では全回で説明したモデルと解析法を使ってダンパーとイナーターのパラメータをいろいろ変えて計算してみました。
ベースの赤は前回と同じ乗用車相当で変えていません、そしてイナータンス中心のセットアップにしてみてどうなるか見てみました。
ダンパーなしにすると発散してしまいどっかに飛んで行ってしまいます、減衰力をできるだけイナーターも置き換えた結果が青の線です。
どうです? なんか全然良くないですね、ばね上共振も抑えられてないのに7Hzあたりが強烈に盛り上がっています。
その7HzではDisp.のプロットでみると車体もホイールも盛大に振動しているのが分かります。
結局減衰力とイナータンスをいろいろ変えてみてもイナーターなしより良くなるセットアップは見つかりませんでした、なんで魔法のイナーターなのに全然良くないんでしょう?
Θのプロットを見てください、青のイナータの線はばね上共振のあたりでは小さいのに高周波へ向けてすごい勢いで上がっています。
これがイナータが効果がない理由です、効かせたい低周波ではスカスカでばね上共振を抑えられず高周波では効きすぎて接地性を悪化させてしまうのです。
ですからイナーターを乗用車とかバイクにつけようと思うのは止めておいた方がいいと思います、ヒョコヒョコしちゃうだけです。
じゃあどんな時ならイナーターが効果があるのか次のページを見てください。
ベースにずいぶんと固い車を設定しました、ばね定数が乗用車モデルから6倍以上だしばね上重量も半分以下ですから。
山がだいぶ右の方へ移送しました、ばね上共振が6.5Hzまで上がりました、実際にはサスペンションばね定数とタイヤばね定数が同じなのでばね上共振というのは存在しなくてばね上、ばね下合わせて一番動くところと言ったほうが正解です。
この車にイナーターをつけてチューニングしてみました。
今度はどうでしょう? イナーター仕様の方に変な山はできてないしCPLの山のピークも低く抑えられています、いい感じです、さらに高周波ではちょっと盛り上がりかけていますが変な山はできていませんから同等としましょう。
通常減衰力を上げていくとCPLでもDisp.のプロットでも山のピークは低く右へ(高い周波数の方へ)移っていきます、イナーターの場合ピークは低く左へ(低い周波数の方へ)移ります、これがイナーターの特徴でまるでばねを柔らかくしたような効果があるのです。
Θも見てみましょう、抑えなきゃいけない山がもう高周波になったのでそこから先のΘの上昇はそれほど過激ではなくなってきました。
高い周波数になればイナーターは有効であることが分かりました。
あーだからF1にはイナーターが効くんだ、と簡単にはいきません。
ダウンフォースの一番高いF1やSFでもピークは今回のサンプルほど高い周波数にありません、そもそもこれ以上ばねを固くしたらタイヤのばね定数より硬くなってしまいます、そうなったらもうタイヤがサスペンションです。
まあSFやF1のフロントはその領域ですけど。
ではイナーターはどんな状況で効果があるのでしょう? それには今のモデルでのシミュレーションでは不十分です、4自由度にレベルアップです。
ということでまだ続きます。