ピストン&シムの次はもう一つの減衰力バルブのポペットバルブです。
ポペットバルブは円柱状の弁をスプリングで穴に押し付けてるバルブ機構です。弁に油圧が掛かると圧力に応じてスプリングに対抗して弁を押し開きオイルを流します。
シムのディスクスプリングに対してコイルスプリングを使っています。コイルスプリングでディスクスプリング並みのばね定数を出そうとするとペラペラのシムに対して結構ごつい物になります。
構造的にはシム式のダイグレッシブピストンと同等になります、バルブが穴のふち全周で均一に開き穴の全周からオイルが流れ出すという点で同じです。
ですからポペットバルブの減衰力特性はダイグレッシブです。
ばねを固くしたり柔らかくしたりすると減衰力は高くなったり低くなったりしますがその特性はダイグレッシブのままです、横バナナ特性、難しく言うと2/3乗特性です。
そうなんです、ポペットバルブでリニア減衰力を出すのは難しいのです。減衰力をリニアに近づけるための工夫が必要なのです。でもシムのように非線形のばね定数をコイルスプリングで作り出すのは簡単ではありません。
ではどうするか、ばねではない別のところで非線形を作り出してやればいいのです、ポペットバルブの場合はバルブの底の形状です。これを変えてやることでバルブが開いたときの開口面積の変化を非線形にするのです。
具体的には図のようにバルブの底から凸が出ていてその形状を変えてやることでバルブが開く変位とその時の開口面積を調整してやるのです、まあキャブレターのニードルみたいなもんです。キャブレターはニードルの角度や太さで流量を調整しています、それと同じことをポペットバルブの底の凸でやっているのです。
凸形状違いのバルブを何種類か用意することでシム式のピストンのバリエーションと同じことができます。
まあ手っ取り早くリニア特性にするためにバルブの底にシムを入れたり、ソリッドにしたはずのピストンをシム付きのピストンにしたりする場合もあります。
ダイナミックのDSSVはその開口部を円筒に切ったスロットに置き換えているのでスロットの形状しだいでリニアでもダイグレッシブでも自由自在というのが売りです。
シム式はピストン形状もシム積み重ね形状も変えられましたがポペットバルブの場合はバルブの底形状だけですから減衰力特性の自由度はシム式にはかなわないです。
その代わり減衰力の安定度はコイルスプリングのほうがいいと思います。