実はスロープアジャスターつきのダンパーを市販しているメーカーがあるのです、それはKONIです、オランダの老舗です。
減衰力発生の仕組みはシム式ですがアジャストの仕組みは込み入っているので略図はパスしてKONIのホームページから貼り付けておきます。
下からテクニカルマニュアルがダウンロードできます。
http://www.koni.com/fileadmin/user_upload/business_units/racing/downloads/Technical_Manual_28-series_v5.2.2.pdf
KONIのこのダンパーは結構変わっていて、いえ凝っていて減衰力バルブはカートリッジになっていて減衰力特性を変えるにはシムを入れ替えるのではなくバンプならバンプのカートリッジを別のものに入れ替えるのです、カートリッジは組み込む前に検査されていますからすぐに使えます。
さらに減衰力特性が今まで説明してきた物と違います、低速のバナナ特性もKneeもないのです、低速から高速まで一直線です、これがKONIこだわりのダンパーです、もう20年くらいこのダンパーを作り続けています。
頭のいい学者社員さんが「振動工学では減衰比は一定でなくてはならん」とかいったかどうか知りませんが、ばねと車体の振動系に対する減衰の効き、減衰比、を一定にするつまりは一直線の減衰力特性というのは一理ありです。それが乗りやすいかはまた別の話ですが。
アジャストの仕組みはさらに特殊なので原理だけ説明しますと、前回スロープアジャスターを実現するにはバルブのばね定数を変えなくてはならないと書きましたが、KONIのアジャスターはばね定数は変えていません。
その代わりバルブがオイルから受ける面積が変化します。 ポペットバルブで言うとポペットが塞ぐ穴の大きさが変わるのと同じです。実際には穴の大きさを変えるのは難しいので小さい穴が並んでいてそれらをシャッターが隠していったり開けていったりして面積を変えています。
面積が例えば小さくなると 力=面積x圧力 ですから同じ圧力変化でも力の変化が小さくなります、つまりバルブのばねに掛かる力の変化が小さくなりばねの変位も小さくなる。
同じ圧力変化でばねの変位が小さくなるということはばねが固くなったのと同じことになるのです。
KONIはスロープアジャスターしか付いていないので固くすると減衰力が高速で高くなり過ぎます、なのでブローオフバルブという物が付いていてある圧力でがばっと開いてそれ以上圧力が上がらないような仕組みになっています、減衰力特性の図がバンプ、リバウンド共真っ平らになっているのはその為です。
これでアジャスターについての説明は終了します。ダンパーに付いているアジャスターはどれも同じように見えますが低速オリフィス、高速プレロード、スロープとアジャストの方法が違い減衰力特性の変化の仕方が違います。アジャスター1つでバンプもリバウンドも高速も低速も変わっちゃうようなアジャスターなら全体に固くなるとか全体に柔らかくなるので考えるのも簡単ですが4 way とかになると次に変える必要があるのはバンプなのかリバウンドなのか?低速なのか高速なのか?を正確に判断するのは難しいものです。
もし自分の車のダンパーにアジャスターが付いていたらいじくり回して出来るだけ同じコンディションで長く乗ってどう車がどう変化するか体感してみるといいと思います。
その時始めのアジャスターの位置を書き留めておくのを忘れないようにしましょうね、いじってるうちに何が何だか分んなくなっちゃうのが普通ですから。
減衰力のチュー二ングはサーキットでやろうとすると膨大な時間が掛かってしまいさらに変な方向に行ってしまう危険性が高いのでまずは7ポストリグでベースを設定することをぜひお勧めします、というオチで。