前回説明したオイルを圧縮して圧力を上昇させて減衰力を発生させるダンパーの実際例を紹介します。
圧力を下げないために2つのワンウェイバルブを使います。ワンウェイバルブとは一方通行弁とも言われ一方向にしかオイルを流さない弁のことです。
リバウンドではシャフトのポンプ作用によりガス室から上室へオイルの流れと、ピストンのポンプ作用により下室から上室へのオイルの流れの2つがあります。
まずはガス室から上室への流れですがワンウェイバルブAが開いてオイルは抵抗なく流れるので圧力損失がなく上室の圧力が下がることはありません。
ですから上室の圧力はガス室の圧力と同じです。
一方下室から上室へ流れようとするオイルに対してはワンウェイバルブBが閉じるのでオイルはオリフィスとダンパーバルブを通り圧力損失を発生させるので圧力が上がります。この上がった圧力により減衰力を発生させます。
次はバンプです、同じく2つのポンプ作用によりリバウンドと逆方向のオイルの流れが起きます。
上室からガス室へ流れるオイルに対してはワンウェイバルブAが閉じるので圧力損失により上室の圧力が上がります。
次に上室から下室へのオイルの流れに対してはワンウェイバルブBが開くのでオイルは抵抗なく流れ圧力損失を生じません。これはどういうことかというと上室と下室は同じ圧力だということです、上記のように上室は圧力が上がっていますから下室も同じく圧力が上がり、上室下室両方とも同じく圧力が上昇するのです。
この上昇した圧力が減衰力になるのです。
このように2つのワンウェイバルブとバンプ、リバウンドそれぞれのダンパーバルブを使うことでオイルを圧縮して圧力を上昇させて減衰力を発生することが出来ます。
乗用車のダンパーのほとんどはこの方法です、ダンパーバルブには色々な形式がありますが2つのワンウェイバルブとリバウンドのダンパーバルブをピストン部に、バンプのダンパーバルブをガス室手前に置くという点ではほとんどの乗用車ダンパーがこの方法に当てはまります、まあガスもただじゃないし、ガスはだんだん漏れるし使わないで済む方法があるならそうしたいというところでしょうか。
これを覚えておけば大概のダンパーは理解できるということです。
レース用のダンパーはというとレース用なんだからガスぐらい入れとけっていうことでガス加圧していないダンパーはまずありません。 オイル室を膨張させて圧力を下降させて減衰力を発生するタイプで20気圧、前記のようなオイルを圧縮させて圧力を上昇させるタイプでも5気圧、両方の中間タイプで10気圧ってとこでしょうか。
これで基礎編はお終いです、次の実践編でダンパーの形式、ダンパーバルブのいろいろ、減衰力可変機構について説明していきます。