第19回

19. <レース用ダブルチューブ>

ダブルチューブはダブルチューブでも最近レース用で主流のダブルチューブダンパーはno.16で説明した量産向けダブルチューブダンパーとは違うダンパーです。
左はモノチューブの変形、右はスルーロッドの変形です。

左はモノチューブダンパーの筒を2重にして、オイルがピストンを通り抜けるのではなく2重にした筒の隙間を通って反対側へ流れ、ピストンに乗っかっていた減衰力バルブを外に出したものです。

こうすると減衰力バルブがダンパーの外側に付いているので減衰力調整機構(アジャスター)を取り付けやすくなるのです。レース用のダンパーは分解しないで減衰力を変えられるようにアジャスターが付いているのが普通なのでそれをやり易くするための方式です。
それ以外は長所も短所もモノチューブダンパーです。

このタイプはSachsが得意です、Formula Matrix Damper としてSachsのスタンダードになりました。 日本でもフォーミュラニッポンやGTで使っているチームがたくさんいます。下にザックスの日本代理店のアネブルにこの形式のダンパーの紹介ページがあるのでリンクを貼っておきます。
始めはダンパーボディから減衰力バルブが2つボッコリ出ていましたが最近の物はボディの下部まとめられてすっきりしました。

http://www.enable-apg.jp/product/catalog/index/brand/sachs/productname/formula-damper/page/1


もう一つの右の図の物も考え方は同じでスルーロッドの筒を2重にしてオイルを2つの筒の隙間を流して減衰力バルブを外に付けたものです。
これもアジャスターを付け易くするための方式で長所も短所もスルーロッドと同じです。
このタイプはオーリンズが得意です。空気だまりをドーナッツ状にして外形をコンパクトにまとめています。
Sachsからも上記に加えてこのタイプのダンパーが追加されました。
オーリンズからこのタイプのダンパーの解説書が出ています、これがすばらしく良くできた解説書でオイルの流れ、減衰力発生の仕組みからヒステリシス、キャビテーションまでTTXというダンパーの解説だけでなくダンパー一般の解説書としてダンパーを理解しようとする人必読の解説書です。
下記のURLから“Inside TTX - The Ohlins TTX40 Manual” をダウンロードしてください。
これを読むとオーリンズはしっかりした会社だなぁと思います。

http://www.ohlinsusa.com/downloads


もう一つのレース用ダンパーの主力メーカーであるダイナミックサスペンションも同じくダブルチューブ+アジャスター外置きで凝った機構の減衰力バルブを使ったDSSVというダンパーがあるのですがあまりやる気はないようでホームページを見ても字だけです。 と思ったら最近の資料を見たのですがいろいろやっているようです。

http://www.multimatic.com/structures_and_suspension/dssv.shtml


忘れちゃいけません、KONIも2822 Mk.2というダブルチューブ+アジャスター外置きを作っています、でも彼らの2812シリーズほど成功はしなかったようです。

http://www.koni.com/213+M5c8b0282df2.html


以上のように最近のレース用ダンパーのトレンドは間違いなくダブルチューブ+減衰力バルブ&アジャスター外置きです。アジャスターの数を競っているようです、バンプ、リバウンドそれぞれに低速、高速用のアジャスターを設けて4つもアジャスターが付いています、ダイナミックのDTM用にいたっては良く分からない2つが追加されて6個です!ものすごい数の各アジャスターの組み合わせになりますから訳分らなくなってしまう訳です。


そのために7ポストリグがある、というオチです。

ダンパーの種類はこれでお終いで次からはみんなのいじくり回したいアジャスターについてです。

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