5月のクラブツーリングレポート

 今回のレポートBMW R100GS/PDの辻さんです。

 蔦木宿はその昔、江戸と信濃国を行き来する武士や商人で賑わったところ。参
勤交代のお殿様が、或いは水戸黄門が助さん格さんらと立ち寄ってお焼きでも食
べたかもしれない、甲州街道43番目の宿場町である。
 今回のビッグオフロードクラブツーリングはそんな「道の駅 信州蔦木宿」が
出発点となる。5月30日(日)午前9時30分、ゾロゾロと集まった新旧オフロード
バイクは総12騎。そのほとんどは落ち武者風であるが、まだまだ若いもんには負
けんと意気込む兵(つわもの)ぞろい。土谷エレファントをはじめ、岡田R11
00GS、高橋アフリカツイン、松木KTMーADV、二木アフリカツイン、望月
アフリカツイン、柿沼DR650、佐多F650GD、川島KLE400、象潟
KTM-ADVに加えて、初参加のWR250Z(象潟さんのお友達)すわ、いざ出
陣?!である。

天気は良好、しかしバイクはドロドロ!

 時間を少し前に戻し、5月29日(土)の天気予報によると翌日の関東地区は曇りか雨。家を出るときに雨が降っていたら気持ちも萎える。ただ、長野は晴れるという予報に一縷の希望を託すしかなかろう。準備を整え、朝7時半の談合坂集合を目指し就寝。2度寝したい誘惑を振り払い、6時15分に起床。 プロテクターを付けていると寝床から妻が「ヨロイ?」 戦場に向かう武士の出で立ちに見えたのだろう。石を打って(せめてコーヒーでも一杯入れて)送り出してくれるのかと思って待っていたら、まったくその気配なし。これが集合場所に20分遅れた理由である。(苦しい言い訳です、はい)
 談合坂手前で霧雨になったため、雨具を着て走り出すが、笹子トンネルを抜けると甲府盆地は晴れ。天気予報もたまには当たるのだと感心した。

 

 蔦木宿で勢揃いした落ち武者風ビッグオフ一団は、いつもならいるはずの切り込み隊(松田さん、宮ピーさん)不在のため、土谷隊長自らが先頭に立ち、甲州街道を北上。そして、まずは金沢林道へ攻め入る。難なく分岐点までたどり着くが、その先の高嶺林道に思わぬ敵が待ち受けていた。 
 雨後のチュルニュル攻撃だ。若いころなら焦りから脱落者も出たかもしれない。油断しているとカーブごとにスリッピーなドロ道が現れるが、下手な技は使わず、茶色の水をたたえるわだちの中に突っ込み、派手な水しぶきを上げながら高嶺林道を抜け、「道の駅 南アルプス村長谷」に。チュルニュル攻撃をうまく切り抜けたつもりだったが、到着後、ドロドロになったバイクと汗だらけの顔が皆の苦難を物語っていた。

  

 お約束のトラブル発生!

 ここでひとまず、昼食となる。私の2006年版「ツーリングマップル」によると、この道の駅は「焼きたてパンが人気」とある(2010年版にはより具体的に、ミニクロワッサンとメロンパンがいいと書いてあるらしいが本当だろうか)。
 ゴールデンウィークは佐渡島ツーリングを満喫してきたという餅憑さんと、今から帰宅後のドロバイクの洗車で悩んでいるブラックアフリカン二木さんが、名物のパンを、その他大勢は雑穀ハンバーグとチキンカレーで各々食事をすませる。そしてそろそろ出発かと思いバイクに戻ると柿沼DR650の周りに人垣が…。近づくと土谷会長とWR250さんがDR650のリアウィンカーを外して配線工事の様相。どうやら高嶺林道を走行中にウィンカーのステーが破損したようである。
 およそ15分後、はたしてドライバーと六角レンチを添え木にガムテープでぐるぐる巻きにされ応急処置を終えたDR650は戦列に復帰。本日2本目の難所、黒河内林道へと向かうのであった。

   

 林道に沿って流れる渓流は、釣り好きにとっては目の毒である。ニジマスやヤマメに思いをはせながら走っているといつの間にか黒河内林道のダート。先ほどの高嶺林道とは異なり、こちらは深めの砂利と石ころが、空気圧パンパンのタイヤを押し返してくる。
 途中で出会ったキャンピングカーの夫婦が、この先に崩落があると親切に教えてくれる。どっこい、こちらはバイクである。こいつを北上して入笠山の脇を抜ければ、今朝方走った金沢林道に出て、今日の楽しい走りは終り、諏訪南から中央高速に乗ってそれぞれ帰途につく…。ちょっとくらい無理してでも抜けたいのである。と甘く考えていたが、今回もまた神のいたずらか、前回の千葉と同様、我々の行く手を阻む「行き止まり」の看板と重機の群れ。あと数キロ先のゴールを目前に、落ち武者軍団は来た道を引き返さざるを得なくなる。これもまた運命であろう。

  

「本陣の このわが友と いにしえの 蔦木の宿を 歩む夕暮れ」(与謝野晶子)

 この日2度目となる「道の駅 南アルプス長谷」にて。お互いの健闘をたたえあって解散するはずだったが、旅は道連れ世は情け、12騎仲良く最初の金沢林道を抜けて諏訪南を目指す。午後5時、高速入り口前のガソリンスタンドで燃料補給し解散。
 中央高速に乗るとポツポツと雨が落ちてくる。今朝からなぜか点きっぱなしのバッテリーチャージランプが不気味なので、とにかく急いで帰りたい。途中、ひとりで休んでいるうちにバイクが動かなくなる、なんて恐怖を味わいたくないのでノンストップだ。渋滞の車の間をすり抜けながら、午後7時半無事家に到着。走行距離435キロであった(後日バイク屋でバッテリーを交換してもらったところ、ダイオードボード交換やらエアクリーナー交換やらで6万5千円の出費。旧車保存も楽ではない)。
 今回も土谷隊長が前を走り、後ろを走り、カメラを構え、修理をしての一人何役もこなしてくれたおかげで、信州の山奥走行を満喫することができた。ただただ感謝である。