減衰力とはダンパー速度に応じた力のことです、変位に応じた力はスプリング力になります。
スプリング力は変位に応じた力ですから押し下げてそこで止めておけば押し下げた分の反発力が定常的に発生します。
一方減衰力は速度に応じた力ですから押し下げて止めておいても力は発生しません、押し下げている途中、戻る途中のように動いている時でないと力を発生しません。 ダンパーは動いている時つまり過渡の状態で力を発生するものなのです。 そしてその力の方向は動いている方向に対抗する方向です。
もしスプリングとダンパーが 組み合わされた物(サスペンション)がここにあり、そこに力が掛かるとすると、力の分だけスプリングはたわもうと動き出しダンパーはそれにブレーキを掛けようとします。そして力とスプリングの反発力がつりあうところで止まりダンパーはそれ以上仕事をしなくなるということです。 そうです減衰力はブレーキのようなものですね、動いている車の速度を下げようとしますが止まっているときにはブレーキを踏んでも何が起きるわけではありません、それと似ています。
図はダンパーあるいはスプリングをダンパー試験機に取り付けてサイン波形の変位を入力したときの計測値のプロットを簡単に書いたものです。 プロットが直線になっているものが比例関係ということですから、減衰力は速度と比例関係、スプリング力は変位と比例関係だというのが分ります。
話はそれますがこれがダンパーがコーナーへのターンインとかコーナー出口のトラクションの掛け始めとかに効く理由です。車両が一定の速度、旋回半径で旋回することを定常円旋回といいますがコーナーの真ん中で舵角、スロットルが一定で旋回している状態(実際はすごく短いですが)を定常状態と言い、直線から定常状態に移るとき(ターンインとか言う)を過渡状態と言います。過渡状態ではブレーキング過渡では車両はピッチし、旋回過渡ではロールしサスペンションが動きます、このうち動き始めの変位がまだ小さい時に速度により発生する減衰力が 効くのです。
余談ですが昔ある新米レースエンジニアが減衰力のグラフを見て「この横軸の速度って車速の事?」って言い放ちました。減衰力は車速が上がると固くなっていくと思ったらしいです。
次回からダンパーの基礎に入っていきます。