TBI-2 NIGHT IN THE DARK  

 ゼッケン 12 宮田 一孝

 1、 始まり

 このイベントが発表されてから気にはなっていた。しかし、二日間のためにマシンを四国へ運ぶにはコストが高かった。
菅原社長(パリダカールラリーのトラック部門の現役チャンピオン)は出場する話は聞いていたので「どうやって行くんですか?」と聞いてみると「一人でライトエーストラックに積んで運転していく予定」とのこと。「では休みとれたら一緒に行っていいですか?これから申請あげますから」 「いいですよ、一緒に行きましょう」となり時間差夏休みとして休みを確保、エントリーをした。

 2、 準備

 ゼッケンは「12」だった。今回はTBI本戦の時にマシンを作ってあったので準備は楽だった。Fパッド、Fローター、Rパッド、RキャリパーシールキットにFタイヤくらい、Rタイヤは8分山、考えたすえそのまま行くことにした。マップケースは配線を直した。
 
 3、 移動

 朝、社長の自宅へ私のトランポで行く。20分ほど遅れた。(社長、ごめんなさい)マシンを積みこみ、社長の会社にちょっとよって小細工、そして移動開始。3回交代、940km、約12時間走って会場入りした。社長はマシンのこと、ラリーのこと、ヨーロッパのこと、そのほか多岐にわたりいろんな話をしてくれた。すべて自分で体験し、考え、感じた事なので重みが全然違って聞こえた。考え方や視点がとっても深い人でした。会場に着いて社長いわく、「ここまで940kmで明日800km走るんでしょ?やだねぇ」ごもっともです。
 夜のうちにセットアップ、今回は「ICO」を忘れた。部屋でマップケースのはんだ付けをするときにもってって、ケースだけ直して忘れたらしい。気がついたのは日本平S.A。普段は車から下ろさないので積んであるものと信じていた。まあ、5,6,7回はノーマルメーターで走ってたし、メーター無しで(ケーブル切れ)で2200km走りきった時もあったんで大丈夫でしょう。           夜はSSER代表の山田さんをはじめスタッフのみなさんと同じケビン(バンガローのちょっといい建物)で宴会をしてた。

 4、 車検 チェーンガイドのゆるみを指摘されただけでパスした。

 5、 スタート&前半


 今回の設定は前半502.03km、後半318.61kmの2部構成。 「前半を午前6:00まで、後半を15:00までに抜けないと完走にならない」と当日配布の資料にあった。12:00より一分置きにスタート。すぐに0.71でダートイン、なんか乗れない。あたふた度が激しい。でも3週間前の伊豆でもここまでひどくはなかったはず・・・・・。40km付近で給油、22L。それで林道での安定度は飛躍的にアップした。重いタンクでバランスとってたのね、サスもその設定だし。今回の設定はすごい!TBIの比ではない。100kmまででも伊豆フルコースの倍近く感じる。こんなに連続でダートのコースを組める土地柄にも関心する。
 140kmまではアスファルト、そこからダート、アスファルト、ダートとTBIより濃い設定が続く。218kmでパスチェック。到着時刻は約18:00。10台弱止まっている。オフィシャルの指示があった。「全体が長くなりすぎなので先頭は時間調整をします。出発予定は18:30です」せっかく明るいうちに少しでも進もうとがんばってきたのに日暮れの30分停止となった。私より前の人達はもっと待ったし、引き離した後続にも追いつかれた。18:30で218km、まだ全体の1/4しか走ってない、着々と日暮れは近づく。社長はゼッケン3。ここにはいないしチェックも受けていない。どこにいたのか。(あとで聞いたらクローズ19:00直前に通過したそうな)261.92kmで今回初のミスコース。林道のなかの左分岐を見落とした。 ノーマルメーターでほぼ合っていたのに。ここから足し算走行(今の距離が34.9だから4.23を足すと・・・と計算して分岐を探す)にチェンジ。

 6、 ナイトラン

 日は完全に落ちた。279.71よりSSイン。林道区間で3.5km。今回はメインライト85W、サブが55W、サブサブが25Wの構成。全部つかうと電力不足、途中でサブサブの配線抜いたのでちょいと減速した。(TBIではメインは60Wだったので電気は足りていた。)結果はほぼ真ん中、そんなもんでしょう。山を下り国道に出た。見覚えのある宇和島の道。ほぼ100km舗装路の移動。峠を2つ超え、山のなかの3けた国道。交通量はほぼ無い。距離は400kmを越えた。
 ぼちぼち眠気が襲ってきた。423.25で橋を渡るとあるがあれ?ないな、と行きすぎる。前後で走っていたTS125さんと先に行ったり戻ったり。そのあと7kmほどでダートに入る。「ややガレ」から「中ガレ」ときどき「傾斜」。もう疲れと眠気でペース上がらず。たぬきさん、うさぎさん、鹿さんに遭遇。TBIでは通る台数が多すぎてこんなに動物には会えない。442.85よりSSイン。ただの林道の分岐地点。時刻は25:00すぎ。クローズは25:00のはずだったが今回「ICO」が無いため時計なしで走っていて時間感覚は無かった。ここで通過チェックとオフィシャルによる給油。キャンプ地まで60km分足りない人対象。私は余裕あるし早く帰りたいので先にSSインさせてもらう。林道区間で13kmの設定。眠気はちょっと回復。こんなんじゃSSのペースじゃないよな〜、と色気をだすとやっぱりスリップダウン、リカバリー中に一台抜かれた。こけてリカバリーしてた分ロスしたがリズム自体は狂わなかった。(でも実際遅かったが・・・ 34台中25位)SSのゴールCP、オンタイムでSSインしたのはたった5人と聞く。私は25:08で6番目でSSイン、出口では7番目。PC1のコントロールがなければ間に合ったろうに。全体の進行も遅れているみたい。
 後日 リザルトをみると34番目まで出ている。何時まで計測したのだろう。SSゴール後、ビバーク地まで約50km、眠い眠い移動、2時間近くかかって到着。今年のTBIの山場だった有料道路わきのコースの駐車場。時刻は2:30すぎだった。到着は10番目。「うどん」と「じゃこ天」の配給。すぐに3:00をまわった。ウレタンマットだけで仮眠を取る。

 7、 2日目

 2時間ほど寝たような寝てないような・・・・。朝帰りの組が戻ってきて気がついた。寝ずに走ってきた人はかなりいたみたい。ブリーフィングにてスタートを当初の予定より1時間遅らせ7:00に変更。閉会式が16:00からなので、それまでには絶対帰ることと説明があった。このSSはモトクロスコース、おおまかに2部構成になっていて、上部分ではジャンプ台はあるがほぼ平ら。下部分ではダウンヒル&ヒルクライム。ゼッケン順にスタートが始まった。そして私もコースイン。最初は上部分、いきなりアプローチのない斜めの角度で溝越え、溝の底にまんまとはまった。あとから見れば溝に入る前にバイクを降りて下げればアプローチは取れたがもう遅い。押しても引いても脱出できず。時間と体力がどんどん減っていく。となりではまっている人を助け、こっちもお願い作戦でようやく脱出。でも20番後ろくらいまできている。
 またしょうもない場所で転倒した。次はジャンプ台、しかしアプローチは台と平行に入り、側面をあがって180度近く向きをかえ下り斜面を下りるという設定。側面は上がれたが勢いがあまり反対側側面に近寄ってしまった。下りて向きを変えればいいのに、後続車がきて取りまわすスペースも無くなってしまって進もうとしてバランスを崩し、上りと逆の側面に転落。数個の大岩の中にはまった。入り口の溝部分での消耗もあり、起こそうとするが力が出ない。スタッフが近寄ってきては声をかけてくれるが返事もできない。最後のライダーが回っていった。また起こそうとするがだめ、完全放電状態、ヘルメットを脱いで荒い息を続けるだけの状態だった。
 時間だけがすぎていく、そしてコースロープの撤収が始まった。「みやぴー、風あたりのいい所で休んどき」とスタッフがバイクを起こしてくれた。ヘッドライトは岩に直撃で割れていてシートレールは曲がっていた。この状態ではこの先ダウンヒル、ヒルクライムに行ってもまた転倒してさらに時間と体力を消耗するだけと判断してペナルティ覚悟でショートカットしてゴールラインを超えた。(ゴールに入ったらここも撤収が始まった)このSSで唯一のショートカットしたエントラントという事実が重く感じた。
 SSのゴールライン(コマ図で0.00)で推定1.5〜2時間遅れ、オンタイムでまわるにはアベレージ55kmぐらいになる。ゴールのスタッフも自分に状態を見て「少し休んでいき」と声をかけてくれた。少し休んでから「走りながら体を冷やします」と走りはじめた。途中でキャメルバッグに水分を補給しただけで走り続けた。林道区間のSSはキャンセル(多分一般車が入っている時間なので)、その林道でオフィシャルカー2台を抜かさせてもらう。これはコースの最終を走っている車のあとに走っていたという事。 ゆうべSSだった林道をこえ、さらに林道をつなぎ78km地点でパスチェック。12:45、クローズ15分前だった。のこり240km、16:00でマキシマム、でも進む。
 いつものTBIでは通過時間で先頭20番以内にいるので、今回最終組の気持ちがわかった。体力と時間と、普段より消耗が激しい。今回はまだ明るいが闇になればさらに・・。84kmの小さいスタンドで組長がパンク修理をしていた。ちょびっと手伝う。例年TBIで使うルートをつなぎ山を2つこえた。ガソリンを入れる予定であった148kmのスタンドが閉まっていた(本日は日曜日)。その先のスタンドも休みダートを一本こえ190kmくらいで片側リザーブに入る(私のタンクは左右にコック有り)。朝のSSでかなりこぼしたみたいで予定より70kmほど早い、予定通りに給油できなかったのも痛い。210kmで確認するとルートは山に向かっていく。向こうに抜けるまで30kmちょい。ガソリンは山越えできるか微妙、越えた地点にスタンドがある保証もないので最後の集落で農耕車や車の多い民家で分けてもらうことにした。
 時間かかるだろうなぁ、と思ったら案の定おじちゃん、おばちゃん、おじいちゃんであーでもないこーでもない(ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ)としゃべりながら車からガソリン抜こうとしてホースが届かず失敗。「にいちゃん、あのよぅ、混合でよければあるけど?」 「それはちょっと・・」「だよなぁ」 と会話してるとガレージに「H13 ガソリン」と書かれた4L缶がでてきた。色はOK、においをかぐと大丈夫そう、2Lちょい入っていた。それを給油して500円渡してお礼を言って出発した。ここで30分くらい停止してた気がする。林道の中、227km地点で通過チェック、当然タイムオーバー、時刻は15:20、のこり約90km。でもまだ通過していない人が5人いる。
 山を下りたところでスタンド発見、コマ図で10km先にスタンドありとなっているが不安なのでここで給油。結果正解、その先は閉まっていた。3km弱のダートはあったがほぼ舗装路の移動。  看板に久万の文字がでてきた。TBIの最終日はこれからまた山に上って林道こえてゴールしたよな、と思いつつ今回はすなおに国道移動でゴールに入った。時刻は17:30すぎだった。スタッフが「閉会式始まって1時間半だから間に合うかもよ」と言ってくれた。

 8、 閉会式か片付けか・・・・

 ゴールで指示されてバイクを駐車場まで入れた。気が重かった。いつもであれば先頭きって閉会式の会場入りをしているはずなのに。まず第一に、自分のせいでゴールが遅かったのに片付けも終わらせていないで閉会式にでるのは一緒に行動してくれている社長に申し訳ないという気持ちが一番だった。フェリーの手配も社長に一任してあるし時間も確認とっていなかった。せめて2台積みこんでからにしようと思った。第二に、朝のSSをショートカットしたのは自分だけ、みんなに合わす顔ないよなぁ、という気持ちも大きかった。片付けと着替えを始めたが疲れ(体も心も)のため進まない。6時くらいに移動できる体制まで終わらせた。本部にビバーク地用バッグを取りに行くとみんなが歩いてきた。「閉会式終わったよ、今回ペナルティの人は完走にならないんだってさ」と始めてそんな事を聞いてびっくりした。
 集計が間に合わないので今朝のSSで暫定で順位をつけたそうだ。昨日は通過時刻に対してあれだけ遅くても計測したのに今日はペナルティ一回で失格?SS後のリエゾンでも私よりあとの人が完走扱いになっている。(当日の集計には入っていないが)SSショートカット(1h)、コースロープ接触(回数不明)、パスチェック不通過一回(1h)2日目マキシマムタイムオーバー(本来失格)で、これだけあるけど・・・・・。バッグを回収して山田さんを始め関係者の方々に挨拶。「社長、みやぴーずっと探してたよ」と言われ急いで駐車場へ向かうと社長が車で下りてきた。そして会場をあとにした。

 9、 帰路

 車で移動中、社長は「みやぴーはてっきり一番で会場に戻ってきていると思っていたのに車は出発のときのまんまだし、おかしいなぁ」と思っていてくれたそうだ。閉会式は全体の進行で一時間遅らせ、山田さんが「まだ戻ってきていない人もいるのでもう少し、みやぴーがくるまで待ちましょうか」とさらに始めるの遅らせてくれたそうだ。これを聞いて私は申し訳ない事をしたな、と思った。SSのショートカットのことなど全然話題にでなかったそうで、ただ苦労してたみたいだ、程度だったそうだ。本当の式の始まりのちょいあとに私はゴールしたと思う。ただ、私の優先順位は閉会式よりまず片付け!だった訳で片付けが終わっていたから結果20:30に港に着いてフェリーにぎりぎり間に合った。でも知らなかったとはいえ結果山田さんの配慮に答えられなかった訳で・・・・・・。自分とった行動が正しかったのか、どうすれば良かったのか今だに判断できていない。
 フェリーに乗り込み、私はやっと食べ物にありついた。変な表現ではなく本当にそんな気持ちだった。(ずっと走っていたし、閉会式のバーベキューは食べていないし・・・)食事が終わって、社長はお休み、私は風呂へ。SSでダイネーゼから汗が落ちるくらい汗かいていたのでべたべただった。ここも23:00終了で10分前。夜はぐっすり寝た。おかげで神戸で朝5:00だというのに頭すっきり!。お互いあいかわらずしゃべっていた。こんなに貴重な話をひとりで聞くにはもったいない感じ。
 食事2回と給油1回停車だけで14:30恵比寿の会社到着。バイクを2台降ろし、私はシートレール修正を始めた。メカの鈴木さんがクラックを発見!「ここはねぇ、ライダーの体重だけでも割れちゃうんだよねぇ」と教えてくれた。「ふるいひびも新しいひびもあるねぇ」と指摘され、その場で溶接してもらった。「修理代金はいくらでしょう?」と聞くと 「う〜、そっちで決めて」と判断に迷う答えが。そんな・・・と思いつつ「じゃぁ、これだけ!」とお互い納得の料金に確定。

 10、リザルト到着

 後日正式なリザルトが届いた。パスチェック通過時刻、マキシマムタイムは全員ノーカウントになっていた。ただパスチェックの場所を通らなかった人には1時間ついていた。私は朝のSSが不通過扱いになっていて、リザルトの脚注で「SSを一回でも不通過の場合はリタイアとなります。なお各SSにはペナルティは含まれません」となっていた。私の場合、SSのスタートチェックもゴールチェックも計測はされている訳で不通過にはならないと思うのだが。正式なリザルトが確定して抗議文を提出する期限も過ぎているのでどうすることもできない。でも事を荒げるつもりもないし、今度会ったときにさりげなく聞いてみようかと思う。

 11、まとめ

 今回のラリーは考えることが多かった。完走扱いにならなかった理由も本来SSを走り切れなかった自分に第一原因がある訳でそれに対してどうのこうのと言うのも筋違いかもしれない。ただ、ごく一部を除いて全コース820km走ったその事実は変わらない。自分の問題点もはっきりでてきた。車体も溶接後に乗ってみて、コントロールしやすさに驚いた。本来はこう動くんだと分かった。問題点がわかれば対策も立てられる。これから先に有効につなげようと思う。
 *この文章を読んでいただきありがとうございます。ただ、個人的な部分が多くなってしまいました。ラリーの様子を知りたかった人には物足りないかもしれません。出場したことに後悔はないし、また来年行きたいと思います。