている状態で速度、変位、力を計測します。減衰力は速度の関数ですから変位は必要なさそうですが別記のようにあると減衰力の過渡が見やすくなるので測定します。

測定が出来たらこれで一つの速度の減衰力測定が完了です、モーターの回転数を変えて次の速度でまた測定を行います。 JASOでは0.05、0.1、0.3、0.6、1.0 m/s の速度で計測を行います。 でもレース界ではそんな高い速度は使いません 0.01、0.02、0.03、0.05、0.1、0.2 m/s ぐらいで十分です。これは一例でチームによって測定速度は違うようです。

測定が終わったら各速度のデータからXYグラフを2つ書きます、一つは力-変位グラフ、もう一つは力-速度グラフです。力-変位グラフはたまごのような形になります、力-速度グラフはナメクジみたいな形になりナメクジの胴体の太さをヒステリシスといいます。

サイン波の入力にはゼロからピーク速度まで入っているし、力-速度グラフが速度に対する減衰力を表しているのだから一番速い速度で一回加振すれば減衰力特性は表現できてしまうように思われるかもしれませんがそうはしません。 それは上に書いたように減衰力にはヒステリシスがあって、別の言い方をすると減衰力の発生には遅れがあるので同じ速度でも速度が上がっていく時と下がっていく時で減衰力が違ってしまうのです(それがナメクジの胴体の太さになるのですが)。 そうすると一つの速度に2つの減衰力がありどれが本当か分らなくなってしまいます。
例えば速度ゼロのときに力-速度グラフの減衰力はゼロじゃありません、定常的に速度がゼロなら減衰力はゼロになりますが過渡的には速度がゼロのときつまりバンプからリバウンドに切り替わる所、リバウンドからバンプに切り替わる所ではそれぞれバンプ、リバウンドの力が残っていてゼロにならないのです。速度ゼロでさえ減衰力が2つあって分りにくすぎます。

というわけで減衰力特性図を書くにはもう一手間掛けます。

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