第21回

21. <低速減衰力アジャスター>

減衰力アジャスターの最初は低速のアジャスターです、とりあえずダンパーはモノチューブ、工程はリバウンドだと思ってください。低速ですからオリフィス、つまり穴の大きさを変えるのです。

どうやって穴の大きさを変えるかというと固定穴に細いテーパーのニードルを差し込んで、その差し込み具合を調節して穴とニードルの隙間の面積を調節しているのです。
左の図から見てください、シャフトにピストンのあっちとこっちをつなぐように穴が開いています、そしてその穴にニードルの先が入り込んでいます
。 オイルはピストンの下側から穴とニードルとの隙間を通ってピストンの上側へ流れます。穴とニードルの隙間がこのピストンの下と上をつなぐ通路で一番狭いところなのでここが低速の減衰力を出すオリフィスになります。
ニードルはアジャスターを回すと前後に動くので穴に深く入ったり浅く入ったりします、そうすると穴とニードルの隙間の面積が小さくなったり大きくなったりしてオリフィスの大きさが変わるのです。
オリフィスの大きさによって前回説明したように低速の減衰力が図のように変わります。

アジャスターはシャフトの端っこについていて外から回せるようになっています。これでいちいちダンパーを分解してオリフィスの大きさを変えなくても外からアジャスターを回すだけで減衰力が変えられます。
アジャスターが振動で勝手に回ったりしないように、またどれくらい回したか分かり易いようにアジャスターにはカチカチと節度がつけられています。
出来のいいアジャスターはカチンカチンと気持ちよく回りますがひどいのは節度感がほとんどなくて走ってるうちに勝手に回っちゃって減衰力が変わっちゃってたりする物もありました。

ここで一つよろしくないことがあります。ニードルの刺さった穴にはリバウンドだけでなくバンプの時もオイルが流れるのでアジャスターを回すとバンプもリバウンドも減衰力が変わってしまうのです。
まあこれでも減衰力が変わるのは確かで実際そういうダンパーもたくさんあるのでそう悪いことではないのですが、通はやはりバンプだけリバウンドだけ調整したいところです。
そのためにはオリフィスの通路に一方通行バルブを設けます。それを右側の図に示しました。図では一方通行バルブのボールがどっかへ流されて行ってしまいそうですが実際にはストッパーとボールを押し戻すスプリングが入っています。 これでバンプのときは一方通行バルブが流れを止めてくれるのでアジャスターがどうであろうとバンプには影響しません。

じゃあバンプはどうするの?と思われるでしょう。
ピストン部でバンプとリバウンドを別々にアジャストするのは非常に面倒なのです。
ニードル2つと一方通行バルブ2つと流路2つ、それにアジャスター2つを細いシャフトの中へ組み込まなくてはならないからです。実際やってるダンパーメーカーもあるのですが非常に高い工作精度が必要だし何しろ組み立てが面倒! 下にモノチューブダンパーでバンプ、リバウンドの独立アジャストのダンパーを市販している2つのメーカーのu.r.l.を載せておきます。KONIはバルブ機構が特殊なのでちょっと違いますが独立アジャスター2つをシャフトにいれこんでいるので。 通常はシャフトのアジャスターはバンプ、リバウンド共用かリバウンドだけです。 バンプをアジャストしたいときは標準ダンパーにしてバンプの減衰力バルブをリザーバーに持って行ってそちらでアジャストするのが一般的です。


Bilstein MDS
http://www.motorsport.bilstein.de/de/racing-products/mds-race.html

KONI 2812
http://www.koniracing.com/images/File/2812_Reference_Sheet.pdf

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