イナーターの解説には2自由度のマスばねモデルに路面から変位入力をする1ポストリグシミュレーションを使って行います。
モデルの説明です、第92,104回でも説明していますから見てみてください。 (http://a011w.broada.jp/cantalwaysget/D_course/pages/d-92.html)
今回は力のバランスの式にイナーターを追加しました、緑でハイライトしたXとYの加速度の差分にイナータンス “I” を掛けたものがイナータンス力です、この力がばね上とばね下に逆方向の力として掛かっています。
イナーターのモデル化は簡単ですね、ばね力、減衰力と次元、係数が違うだけです。
さて入力は路面からサイン波を入力します、サイン波は時間と共に周波数と振幅が変化していきます、7ポストリグとやることは一緒です。
各変数に使った数値は枠の中に示しました、まあ乗用車のイメージでそこそこ86に近い感じで。
今回は加振シミュレーションの結果の見本とその説明なのでイナーターのないベースと適当なイナーターをポン付けしたケースの2つを比較しました。
赤がベース、青がイナーター付きです。
左上のプロットは時間波形で動きのイメージをしやすいものです、振幅が大きくなっているところがばね上とかばね下の共振点の所です。
<Disp.>のプロットは前回の86のリグ試験結果でも使ったのでなじみがありますね赤で示したベースの車体の動きは86のベースにそこそこ近いとこを狙ったんですがちょっと減衰が低かったですね。
イナータをつけた青の線のピークが赤のピークより低く左へ(低い周波数へ)ずれてますね、まあ減衰の一種であるイナーターをさらに追加したんだから動きが少なくなって当然です。
イナーター付きは7Hzあたりにこぶが盛り上がってますね、その時白のタイヤの線が山を作っています、これは左の時間波形の真ん中のタイヤ変位のプロットで60秒あたりで振幅が大きくなってる所のことです。
タイヤがボインボインいっていて車体も揺すられているのが分かります、あんまりいいことではないですね。
Disp.のプロットは86でも使いましたからいいですね。
<CPL> これはあたらしいプロットです、CPLはContact Patch Load の略で接地荷重のことです、地面をどれくらいの荷重で押しているかです。
なぜこのプロットを使うかというとレース車ではグリップに直結する接地荷重の方が変位より意味があるということと、先のタイヤのボインボインなんかは変位が小さいので変位の図ではあまり大きく見えないんですけれどもCPLの図ならはっきり荷重変動が見れるということがあるからです、実際7Hzのこぶはよりはっきり見えていますね。
注意してほしいのはこの図では変位のプロットと同じように「山が高い」ということは「CPLの変動が大きい」ということで良くないことを意味しています。
<Θ> 前回説明したΘです、減衰力の効き具合を表す数値ですね。
イナータをつけ足したので青の線は赤のベースより上にあるのは当然として高周波に向けてぐんぐん上がって行っています、これがイナーターの特徴です、イナーターは加速度に応じた力を出しますから周波数が高くなると加速度はどんどん高くなりイナータ力も高くなっていくのです。
このプロットは減衰力の効き具合もわかりますしそれが周波数によってどう変化するかもわかる使えるプロットです。
今回はモデルと解析方法の説明として後付けのイナーターを比較してみましたが次回でイナーター、減衰力をチューニングしてベースより良くなる(変位が小さく、荷重変動も小さい)セットアップが見つからかやってみます。