第18回

18. <特殊ダンパー>

ここでちょっと変わったダンパーを紹介します。

一つ目はスルーロッドダンパーです、これまでのダンパーと違ってシャフトが貫通していてシャフトを一方から押し込むと反対側から出てきます。
このダンパーはよくモーターバイクのステアリングダンパーに使われています。

シャフトによるポンプ作用がないので空気だまりが必要ありません。
でも図には空気だまりが付いています、なぜかというと温度変化によりオイルが膨張、収縮するためです。これがなくて熱くなるとボディが内圧で膨らんできます。
ステアリングダンパーには空気だまりのないものがありますが、温度がほとんど上がらないので問題ないのです。
空気だまりはオイルの熱膨張分を吸収できるだけの容量でいいので小さいもので十分です。

図のように空気だまりがついているとバンプの時にオイルが空気だまりに流れ込んでしまいピストンの反対側へ流れるオイルが足りなくなってキャビテーションしてしまいます。これを防ぐために空気だまりの取り付け部はすごく小さい穴(0.1mm程度)になっていて動的には抵抗が大きくてオイルが流れないようになっています。熱膨張したオイルはゆっくりと穴を通り抜けていきます。

長所はモノチューブのように単筒なのにバンプ、リバウンド共にオイルを圧縮して減衰力を出すのでキャビテーションの心配がないこと。
次にバンプがリバウンドと同じくピストンによるポンプ作用で大流量を使用することができて、同じ減衰力を低い圧力で出すことが出来ることでしょう。
標準ダンパーはバンプ減衰力をシャフトという小さいポンプ作用の物で出すので、小流量をぎゅっと絞って高圧で減衰力を出さなくてはなりません。そうすると安定した減衰力を出すのが難しいのです、ほんの小さな寸法の誤差で減衰力が変わってしまったりします。

他に長所は空気だまりが小さいこと、シャフトにガス圧による反力がないことでしょう。 ガス反力というのはガス圧がダンパーの内側からシャフトを押し出そうとする力のことです。ピストン/シャフトには圧力が両側から均等に掛かっていてガスを加圧してもシャフトが伸びてきません。
このガス反力はスプリングに掛けたプレロードと同じ働きをしてガス反力以上の力が働かないとシャフトが縮んできません。
ガス反力はレース界では嫌われていてスプリングにたくさんプレロードを掛けてるくせにガス反力は嫌なんていうエンジニアもいます。

弱点はダンパーが長くなってしまうこと、これはお尻からシャフトが突き出ているのでどうしようもありません。
フリクションが高い、シャフトのオイルシールが1個から2個になるのでフリクションは高くなります、フリクションは百害あって一利なしなのでよくありまえん。

スルーロッドは昔からあるのですが出ては消え、出ては消えしながら何か目新しいダンパーが欲しくなると必ず出てくるダンパー形式です。


次はロータリーダンパーです、もう全く仕組みが違います。シャフトの回転でベーンを揺動させてポンプ作用を起こしています。 F1などのようにばねがトーションバーの場合トーションバーをねじる軸上に置く事でコンパクトにダンパーを設置できます。

でもシールが難しい、フリクションがすごく高いなどの理由で主流にはなりませんでした。

90年代にスズキがTL1000のリヤに採用したのが量産では唯一でないでしょうか。TL1000はコイルスプリングにロータリーダンパーという妙な組み合わせでスプリングの中がガランドウでロータリーダンパーが別置きと何のためのロータリーダンパーか分らないサスペンションでしたが案の定一代限りとなりました。

あと2004年ホンダがCBR1000にロータリーダンパーをステアリングダンパーに採用しました(HESD)、すごいことに車速と加速度でマッピングした電子制御でした。今もついているかは知りませが他の機種に拡大採用したという話は聞きません。

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