KTM NZ Rally 2016の参戦レポート


 お時間を頂いてしまいましたが、KTM NZ Rally 2016の参戦レポートです。

そもそもこのラリーを知ったのは、あのChris Birchが日本でやってくれたレッス
ンの時でして「今年初めてNZでもラリーをするんだ」と言っていて、しかもコー
スセッターが彼自身。これは行くしかないでしょう!。
 行くとなってまず悩むのは、自分のバイクを持ち込むかレンタルするか。レンタ
ルバイクもあった訳ですが、残念ながらRは売り切れ。結果として、バイク乗りな
ら誰でも一度は憧れる「自分のバイクで世界ツーリング」と相成りました。
 カルネの申請はJAFが非常に親身にサポートしてくれたので、電話とメールだけ
で、窓口に行くことも無く完了。一番の問題は船便手配。NZは日本と同じ左側通
行なので日本車が結構輸出されています。その輸出業者がいるはずだったのです
が、何やら理由あって路線廃止続出。結果的にはほぼ唯一見つかったアマカップ
という会社が非常に丁寧に対応してくれたので何とかなりました。 準備は整い、
大黒埠頭にバイクを預けて、「さて、明日バイクは先に出港」となった、その前日に船会社から電話があり「バイクがロックされたので解除方法教えてください」と。はて、ロックの意味が分からない。いわく、「保管場所から船積み地点までエンジンかけて運転して、ブレーキかけて停止したら、その後ブレーキがロックして全く動かない」とのこと。一回も成ったことがない症状なので解決方法不明。現地でフルードを少し抜いたら解除されたということで、直す時間もないのでそのまま船積みです。前途多難。船便は1ヶ月ほどかかるので、その間に現地の船おろし業者に連絡。「ブレーキロックしてる車両になってるかも」っていったら、気を利かして船おろし港であるオークランド市のKTMディーラーにレッカーして直すように指示しておくとのこと。今回のラッキーの1つが、この親切な船おろし業者と出会ったことでしょうね。
 11月27日の夜に羽田からシドニー経由でオークランドに飛びます。ラリー自体は11月30日のRegistrationから12月5日の夜ディナーまでですが、早めに入ってバイクを受け取らねばなりません。そして羽田で笑撃の事実が。「荷物超過重量で、4万円頂きます」。しまった、、、できればバイクに荷物くくりつけたかったのですが、船業者から「荷物の責任取れないので、最低限にしてください」と言われていたのです。なので、トップケースにヘルメットとニーブレースだけしかバイクと一緒に運べておらず。ブーツだテントだ調理器具だ、、、仕事様のPCも。片道4万円ってことは、往復で8万円やん、、、せっかくマイレージで安くあげた旅だったのに。


  

 オークランド到着して、カルネを回収しないといけないので、空港から直接船おろし業者担当の家に訪問。Paulさん、いい奴でした。翌日、KTM ディーラーにバイク取りに行ったら、とりあえず直っていたのですが、車検受けに行く途中ですごいスポンジーなタッチなことに気がつく。戻ってもう一回フルード交換してもらいました。二回分工賃取られたのはちょっとなあ。
 このお店の店員さんもラリーに参加するということで、「集合場所まで一緒に行くか?」と言ってもらったので、11月30日当日朝にお店に集合。レンタルバイク屋社長のおっちゃんと3名で出発地点であるPapamoa Beachへ。
 チェックインしていると、「君が日本から来たライダーか?」って声を掛けてくれた人が。JohanとKrisというコンビでして、その後も最後まで仲良く一緒に走ってくれました。ラリーといってもコマ図を使ったえげつないものではないので、自分独りで走れはしますが、やはり旅は道連れ。ローカルライダーをKiwi riderといいますが、結局彼ら含め私と5名で一緒に走ってくれるKiwi riderに恵まれたおかげで、楽しい旅となりました。




 12月1日初日は、PapamoaからGisborneへ。肩慣らしといったところで、えげつない道は無く、イメージは、北海道の牧場の道を、道幅2倍にして、距離30倍くらいにした感じでしょうか。あれだけ先行者の砂埃かぶって走ったのは初めてです。その後ずっと砂埃くらい続けながら走ることになるわけですが。NZのオフロード、特に牧場の道はかまぼこ型になっていて、両端が低くなっている感じでした。そして、おおよそカーブの出口は洗濯板っぽく波打っている。右カーブはいいのですが、左カーブは逆バンクっぽくなるのでやや注意が必要。
 出発は朝8時に三々五々準備が出来たライダーから、事前に携帯かガーミンなどに地図をダウンロードしておいて、それに従って走行します。紙の地図は与えられませんが、B5サイズのざっくり用紙をもらい、そこには給油と昼食のおおよその場所が書いてあります。私は結局Kiwi riderについていったのでまったくナビはしませんでした。宿は事前配付されるパンフレットにオススメ宿が書いてあるので自分で予約する。晩御飯だけは参加費に含まれています。やりたいひとはキャンプでもいいのですが、流石にラリー5日あるのにキャンプですごすのは「どこのSSERやねん」になるので、私はちゃんと宿に泊まりました。


  

 二日目はBisborneからTaupoへ。非常にきれいな湖の辺りです。そこへ至るオフロードも、快適なグラベルロード中心。構成として「誰でもいける通常ルート」と「ハードなチャレンジルート」に分かれており、基本的にはオレンジの矢印をたどれば通常ルートなのですが、たまに分岐で緑の矢印でチャレンジルートが現れます。チャレンジしたい人はすればよし、そうでないひとは通常ルートを走ります。海外ラリーのビデオを見ると、チャレンジは「マジ、チャレンジやん」っていう、渡河作戦とか、泥沼とかばっかり。なので私は基本的の通常ルートを走ります。それで十分楽しいのです。青い空、白い雲、人口の10倍いる羊の群れ。「ああ、バイクっていいなあ。バイク乗りで良かったなあ」と、バイクに乗れる幸せを噛み締めながら二日目も無事終了です。
 三日目はTaupoを出発してTaupoへ戻るループです。この旅で初めて、日本でも見るような1.5車線幅の林道に突入です。DOAなどでも設定されるようなルートなのでたまにヤバイところもありますが概ね大丈夫。途中から、3車線くらいあるような快適林道になったので、鼻歌まじりに飛ばします。あまりに快適だったので、次に出てきたチャレンジコースへの分岐で、「この程度やったらイケるやろう」と思い、初のチャレンジコースへ。
 これが大失敗。突入した、まさに第一ターンの泥沼にハマり転倒。マーシャルに押してもらって脱出して、次の泥沼でスタック。なんとか超えるも次の倒木を超えられず、100メートルも進まず、「アカン、これ、ゲロやん。ゲロすぎるやん!」ってなりました。このまま進んで、途中で行くも退くもできなくなるとヤバイので、速攻白旗上げました。「ごめんなさい、戻ります。チャレンジコース、諦めます」 まだマーシャルがいる入り口付近だったので、巨人マーシャルに方向転換してもらい、マーシャルカー先導で通常ルートに戻りました。怪我したりバイク壊したら、日本に帰れなくなりますからね。勇気ある撤退です。別れ際に「これでも読んで勉強しろ」って、オフロード雑誌もらまいした。嫌味なのか、親切なのか・・・。


  

 四日目はTaupoからTaumaranuiへ。ここまで、初日の最後に雨に降られただけで、その後ずっと晴天です。雨よりは良いのですが、ホコリが凄い。牧場オフロードは、普通に100km/hで巡航するので、前方車両と最低でも100mくらい開けて走ります。私はエアクリーナーを湿式の社外品に変えているのですが、帰国して掃除したらえらいことになってました。因みにこの国、本当に制限速度がオフロードでも100km/hとかです。うらやましすぎますなあ。
 最終日五日目はTaumaranuiからNew Playmouthへ。朝露に濡れた林道を今日もかっ飛ばします。途中で現れたチャレンジコースへの分岐は、牧場内部へ至る道。天気も良い、路面状況も良い、一緒に走っていたKiwi riderも2名が行くと言っている。「一回もチャレンジコース行かずに、日本に帰れない」。ということで、ここで男気見せてチャレンジしてきました。まさに巨大牧場の牧草地の中、アップダウンの激しい走行路を走り抜けます。途中で、一回下がって助走をつけないと登れないような坂道が何箇所かあり。4回転倒し、右ハンドガードを折りましたがなんとか脱出しました。いやあ、楽しかったなあ。
 これで土産話もできるなあ。一度、牧場内でロストコースして何気なく前にあった白い電線に触ったら、「バチっ!」って来ました。電気柵だったのですね。そういうのはちゃんと注意してもらわんと、、、痛いやん、、、痛いで済んで良かったけど。

  

 今回のルートのタイトルはCoast to Coastでして、出発地のPapamoaは東海岸、目的地のNew Playmouthは西海岸。ゴールが近づくとまばゆいばかりの輝く水平線が。ゴール後、一緒に走ったKiwi riderと"We made it!"を連発し喜びました。表彰式では、「一番遠くから来たで賞」ということでMonkey Butt賞を頂きました。猿のケツは赤い。ケツが赤くなるほど遠くの距離を、バイクに乗ってやってきた。という意味のようです。表彰式ではクリスと挨拶し、無事怪我もなくラリーを終えることができました。
 翌日は三々五々帰路につきます。私は残り3泊4日をキャンプして帰るつもりでしたが、とくにあてもなく。走りながらネットでキャンプ場を探して、そこへ向かうという勝手きままなツーリングです。キャンプ1日目は湖畔で。キャンプ2日目は森の中でキャンプしました。NZの蚊は大したことなかったのですが、蚊ではない何か2mmくらいの超小型カナブンみたいなのに噛まれること多数。痒い痒い。ブーツの中にもいたようで、スネのあたり沢山噛まれました。
 そんな感じで、ラリーは終了。Kiwi riderは皆いい人でした。ラリーって言ってますが、ちゃんとオーガナイズされて「オフロード初心者でも、それなりに上級者でも、両方楽しめるルートにします」って言っていた、クリスの言葉は正しかったです。当たり前の感想ですが、また行きたいですねえ。次回はオーストラリアの奴でもいいかもですが、来年のNZは南島だそうです。今回の北島より、南島のほうがもっと「オフロードパラダイス」らしいので、次も行きたいですねえ。というより、NZへの移住を本当に検討する勢いの、辻口でした。