もう説明したとばかり思っていましたが最近ある人と話していてふと気が付いたので今回はダンパー講座です。
ダンパー講座63回で説明したようにほとんどのダンパーはオリフィスとプレロードを掛けたポペットバルブで構成されています。
低速減衰力は立ち上げたいから二乗特性のオリフィスを使って、それでは高速で高すぎてしまうのでポペットバルブでカットする、まあそんな目論見です。
量産車のダンパーはほぼこの特性です、レース用でも4輪はこれですね、オリフィス面積とポペットのプリロードを可変にして押し引きで4wayの可変にしたりしますね。
レース車でたまに見るのが減衰力をどんどん固硬くしていって、でもモーションレシオをちゃんと考慮してホイール位置での減衰力を見てないから実際の走行で使用するダンパー速度領域ではポペットバルブが開かないくらい硬くてオリフィス領域だけで走ってるダンパーです。1本何十万もする4wayダンパー買って穴しか使ってないんじゃもったいないじゃんっていう残念な例です。
さて低速を立ち上げたいオリフィスですがオリフィスによる減衰特性は二乗カーブです、パラボリックなんて言い方もしますね。確かにぐいぐい立ち上がっていきますが最初の最初はとてもなだらかです、左中央のプロットの緑の矢印の部分です。
時々微低速減衰力がとても大事なんて言葉を聞いたことがあるかもしれません、二乗カーブではこの微低速の減衰力が十分ではないというのが今回のテーマです。
さてここに1自由度のマスばねモデルを用意しました、定数はまあ小型車の1輪分くらいと思ってください、減衰力はちょい柔らかめの0.3です。
マスを3.5cm引っ張って離してその収まり具合を見るというのが今回のシミュレーションです、これをベースにします。
結果は各プロットの青の線で示しました。
減衰力は減衰比一定ですから直線です、そしてマスの振動の収まり具合、収れんと言いましょう、は2周期ちょいぐらいで止まっています。
続いて新たに2つの減衰力特性を試します、二乗と2/3乗特性です、0.15m/sで比例特性と同じ減衰力になるように調整しました。
なんでかっていうとこのシミュレーションでのダンパー速度が左下のプロットのように0.25m/s弱なのでいい頃合いかなと、減衰力特性図はシミュレーション時に発生したダンパー速度と減衰力のプロットです、ちゃんと二乗と2/3乗になっていますね。
プロットをよく見ると点々の密度が濃いところ、つまりよく使っているところはダンパー速度 0.05m/s以下の領域です、これを見ただけでももう微低速領域が大事なのはわかっちゃうと思います。
結果を見てください、二乗特性の緑は全然振動が収れんしません、まあこの先大分行ったところで最終的にゼロになりますがリニア特性の青と比べて大きな差があるのが分かります、二乗特性は振動が収まろうとするダンパー速度が遅い時に減衰力が低過ぎて収れんが遅れるのです。
それに対して2/3乗特性は赤ですが1.5周期ぐらいで収れんしています。このように0.1m/s以下の減衰力は収れん性にとても大きく影響します、微低速減衰力が大事というのはこう言う訳からなのです。
微低速減衰力が足りないとなんか落ち着かないピタッと止まらない乗り心地になります、一方微低速減衰力を上げるとフワフワ感を抑えしっとり締まった乗り心地になります。
量産車ダンパーメーカーでも当然分かっていてこれまでに二乗特性を改善すべくオリフィスにシムを組み合わせてリニアな特性にしたダンパーが各社から生産されてきました、でもコストからこれが一般的なダンパーにはなっていませんね。
ダンパーダイノで減衰力測るときには20mm/sとか40mm/sとか微低速域もちゃんと測るようにしましょう、ダブルウィッシュボーンや2輪のリヤのようにモーションレシオの大きい車両は特に注意しなくてはいけませんよ。