SSER東北3DAYSラリー2018レポート

7月の北海道4DAYSに引き続き、KTM690EDでチャレンジした斎田好宏がトップバッターでお送りします。

  
【プロローグ】

 東北3daysに出ることになった参加メンバーはそれぞれにいきさつはいろいろあると思うが、自分にとってその理由の1つは北海道4daysのday3の宿泊場所で東北3daysのコースディレクターの佐藤さんと相部屋になった事が挙げられる。その方が言うには東北3daysではテントは不要で全部宿泊施設が用意されること、用意する料理やお酒を吟味して参加者を食の面でももてなすと言う意思が強くあるとの事だった。これが最初に自分の興味を引いたきっかけになったと思う。それでも、当初は自分は東北3daysには出ない予定だったのだが、秋のDOAがどうしても都合がつかなくなったので、東北3daysのおもてなしの件を思い出し、こちらに出ることにした。
 今回参加した他のメンバーも理由は様々であろうが、何しろ初開催のラリーなので何が起こるか分からずその準備段階からいろいろと盛り上がりそうだ。今回も参加は北海道4daysと同様にKTM厚木とBOCの合同チームとなる。参加メンバーは、近藤さん、西口さん、自分、斉藤さん、早坂さん、水出さんである。エントリー段階ではこれに加えて加藤さんがいたが仕事の都合で出れなくなったとのこと。
 事前準備の段階で夜間走行があるという事が話題になった。しかも夜のSSがあるらしいと言うことになって参加メンバーはライトの増設を検討で盛り上がった。自分もライトの増設を検討して色々と買い込んで試みたが、道交法的にはヘッドライトよりも高い位置にライトを増設したらNGらしく、せっかく購入したライトを取り付けする場所が見つからずに諦めてしまった。しかし、これは杞憂だった様で、当日の車検の会場ではヘッドライトよりも高い位置にライトを増設したバイクがいて、車検も通過していた。公道ではスイッチを切ればOKなのだろうか、調査不足の自分を反省する。
 もうひとつ事前準備の段階で気を使ったのは休暇の取得である。行き返りで事故を起こさないために、前日移動と終了後の翌日も休日を取ることを妻に条件とされたため、前日移動も含めると10月に有給休暇を3日も取ることになった。申請を何回かに分けてみたり色々と小細工をして何とか有給を取得することができた。

 
【前夜祭】

 ラリー本番の直前2日前にあたる水曜日に、集まれる人で新宿の居酒屋に集まり前夜祭をした。参加者は水出さん、近藤さん、辻さん、斎藤さん、高橋さん、佐多さん、自分であった。西口さんも出席の予定であったが、かなり体調を崩した様で体調回復に専念するために今回は欠席とのこと。皆、西口さんの心配をしつつも大いに盛り上がった。

  

 
【Day0 前日移動と車検】
 自分は前日に移動して日が暮れた頃に何とかラリーの受付会場に到着することができた。そのまま車検と装備品の検査を受けて難なくバス。他のメンバーも事前に車検をパスした様で、これで明日のスタートを切ることができると安心した。自分は早めに宿に戻って今日は早く寝ることにする。

  

 
東北3days 1日目 10月19日(土)第1章

 いよいよスタートだ。他のメンバーも表情が明るい。直前の体調不良で出場が危ぶまれた西口さんも調子が良さそうだ、よかった。自分のゼッケンは28番で他のメンバーも大体その前後に集中している。いよいよ自分のスタート順になり、そしてスタート!コマ図に従って、順調に工程を進める。スタートから10キロ位の地点でダートに入ってしばらく走っていると何やらバイクの調子が変だと気付いた。アクセルを開けてワンテンポ遅れてショックが出る。毎回ではないがたまに出る。気にはなるが普通に走れているのでしばらくそのまま走る。その後も症状は続いたので、一旦林道の中でバイクを止めてチェックをしてみた。すると今まで見たこともない位にチェーンがたるんでいるのを見つけた。車体左側のチェーンのアジャストボルトのロックナットが緩んでいた。その結果、アクスルシャフトがだいぶエンジン側に引き寄せられてしまっている。おそらくこのまま走っていたらチェーンが外れて大変なことになっていただろう。慌てて携帯工具を取り出してチェーンを引く。あの状態でしばらく走ってしまったので他へのダメージが気になったが、気にしても仕方がないのでそのまま走る。しばらくは様子を見ながら走っていたが、大丈夫そうなので一安心。
 その後もラリーを進めてダート走っているとコマ図の35km付近で曲がり角を越えたあたりで少しふらついた、しかも運悪くそのままヨロヨロと崖から落ちてしまった。やってしまった・・・。でもどこも痛くない怪我はしていないようだ。よかった。とりあえず落ち着いてバイクのエンジンを切る。崖落ちしたものの大した落差もなさそうなのでそのまま崖をよじ登ろうとする。その時、少しよろけて後ろを振り返ると、崖の底までは50m位の結構な高さがある事に気付いて驚いた。落ちたら大変なことになりそうなので、しっかり崖をつかんで慎重に登ることにする。
 崖をよじ登って道の端に出て大きく手を振って何台かの後続車両に止まってもらった。3~4台止まってもらっただろうか、高さ的には救出できそうなのだが、崖の角度と崖底までの距離に皆たじろぐ。ここで無理をして他の参加者に怪我をさせてしまっても申し訳ないので、残念ではあるが参加者間の助け合いでの救出は諦める。チェックカードの封筒に書いてある緊急用の電話番号に電話をかけようとするかが、自分の携帯電話では電波がつながらない。auだからだろうか。困っていたところ他の参加者が自分なら通じると携帯電話を貸してくれる。借りた携帯を使って緊急連絡先に電話をする。崖から落ちた旨とコマ図の大体の地点を伝える。主催者側からスイーパーが到着するには1.5時間ほどかかる旨を伝えられた。仕方がないのでとりあえず待つことにして他の参加者には先に進んでもらった。
 ここからは1人の時間、しばらくは他の参加者が目の前を通り過ぎる。皆心配そうな様子を見せてくれるので心配ない旨をジェスチャーで伝える。小一時間もするとそれも途切れて誰も通らなくなる。暇だ・・・ほんとに何もやることがない。仕方がないので景色を眺める。見渡す限り木と葉っぱそして青空。少し空腹を感じる、携帯食料はバイクの振り分けバックに入っている。わざわざ崖を降りて食料取るのも面倒なのでリュックを少し漁ってみる。そうしたらスニッカーズが見つかったので、とりあえずこれを一つ食べる。スニッカーズを食べながらあったことを少し思い返してみる。崖から落ちたのが午前11時30分くらいだろうか、それから後続車両に止まってもらって、あれこれして緊急連絡先に電話できたのが12時少し前位だろうか。こうして色々と思い返しているうちに主催者側のスイーパーの人たちが来た!よかった、これで脱出できる、そう思った。
 現場を見てもらったらところ、バイクを引き上げるのに人数が足りないそうだ。スイーパーの人が2人と自分を合わせて合計3人いるが難しいらしい。いつもならハンドウィンチを持っているそうだが今日に限って持ってきていないとの事。これさえあれば10分くらいで終わるのになぁとスイーパーの人がぼやく。それでも、ハンドウィンチが無いなりに3人でしばらく頑張ってみる。少し引き上がってたのだが、やはり引き上げきることができない。仕方が無いので諦めて他の方法考えることにする。スイーパーの人が出した結論としては、SSが終わった後にSSを取り仕切っているメンバーにここに来てもらい救助してもらう方法だった。ただし待ち時間はこれから2時間だ。この話が出た時点で午後2時を過ぎている。4時半ぐらいまで待つ事になるだろう。救出を完了する頃には日が暮れ始めるかもしれないが、仕方が無い。スイーパーのお二人にはその役割を全うすべく先に向かってもらい自分だけそのまま待つ。一度は助かると思った後の更なる待ちはなかなか堪える。
 また、山の中で自分以外誰もいない。仕方がないので瞑想でもしてみる。そうすると音がよく聞こえる。いつもなら気にも留めないが、周りで生き物がガサゴソと動いたりして音を立てているのに気がつく。左の斜面の上には鳥が潜んでいて鳴き声と動く気配がする。右の丘の上にはリスのような鳴き声がする。これをずっとやっていたが瞑想も飽きてきた・・・暇だ、本当に暇だ。こんなに暇な事は日常生活ではまずない。色々と自分を見つめ直す良い機会ではあったのではあるが、ここではそれは割愛する。座ってボーッと辺りを眺めていると、林業関係者とおぼしき車が時折通る。
 僕を見つけると必ず2度見する。それはそうだこんな山の奥に乗り物もなしに、ド派手なオフロードウェアを着て道端に座っているんだから。きっと相当不審に思われてるに違いない。だから皆二度見はするものの、まず声を掛けてくる事は無く、そのまま行ってしまう。通り掛かった車の中に1台だけおばちゃんが運転する車があった。「近藤さんならこれで何とかできるのかなぁ」等と少しよぎる。その後もボーッとして時間が過ぎて4時過ぎぐらいになると主催者側の救助隊が来てくれた。今度の人数はかなり多く7、8人いたように思う。「今度こそ助かる!」そう思った。やはり人数の力は偉大で少し時間が掛かったものの無事にバイクを引き上げられた。引き上げてもらった後アスファルトの道まで一緒に出る。そこでそれぞれ分かれてビパーク地に向かうことになった。高速を使うか迷ったが高速を使うと少し遠回りになるので下道で向かうことにした。まっすぐビパーク地へ向かった。下道で向かったら思いのほか時間がかかりビパーク地に着いたときには19時少し前になっていたように思う。たいした距離を走っていないのに今日は疲れた。他のチームメンバーに無事な姿を見せて、夜の宴会をしっかり楽しんだ。今日はいろいろあったが、無事に終えることができたのでよしとしよう。

  

 東北3days 1日目 10月19日(土) 第2章

斎田さん転落のあと、第1日目担当の近藤@KTM690Enduro-Rでお送りします。
 さて、斎田さんが自分を見つめる4時間を崖下のバイクとともに送っているなんて露ほども知らなかった近藤@KTM690Enduro-Rです。SSER参加は3回目、今回のテーマは初心に戻り転倒せず無事に完走することです。というのも、7月の北海道4daysでは自分の中の欲に負けてタイム短縮を目指したあげく、SS区間でばかり4回も転倒し肩も痛めてしまった事への深い反省があったからです。もっともMRIで右肩の鍵盤一部断裂が判明し11月には内視鏡による修復手術をすることが決まっておりましたから、自重するのは当然ですね。
 第1日目は原発事故の被害をもろに受けた広野町や楢葉町から西に向かい、桜で有名な三春町を抜けて、安達太良山のふもとでビバーグするという、福島の浜通りから中通りに向かうルートでした。いま改めてコマ図を確認したら、第1日目の走行距離は205.08kmで、その途中に15本ものダート・林道が含まれるというものでした。もちろんダート・林道の中にはごく短距離のものも混じっていますが、10時のグランドスタートから17時過ぎのゴールまで7時間ほどのコースにしては相当にダート率が高かったですね。福島の林道はBOCの集まりやDOAなどで何回も走っていますが、今回は初めて走るダートが多く、福島は林道天国だなあと感じました。
 でも実はこうしてダート・林道を楽しめるのは、コースディレクターの佐藤直美さん(通称ナックさん)が地元の警察や自治体そして林業組合などに交渉して走行を許可してもらった場所がたくさん含まれていて、いつでも誰でも走れる場所じゃないと思います。ナックさんのFacebookを拝見すると、大会終了後にコースが荒れてないか確認に回っておられます。オフタイヤで道がひどく掘られたりしたら主催者の責任で修復するという約束を林業組合との間で交わしていた場所もあるそうです。その意味でSSERの機会というのは、参加費も高いし時間もとられるのだけれど、普段は走れない林道を堪能できる貴重な林道ツーリングの機会と捉えることができるのではないでしょうか。この場をお借りして、すばらしいコースを堪能するようお骨折り頂いたナックさんに感謝です。
 コースに戻ります。今大会最初のSS区間は64.55kmから71.62kmまでの7.07kmの区間です。前半は緩い登りとフラットダートで早い人はガンガン飛ばせるのでしょうが、北海道4daysの転倒トラウマが効いている私は慎重運転を心がけました。特に、北海道では下りのカーブで転倒していますので、SS後半の下りカーブは超スローインでファーストアウトを心がけました。やったー、無転倒でSS1を通過したぞ。

  

 SSが終われば79.93kmのガソリンスタンドで給油です。ガソリンスタンドだけは最初に3日分のコマ図を渡された時に赤印をつけて見落とさないようにしました。今回の東北3daysでは、市街地を走る機会が極めてまれで、食事はたまに遭遇するコンビニ、給油も1日のコースで数か所のガソリンスタンドでの給油となりました。北海道4daysの場合は、あちこちにセイコーマートがあり、ガソリンスタンドがありました。その違いは、北海道の場合はリエゾンとして選べるルートは限られていて市街地を通らざるを得ないのに対して、福島の場合は道が多くて市街地を避けてもリエゾンを設定できるからなのでしょう。来年参加される方、東北ラリーはコンビニを見つけたら速攻で昼食の確保、ガソリンスタンドを見つけたら給油を心がけることが一つのポイントです。ねえ、西口さん!
 それにしてもナックさんのコマ図は正確で親切で分かりやすいです。ハウスとか赤い屋根とか目じるしも丁寧に書き込んでありますし、距離のずれではないかという場所は1日に1~2回くらいで、迷いようがありません。133.39kmから前日試走で判明した工事中のう回路も、朝のブリーフィング前に書き写してフロントに用意していたので困りませんでした。10月初めは暗くなるのが早いですね。午後4時前には山中の林道は薄暗くなり、4時半ころにはライトなしでは走れないくらいでした。真っ暗になったビバーグ地についたのは17時過ぎ、まあまあ早いほうですかね。車両保管所のパルクフェルメにはバイクを預けず、簡単なチェーン掃除と注油をあとでやることにして、まずは寝床の確保です。
ちょうど早坂さんと1日目のゴール後に顔を合わせましたので、預けてある20キロ制限のバックをトラックに取りにいきました。本日の寝床は、なんと立派なロッジでグループごとに調整されていました。私たちのロッジにたどり着くと、私と早坂さんは一番乗りでした。1階は和室、2階は2名用のベッドルームと広いリビング、お風呂も付いてます。ええーっ、これまでのSSER体験で最高の寝場所ではないですか。嬉しい!先着の特権をフルに活用して、私と早坂さんはツインのベッドルームを占拠させてもらいました。
 お風呂はロッジ付属のものでなく、日帰り温泉施設を利用できたのも幸いでした。西口さんたちも集まり、いよいよ食堂で宴会かという午後7時半ころだったでしょうか。安達太良山のふもとの森の暗がりから、トボトボと歩いてくる斎田さんと再会です。実のところ、ビバーグ地についたところでLINEグループの投稿を見て、斎田さんの事件は皆の知るところになっていました。問題は、いつになったら帰ってくるかでした。お風呂も夕食も時間制限ギリギリです。斎田さんにはお風呂は速攻ですませて、食堂へと伝えて私は先に皆と宴会に突入しました。斎田さん、大変でしたね。
 食堂宴会のあともロッジ宴会が少し展開されて、その日の武勇伝やら失敗談やらに話の花が咲きました。明日は第2日目、中通りから会津へのルートが待っています。ロッジ宴会は早めに切り上げて、お休みなさーいです。ああ、そうそう、今日は転びませんでしたよ。2日目と3日目に疲れ果てたころの右カーブで1回ずつ軽い転倒をしましたけど、SS区間では一度も転倒なく、無事に完走できたのは今大会の収穫でした。気を付けよう!長い林道後半の集中注力低下と膝グリップの緩み、これが教訓ですか。

   

 
東北3days 2日目 10月20日(土) 第3章

 みなさん、こんにちは。久しぶりに、幽霊部員の齊藤が、2日目のレポートを担当します。なんで僕が2日目を担当するかっていうと、ラリー直前にKTM500に乗り換えて、ノリノリな西口さんを、ナイトラン対策でプレッシャー与えたから・・・かな?

 *前日夜から朝にかけての雑感

 初日のビパークは、快適かつ綺麗なコテージだった。車両の整備場所及びパルクフェルメまでの距離が少しばかり遠いのが難点ではあるが。そのビパークに、うっすら暗くなってから到着して、ライティングギア装備を解除し、風呂&夕食という慌ただしいラリー時間を過ごすには、少しもったいない宿だった。おかげか、夕食と風呂などのひと通りのルーティンを終え、コテージにみんなが戻ってからの夜のSSは、ラリーに負けず劣らずに贅沢な時間になった。布団で寝れるコテージのおかげで、そんな夜のSSの影響は皆無で、翌朝の体調は万全だった。
 東北ラリーが開催される1週間前の天気予報では、ラリー2日目は晴れ予報であったものの、起きてみると実
際の天気はスカッと快晴ではなく、初日に続いて雨具が必要になりそうな空模様。うーむ・・・。

 2日目の概要

 2日目の走行距離400キロと長いルートだ。SSER一行は、朝のSSをこなすため、一旦、ビバークを北上してSSの設定された山を周回した。その後、針路を南に向け、そこそこのペースで走行可能なルートで猪苗代湖を右手に見ながら距離を進めるが、猪苗代湖南部を過ぎさらに西へ針路を向けた辺りからは、アスファルトの路面に落ち葉が重なっていたり、少しガレ気味の林道だったりと、ペースが上がらないルートを行く。きっと、これも福島らしい路(みち)なのだろう。しかしながら、途中のCP1にオンタイムでたどり着いても、なおも残り100キロ以上のルートをこなさなければならず、また、午後になるとカッパを着るエントラントがいるくらいに雨足が強まってきており空は明るくないことと、この時期の山の中の林道で、開設時間が1630からということを考慮すれば、この日としては2つ目、ラリー全体では3つ目となるSS3は、ナイトランになることを覚悟せざるを得ない。
 この日は、ナビゲーションをこなしながらの総走行距離400キロは、視界を悪くする天候もあいまって、TBIを彷彿させるような1日を、多くのライダーに体験させてくれたと思う。(まぁ、自分も1度しか出たこと無いので、想像でしか無いが…)この日後半のペースの上がらないルートは、ペースを上げれないルートに行く手を阻まれることのほぼ無い北海道4daysしか参加したことのないチームメイトには、キツいルートだったろうと思う。なお、本来なら朝イチで磐梯吾妻スカイラインからの紅葉の絶景が拝めたはずだが、噴火警報?の影響で危険レベルが上がって通行止めとのことで、ルート変更になったとか。非常に残念。

  

 
2日目スタート~SS2

 2日目のスタート順は、初日のSSの順番で決まるわけだが、KTM厚木BOCのメンバーは、上から、西口さん13番、齊藤23番、早坂さん43番、水出さん59番、近藤さん63番、斎田さんはトラブルでリタイア扱いの最終スタートとなっている。
 スタートして1時間もしないうちに、本日1本目のSSだ。初日のSSは1つだったので、ラリーとしては、SS2ということになる。このSS2は、ルートブックによれば、ところどころアスファルトのある林道とのこと。しかも走ってみると、路面はところどころガレていて、草もかなり茂っており、走りにくい林道だった。あまりにも走りにくいもんだから、セクションこなすような感覚に陥ってしまい、途中、アスファルトが長く続いた時は、ホッとしていてタイムアタックしているということを忘れて、ツーリングペースになってしまった…(汗) 後から西口さんと話したら、同じようなことを言ってたし、みんな似たようなものなのかもしれない…(トップグループやSSに全力を集中しているエントラントは、そんなことは無いんだと思うが)
 SS2を終え、この時間帯はまだところどころに青い色味がのぞく空と紅葉した山肌を見ていると、天気は秋晴れという表現がぴったりで、午前中はとても気持ちの良いナビゲーションタイムだった。ナビゲーションも難しくなく、むしろナビゲーションしながら走ることこそが、極上に贅沢な時間に思えるこのルートを、ヒトの後を追っかけて走るエントラントはもったいないことをしていると思う。信じられないことだが、きっとSSにしか興味が無いのだろう。出来れば、負けたく無いな、と思う。
 その後、猪苗代湖をかすめて湖の南部エリアから広がる山の中のルートに入って行くのだが、山の上には怪しい雲がかかっており、しだいに天候がくずれだし、SS3に向かう道中には、瞬間的に強い雨にあったエントラントもいたのではないかと思う。自分は、漢のカッパ無し!ですが(笑) それでも、周りの木々が紅葉した林道や、紅葉が路面に敷き詰められた林道など、秋を満喫できたと思う。これまでSSERでは無かった、秋の素晴らしい紅葉の景色を、ラリーナビゲーションで堪能するのは、お得だと思う。
 さて、問題のSS3だが。確か開設前に到着したが、秋の16時半を回った林間は、予想どおり暗闇となった林道に、前走のエントラント達が、30秒おきに入っていくことなっていた。スタート地点から100メートル先に見える左コーナーを曲がったら、先を走るライダーの様子は見えない。おまけに、弱く降っているものの雨の降る音と湿気に、バイクの排気音はかき消され、先の様子は全くうかがえず、慣れたライダーであっても、多少は不安を覚えることだろうと思う。
 比較的前の方でSSのスタート地点に到着した時は、前にいたライダー達は、一人一人と闇夜に消えて行き、一つ前にSSインした西口さんの姿が左コーナーに消え、いよいよ自分の番が来たので、準備していた補助灯を点灯する。うわっ!爆光だ!!これはイケる!!!(笑) 走行に必要な路面の様子は、ほぼ昼間と同じように視認できる。相対的には、準備不足でライトの暗いライダーに比べて、視力が高いのと同等だ。
 1週間前に、友人宅をお借りして最終整備の時に装備した補助灯は、大正解で、350EXC-Fのノーマルヘッドライトに光量アップのLEDを投入して正面を照らし、補助ライトの向きは左右を広く照らすように最終調整して、自分のスタートを待つ。約8キロのナイトSSは、朝のSSのように走りにくい路面ではなく、夜に使うだけあって、比較的走りやすい林道だったように思う。途中、右手に山の斜面を見るようにSSを突き進んで行くと、コースの左手がどんな崖なのか暗闇でわからない右コーナーを抜けると、次は左コーナーが待っているのだが、暗くてわからないが、たぶんかすかに散りはじめた紅葉の木々の間から、前走者の弱いヘッドライトがチラチラと確認できる。相手にも、こちらの光が届いているはずだ。
 獲物を見つけたら落ち着いてペースアップし、ラリーは準備が全てだと言わんばかりに、一気に追いつきそして抜き去る。正直に言って、この一連の動作と感覚は、快感でしかない。こんな快感を二度味わうも、相対的に視力(光量)の低いはずの西口さんに追いつかない…。まぁ、あの人は、ダメだダメだと言いながら、こっそりコンディションを整えるタイプだから、ライトも秘策があったのかもしれないな。なんて考えながら、快走していると、少し先の斜面にまたヘッドライトがチラチラと見えてきた。
 SSの距離的には、このライダーを抜いたら最後かもしれないなと、最後のプッシュ!また一気に差を詰めたら、このライダーが西口さんだった。ところが西口さん、ズルい…。煌々と路面も周りの木々も照らす僕のライトの力を借りて、ペースアップしやがった!! 思わず、「ひでぇ!ヒトの明かりで走ってやがる!!」と、ヘルメットの中で呟いた。ほんと、ズルいから!!(笑)
 この時、本気で補助灯のスイッチを、切ろうかと考えた(笑) 実際は、路面が悪くて、スイッチを操作する余裕が無かった。まぁ、良いや、どうせ周りは僕のライトでよく見えても、自分が影になって正面が暗くなってペースアップしてたとしても、たかが知れているだろう。と、ちょうどコンディションが悪かった路面をやり過ごしたら、一気に抜き去ろうと思って、一つコーナーを抜けたら、さすがこれまで抜いた2名のライダーと違って、無謀にも暗いままにペースアップしている。全く譲る気は無いようだ。
 あれは、ちょっとした博打みたいなもので、運が悪ければ転倒してもおかしくないが、このヒト運は悪くないようで、また真後ろに張り付いて抜こうとしたところで、コーナーの先にCP100のフラッグが現れた…。30秒タイムを縮めることはできたが、残念ながら抜き去ることは出来なかった…。もう一つコーナーがあれば抜いて、あと1秒差を詰めていたと思うが仕方ない。これもラリーである。その後、30分くらいツーリングしたら、ビパークに到着。
 この日は南会津の施設で、体育館の中で寝るようで、ルートを外れて先に到着していた斎田さんのアドバイスを聞き、まずは寝床を確保。次に、GSのトップライダーである原さんからシャワーが3つしかないという情報を得て、先にシャワーを済ませた。食事場所も、それほど大きくはないようなので、飯と一杯だけビールを済ませ、タイヤ交換をした。新品から、DAY1、DAY2と使ったSHINKO216MXは、2.5部山程度で、このまま3日目も行けそうな気がしたが、せっかく持ってきてるので、めんどくさがらずに交換した。交換したタイヤは、八坂ミーティングで使った中古のSHINKO216MXで、7部山だが、3日目300キロを走るには充分な残量だ。さすがに、400キロ走ると体に疲れがたまっているようで、やることやって、仲間と少し飲んだら、3日目までの総合リザルトが出る前に寝入った。
DAY2 完

 東北3DAYSラリー、3日目レポート 第4章
さて、3日目レポート担当の西口です。

  

 疲れた。ほんとに疲れたってのが3日間の印象だ。精神的にも肉体的にも疲れてすっかり燃え尽き症候群だ。もうしばらく林道は見たくもないってところだ。ところがどうだろう。これを書いている3週間後の本日現在、来年の北海道4DAYSの休みはとれるかなあ、なんて心配している自分がある。喉物過ぎれば何とやら、ますますのバイク馬鹿っぷりである。
 北海道4DAYSをKTM690ENDUROで走り、上位陣の圧倒的な走りに度肝を抜かれ、負けず嫌いな性格に火が点いて、気が付くと500EXC-F 6DAYSと言うお化けみたいなマシンを買っていた。車重111キロに64馬力と言う、セローより軽い車体にナナハンを積んだようなシロモノだ。だいたい、昔からバイクもクルマも火が点くとろくなことが無い。金と時間の浪費。もうやるまいと決めていたのに。でも、出ると決めた以上、北海道の21位よりも上位に入る事を目標としたかった。目標、10位台!怪我も崖落ちもせずに無事帰って来られたのは、これはもう完全に年の功ってやつだ。ずっと自分に言い聞かせてたもの。集中!集中!油断するなよ、油断するな!気を抜くと転けるぞ!
 今回初開催となったラリー東北のコースは、はっきり言って面倒でウザい。そのウザい理由は、リエゾンにある。福島県の狭い範囲内で一般車通行禁止のSSを4本も設定するなど、警察や自治体との調整は想像を絶する苦労があったはずだし、開催者の方たちの努力には脱帽、敬意を払いたいが、リエゾンはDOAやBOCツーリングで見覚えのある県内の道ばかり。同じ様なRで見通しがきかず景色も変わらない何百と言うダートコーナーを中心に、延々1日400キロも走り続けさせられるのだ。北海道の林道は道幅も広くて直線が長く一気に距離が稼げ、舗装路も気を抜ける楽な道が多く、最高の景色も楽しめての快適なツーリングラリーだが、東北はまるで修行である。
 長距離で疲れて不意にガレたダートで転倒しないように、後半ダレて来るに従い、わざと肘張って、外足加重でちゃんとリーンアウトしてフォームを崩さないコーナリングを心がける様、特に意識して走った。だから肘や腕が痛くなる、腰も痛い、目は最も疲れる。それでめちゃくちゃ肩が凝る。ジジイには相当応える。そりゃ還暦だもん。しかしその意識を心がけたおかげで無事帰って来られた。思えば根気がよく続いたもんだ。このラリーのおかげで精神的な面でライダーとして一段成長したと思う。これは実感した。これが一番の収穫だった。
 北海道より身近だし手軽そうだし、来年出てみようかな?なんて簡単に考えてるBOCのおじさん諸君。なめてかかると転倒、崖落ちして、即病院送りになるのでご注意を。先ずは北海道4DAYSをクリアしてからの方が無難です。なにしろ、ウチのチーム6名の内、ラリーのべテランが2名崖落ちリタイヤ&1名負傷となっているのだ。これでレポートを締めてもいいのだが、それじゃシャレにならんので、次にエピソードとか色々書いて行きます。飽きなければ最後までよろしくです。

 3日目レポートの前にうれしかったこと。

 これはもう1日目のSS1の話に尽きるのだが、コース詳細は他の人のレポートに任せよう。何はともあれ、SS1はめっちゃ満足した。タイヤが新品なのは1回限り。だから、昔やってた草レース並みに、腕が上がってアクセルを回せなくなるくらい頑張って攻めてみた。結果、上位陣はまだ様子見とは言え、あのシングル常連の原モータース原社長と同タイムで8分17秒、92台完走の中で12位のタイム。ラリー業界の老舗社長で、今回オフィシャルをやってた元ミサイルファクトリーの小川さんにも「なかなかやりますねえ!」ってほめられちゃった。前回の北海道で総合2位となった杉村さんて言う腹筋バキバキアスリートな方が7分53秒で5位のタイム。ボクとはその差24秒。北海道じゃ2分くらい離されてたから話にならないが24秒なら砂ボコリが見えるくらいの差。これはマジでうれしかった。
 北海道は、毎年同じ所でSSをやることが多く、常連さんたちはコースを覚えていて有利だが、東北は初開催であり、みんなが同条件だったって事もあるだろう。しかし、前回の北海道には出ていなかったが、今回のSS1で1位になった加地さんや2位の尾島さん(モンゴルラリーチャンピオン)は驚くべきことに、7分36秒と7分40秒ですと!!腹筋マン杉村さんよりさらに15秒くらい速い。何たる猛烈な速さ!あり得ん速さ!超能力者だ。参加人数は北海道の2倍近いが、レベルも相当上がっているようだった。で、有頂天となってたのも束の間、2日目の雨の夜のSS3では、中華フォグが全く役に立たず、暗闇に突入する恐怖を味わうことに。そこで大幅に時間をロスしてここでは24位。この辺の話は齋藤さんのレポートで。
 それで始まったのが3日目だ。ビバーク地となったのは南会津町のうさぎの森オートキャンプ場って言うところだった。昔の小学校校舎を再利用したような建物の体育館内での雑魚寝の朝、朝飯は小学校の給食の調理場みたいなところで食べた。地元スタッフの皆さんが用意してくれた何種類もの煮物、焼き魚、サラダ、トン汁など、今回のラリーは飯がうまいとの話を聞いていたが、大満足だった。腹いっぱい飯を食ってリエゾンスタートとなる。3日目の朝の段階で総合18位まで落ちていたが、トップのスタートから9分後のスタートなので、準備はあわただしかった。ブリーフィングの説明では、今日は給油ポイントが少なく、燃費が厳しそうだ。ボクの500EXCは20キロそこそこの燃費なので、せいぜい150キロが限界。これが 後半あんなことになるとは・・・・。

 東北3DAYSラリー、3日目レポート

 スタート後、20キロほどリエゾンを走って、すぐにSS4に突入となった。七ケ岳の山中の林道で、昨夜の雨のSS3の逆方向コースである。真後ろにはいつの間にか斎藤さんの350EXC-Fの美しい雄姿が。ボクのと同じスロバキアカラーの6DAYSだ。その差はなんとたったの1秒!追加ライト装備で準備万端の齋藤さんは夜間の雨でも滅法速く、夕べのSSで一気に30秒も詰められて、19位にジャンプアップしていた。ボクの前後30秒以内のタイム間には8台くらいがひしめき合っていた。いやいやしびれるなあ。ワンミスで簡単に順位が入れ替わる差だ。
 トップクラスがどんどんスタートして行く。空気を引き裂く排気音、路面を蹴り、ドカーンとロケットの様に飛び出して行く。相変わらず、鼻血が出そうなもの凄い勢いだ。テンションが上がる。脈拍も上がる。あーやばいやばい、このままじゃ崖落ちまっしぐらだ。と思い直し、テンション落としのお決まりの鼻歌を口ずさんでみる。「ねーどーしてー♪すごくーすごく好きなーことー♪♪ love love love♪」ドリカムの歌を口ずさみながらさあスタート!
 夕べ全然見えなかった路面が良く見える。ここは、DOAとかBOCツーリングでも見覚えの無い林道だ。多分、特別に立ち入りを許可してもらったコースだろう。雄大な景色の中に高速コースが続く。だが、北海道と違い、ガレてるところが多い。ここでレッドムーズが問題となる。固くて思うようにグリップしてくれないのだ。空気圧1.5くらいって感じだろうか。そしてフルブレーキ!入口でフロントタイヤをこじると即転倒だ。セルフステアで我慢して、向きが変わったらワイドオープン。
 砂利ではじかれてテールがドバーと出るが、お構いなしに開けていく。ギャップを超える。ドン!と来るが姿勢は乱れない。おー!さすがに500のレーサーだ、パワフルで軽くて足が良いぞ!690ENDUROならドカンと来てサスが底付きし、振られてアクセルを開けて行けないところも躊躇することなくどんどん開けて行ける。そのまま長い直線の登りへ。ところが、2速全開から3速全開にしたところで、急にトラクションが抜けて失速。負荷が最大にかかったところで、3日目まで無交換で山がすり減ったリアタイヤがアダとなった様だ。1日目のSSの様にスピードが乗らず、4速になかなか入らない。うーん、駄目かあ。
 東北はガレ場が多いので、リム打ちパンクが怖くムースタイヤの無交換作戦を狙ったが、最後でタイヤが息尽きたようだ。スピードが思うように乗らないので集中力が途切れそうになるが、我慢の走りを続ける。こういう時は先が長く感じる。「まだかい!どこまで続くねん!!」とキレそうになったところでやっとCP100のフラッグ。ようやく長いSSが終わった。
 しばらくすると、斎藤さんも続けてゴール。凄く乗れてて、気持ちが良かったそうだ。夕べ、ボクが晩酌で酔っぱらってる時に外で頑張ってリアタイヤを交換をしていたもんなあ。偉いよなあ。この辺がボクみたいなタイヤ交換大嫌いな、なんちゃってラリーストとの違いだ。順位も気になるが、表彰式の発表まではわからないので、そのまま続けて長い長いリエゾン区間へ。もうこの先SSは無いので、斎藤さんの提案で、途中のコンビニで近藤さんと水出さんを待つことにした。の走りを続ける。こういう時は先が長く感じる。「まだかい!どこまで続くねん!!」とキレそうになったところでやっとCP100のフラッグ。ようやく長いSSが終わった。
 朝のブリーフィングでコースディレクターの佐藤さんがにやにやしながら「〇〇キロ地点は要注意ね。みんなで助け合って下さいね」って小声でモゴモゴ言っていたからだ。多分、ゲロ坂かヌタチュルの罠があるのだろう。後から来る水出さんは1090ADVなので苦労するのは必至だし、斎藤さんと相談して、ヘルプをしようと言う事にした。

  

 で、水出さん、近藤さん達と合流し、問題の地点へ到着。マップに「入口、わかりにくい」って書いていたが、入口付近にスタッフが立っていて指さす方向を見ると、枝と草に隠れた獣道みたいのがある。ここは登山口か?ってほどのシングルの激坂が待ち受けていた。とにかく止まると再発進不可能なので、軽量級の二人で先に上がって偵察に行く。
 見たところ、GS1200ADVもなんとか上がって来ているので大丈夫かなと思いきや、途中から魔の激坂180度ターンの連続となった。おまけに地面はフカフカの泥交じりのサンド。一台転けると通せんぼとなるので、見る見る内にアドベンチャーホイホイ状態に突入となった。そこを超えると恐怖の巨大なV字の溝超え&激坂。失敗して転けてハマると脱出不可能。下までバイクを引きずりおろしての再挑戦となる。
 コースディレクターの佐藤さんのほくそ笑む顔が浮かぶ。噂では下見で佐藤さん本人もGS1200ADVで上がれなかったと聞く。みんなで起こしたり押したりで登って行くが、水出さんは、昨日の転倒で肩を痛めているにも関わらず、苦労しながらもなんとか自力で通過。大したものだ。近藤さんもヒイヒイ言いながら重い690ENDURO-Rで登り切った。後の表彰式で聞いた話だが、原モータース社長の原さんも、「SSERラリーで初めて降りてマシンを押しましたよ。もう勘弁して欲しいです!」と言っていた。これがDOAのアタックコースなら多分使用中止になっているだろう。ここでしばらく大型バイクのズッ転けぶりを見たり、ヘルプを楽しんでいたが、知らないうちに大幅なタイムロスをしていたことに後で気づく。斎藤さんは残りタイムがヤバい事にいち早く気づき、先を急いで行ったらしい。ここからは近藤さんと2台でランデブー。
 時刻は14時過ぎ。ラリーも終盤に差し掛かったところで、まだ昼飯にありつけていない事に気づく。蕎麦屋もコンビニも全然ないのだ。おまけにGSもない。最後に給油してからもう140キロは走っている。腹は減ったしガソリンは少ないしで近藤さんと二人イライラしながら走る。そして最後の林道に入る前に給油しようと予定していたGSに着くと、なんとハイオクは無く、レギュラーだけとの事。さすがにレーサーにレギュラーはきついのでパス。もしもの時の為に予備の携行缶に1リットル持ってるし、最終のGSまでは何とか持つから大丈夫と言う事で腹ごしらえを優先する事に。でもなかなか店は見つからない。近藤さんは、非常食を食べようと提案するが、ボクの非常食はアーモンド豆のみ。カスカスの豆なんか嫌だしなあと思っていたら、遠くの方になんやら青い看板が見えた。ラリーメーターを逆走にセットし、あれは絶対ローソンだとコースを離れて近づくと、やっぱり予想通りだった。「いや、さすがですねえ。」近藤さんにほめられながら、ラーメンをすする。やっとの事で昼飯にありつけて上機嫌な二人だった。
 腹もふくれてほっとして時計を見ると、残り時間が1時間程となっていた。距離はあと40キロはある。残りの林道含め、平均40キロで走って1時間。ヤバイ!失格になっちゃう!ぎりぎりじゃん! って事で、そこからはかなり飛ばし気味で最後の林道に突入する事に。近藤さんはちょっと離れたようだが、「自分さえ間に合えばいいんだ。せっかくここまで頑張ったのに失格になってたまるもんか!近藤さんごめんよ!」ってことで飛ばす。
 ところが、レーサーってエンジンを回すと燃費が極端に悪くなるらしい。途中の山中でガス欠となった。とんだ計算違いだ。近藤さんを見捨てたバチが当たったか。「まあ落ち着け、慌てない慌てない。携行缶があるんだ。1リットルあれば最後のGSまでは余裕だ。注ぐとき、慌ててこぼしちゃうと大変だし。」とか、ぶつぶつ言いながら補給していると近藤さんが追い付いて来た。そこからまた2台で急ぎのランデブー。
 やっと最後のGSに着くと、なんとなんと!閉店しているではないか!EXCのポリタンクは残りガソリンの残量が透けて見えるが、残りは800CCくらいか。距離は残りあと20キロはある。回転を抑えて燃費運転をすれば何とか持つかな?でも残り約30分。急がないと間に合わないではないか。で、燃費運転をするべきか、急ぐべきかの究極の選択を強いられることとなった。
 登り坂道では回転を抑えノロノロ運転。下りではクラッチを握りアイドリングで走る。速く走りたい、でも走れない。ストレスで胃が痛む。そんな緊張感の後、やっと残り500メートル地点の信号交差点に到着。あー、これで安心かあ。ところが信号が青に変わり、発信しようとしたところで、「パスッ!」と言って遂にエンストしてしまった。「キュルキュルキュルルン!」何度セルを回せど反応なし。
 「残り500メートルだよ!押せば間に合うから!頑張れー!」って近藤さんが叫ぶ。バイクのメーターの時計ではマックスタイムの16時まで残り3分。「駄目だ!間に合わないよう!」って弱音を吐くボク。「行ける、行けるって、間に合うから頑張れー!」って叫ぶ近藤さん。
 ヒイヒイ言いながら押し歩くと、途中で少し下り坂に差し掛かった。重いし、バイクに座りたい。でも惰性で動いているのに止まって座り直すのはもったいないと、自転車乗りをしようとステップに足をかけた瞬間、ヒイヒイゼイゼイ体力の限界で足を踏み外し、バランスを崩してバイクごと道路左の歩道に乗り上げ、転倒!ボクはそのまま左に転がり、側溝に頭から転落してしまい、おまけにバイクが下半身に乗っかって来る状態となった。「まーたくーっ!なにやってるんだよー!!」って駆け寄る近藤さん。オイラの東北ラリーは、苦労の挙句の果てに、ガス欠、自転車乗り失敗、溝に転落、時間切れリタイヤとなりました!と完全にあきらめたのだった。ヒイヒイヒイ!
 「大丈夫かあ!?」ってバイクを起こしてくれる近藤さん。ポカーンと放心状態のボク。息が上がってものが言えない。「ヒイヒイヒイ!ああ、終わったよ。近藤さん、いいから先に行ってよ。フウフウフウ!」って言おうとした時、セルボタンをなんとなく押してみると、なんと「バルーン!!!」セル一発でエンジンがかかっちゃったのだ!!転倒でバイクが裏向いたおかげで底に残っていたわずかなガソリンがエンジンに回ってくれたようだ。やったー!・・・・・と言うことでなんとかぎりぎりゴールできました。近藤さんがいなかったら、ゴール寸前の歩道脇にへたばっていたでしょう。近藤さんのおかげです。本当にありがとうございます!
 後から気づいたが、トップから9分後のスタートだったので、16時9分まではオンタイムだったのだ。こうしてボクの東北ラリーの3日目は終わった。

  

 その後17時から開かれた表彰式では、何とか3日目朝の順位を守り、SS合計タイム38分14秒、総合18位で入賞した事がわかった。目標の10位台達成だ。しかしなんと、ボクのSS合計タイムと同タイムに3人もいる事に!その内の一人は齋藤さんで、最後のSS4でボクより1秒速く走り、同タイムに追いついたらしい。同タイムでも総合順位は1日目のタイム順で決めるらしく、1日目SSタイムが6位と、あの割れ腹筋の杉村さんと1秒違いで激速だった川口さんて方が17位、斎藤さんは19位だった。ちなみに近藤さんはオフ歴はまだ短いのに47分51秒の総合60位で見事完走。水出さんは、重い1090ADVで奮闘して途中まで50位台だったが、惜しくも最後のSS4 で転倒したらしく、1時間10分38秒で69位完走。チームKTM厚木&BOC から一緒に出場した斎田さんと早坂さんはいずれも崖落ちでスイーパーの援助を受けた為、無念の失格リタイヤだった。
 この東北3DAYS ラリー、テントは必要なし、屋根つきの宿舎で泊まれて、飯も酒もうまくて、大人のラリーを目指します。との前口上に惹かれて参加した人が多かったと思うが、エントリー110台、初日SS完走者92台、最終完走者88台となった事で、そのハードルの高さを物語っていると思う。SSで崖落ちするならともかく、リエゾンでの崖落ちや転倒負傷者が多数出たのがその証拠となる。同じ景色の曲がりくねった林道を延々長時間走っていると、退屈さと疲れのあまり、ちょっと楽した運転をしてやろうとサボった瞬間、足元を掬われて転倒、崖落ちするのである。ボク自身、福島県だけだと走り足りないのでは、となめてかかっていたが、正直こんなにきついとは思わなかった。7日間走るTBI経験者達は楽しかったと言っていたが、あの人たちは修験道者の変態(笑)の集まりだしあてにならない。少なくともボクは来年も走りたいとは今は言えないな。さあ、来年は誰が餌食になるのかなあ。完