第111回で乗用車のばね上共振周波数はフロントよりリヤを少し高く設定した方がいいと書きましたがその理由について説明します。
まあインターネットで調べれば大概のことは見つかるわけでこの理由も“Optimum G“ のサイトにも書かれています、https://optimumg.com/springsdampers1/(https://optimumg.com/technical-papers/)。
Optimum Gはビークルダイナミクスのコンサルタント会社でコンサルタント、ソフト開発、セミナー開催等している会社で日本でも何回もセミナー開催してますから知っている人もいるかもしれません。
ためになる事も書いてありますからホームページ見てみるとよいと思います、無料のラップタイムシミュレーションソフトが気になるところです、使ってみて感想を教えてください。
簡単にまとめると路面の凸を前輪後輪が時間差を持って乗り越した時リヤの共振周波数が高い、つまりリヤの動きが速いと入力に時間差があってもフロントの動きに追いついて車両の動きがピッチングから上下動(Heaveね)になり乗り心地が良くなる、という理屈です。
これが定説でOptimumGもそう言ってるんですから確かでしょうがほんとなのか試してみないといけませんね、ということでまた4自由度の出番です、1度モデルを作っておくといろんなことに使えますからぜひ作っておきましょう、今回は路面から1周期のサイン波形を前輪と後輪に車速とホイールベースの分の時間差をつけて入力します、そして車体の動きがどうなるかを見ていきます。
使った数字は一覧にして載せておきました、話をシンプルにするために重量配分は前後50:50、タイヤばね定数も同じ、減衰比も同じにして変えるのはばねだけにしました、車体振動がよく分かるように減衰比は低くしてちょっと長く続くようにしました。
さて結果を見ていきましょう、2つのFrequency ratio で計算してみました、ここでFrequency ratioというものの定義は(リヤ共振周波数)/(フロント共振周波数)としました、Frequency ratioが 1.0 というのは前後の共振周波数が同じ、1.13 はリヤがちょっと高いということでこれらの2つを比べました。
真ん中に2つ並んでいるプロットを見てください、どうです? Frequency ratio1.13 はリヤの青の線がフロントに追いついてフロントとリヤが重なってますよねぇ、対して1.0 はフロントとリヤの動きが入力の時差のままずっとずれています。
これの効果がピッチングに表れています、Frequency ratio 1.13 はフロントとリヤの動きが同期したおかげでピッチングが大幅に減ってこれなら乗り心地も良くなるでしょう。
OptimumGや他の情報ではFrequency ratioを1.1から1.2に設定すると良いそうです。
リヤがフロントの動きに追いついて前後の上下動が同期するっていうのを確認できました、でもねぇうまいこと同期する設定を探すのは大変だったんですよ。
一番効果のあった設定からばねを変えると同期の具合が変わるのはもちろんですが、凸の形状、車速、ホイールベースなどでも大きく変化します、特に凸形状は1mとかの長い凸、つまりゆっくりした周期の入力では全然だめでインパルス入力に近くないとだめです、インパルス入力っていうのは一瞬で上下する入力のことです。
となると現実の走行でFrequency ratioによるピッチング減少効果を体感できるのは限定的な場面のみと思います、こういうのはいろいろ試してみないと分からないことですから勉強になりました。
それでもリヤの共振周波数をチョイ高めというのはいいんじゃないかと思うんですよ、随分前にまだFrequency ratioなんて言葉も知らない頃いろんな乗用車の共振周波数を調べたことがあって、その時乗り心地のいい車はリヤの周波数がちょっと高かったですし私はそれ以来リヤの周波数ちょい高めを標準にしてきていました。
だから理由はどうあれFrequency ratio1.13近辺は良いバランスじゃないかぁと思うわけです、すいません最後はいまいち理論的でなくて。
レース?
レース車で突起乗り越し後のピッチング減少が評価項目として重要じゃないのとそもそも減衰比が高いので余韻が残るほど振動しないので全然気にしてないです。
今回も百聞は一見にしかずということで車体の動きを動画にしてみました、ほほぅって感じでしょ。