第109回

109. <リザーバー側にリバウンドアジャスター>


珍しいものを見たのでちょっと注意しておこうかと

大分前に浜松のヤマハコミュニティセンターってヤマハのミュージアムみたいなところへ行ったんですよ、そしたらそこにあった昔のモトクロッサーに珍しいものが付いていて目を引きました。
リヤダンパーのリザーバーに3つダイヤルが付いていたんです、2つはありますよねバンプ(実物の表示はCOMP)のハイとロースピード、でも3つ目にリバウンド(Ten)があったんです。

大丈夫か?思いましたがヤマハワークスですからね大丈夫だったんでしょう。
今でもあるのかどこで作ってるか知らないのですがあるなら理屈を分かって正しく使ったほうがいいと思うのでちょっと書いておきます。
第13回<バンプ、リバウンド時の各室の圧力 (2)>にも書きましたがリバウンドの時にリザーバー側で減衰力を発生する場合の各室の圧力は図のようになります、リバウンドですからシャフトが出ていきオイルはリザーバーからメインボディへ流れ、出て行ったシャフトの体積を補填します。
リバウンドのアジャスターがリザーバーにあるということはこのリザーバーからメインボディに流れるオイルを絞って圧力差を出すということです、そして圧力差がシャフト面積に掛かり減衰力となります、この辺は第50回<内部圧力と減衰力の関係、シャフト>を見てください。
その圧力差ですがリザーバーの圧力はガス圧でいつも一定ですからメインボディの圧力P1が下がることで作り出します、でもどこまでも下がるわけにはいきません、圧力にマイナスはないですからね、一番下がってもゼロです。
ということは発生させられる圧力差には上限があるということです、圧力差の最大値はガス圧力と同じになります(Pgas-0)、これがシャフト面積に掛かりシャフトによるリバウンドの細大減衰力になります。
もちろんピストンで発生する減衰力がこれに加わります。

問題は減衰力を高めようそしてアジャスターを閉めていくとP1がゼロになってキャビテーションしてしまう可能性があることです、キャビテーションについては第41回 <キャビテーション >を見てください。
キャビテーションしてしまうとオイルが泡泡になってしまいますから次のバンプ工程に入った時に泡をつぶしきるまで減衰力が出なくなってしまいます。
だからこのアジャスターで変えられる減衰力は通常のシャフトの頭についてるリバウンドアジャスターに比べると随分と小さいものになります、元々シャフトは断面積が小さいですからメインボディに比べて圧力差のわり出せる減衰力は小さいのです

それなのになんでサブタンクにリバウンドアジャスター付けたんでしょうか? どうもKYB純正じゃないみたいです後付けパーツなんですかね?
私にはわかりません。 リバウンド減衰力におけるピストン部と新しいリザーバー部の比率は9:1とかじゃないですかね、シャフトとピストンとの面積比からしてもガス圧からしてもリザーバーで出せるリバウンド減衰力はわずかです。
そのわずかな減衰力を変えるより9割のピストン減衰力を変化させたほうがずっと効率がいいと思うんですが

何かライダーがいいって言う状況があったんでしょうね、私がダカールラリーの車の開発してた時2人でやってるメーカーのダンパー使ってました慣性バルブ内臓でジャンプしたときに減衰を抜く機構がついてました、オーリンズと比較してこっちのほうがいいっていうダンパーで実戦でも使いました、でも後からこちらで試験したら全然慣性バルブは効いてませんでした、メーカーは試験機も持ってなくて性能試験はできていませんでした。
それでもいいダンパーだと言われる状況もあるということで、このリバウンドアジャスターもなんか良さがあったんでしょうねぇ、京都の水で出した出汁は関東の水で出した出汁よりおいしいみたいなエキスパートが分かるような

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