北海道4daysラリー 2017 in むささび淳ちゃんレポート

準備編

 今回のマシンはヤマハWR250Rを選んだ。
 2016年、初めて北海道4DAYSに参加し、マシンはKTM990ADVだった。とても快
適にリエゾンも走行でき、いい思い出となった。そんななかで、250ccで参加され
ていた方々の様子がとても楽しそうに見えた。また、その大会での成績は総合35
位だったことから、少し本気でSSを走ってみたい、そして30位以内を目指してみ
たいと思ったのが選択理由である。
 2016年8月、お盆前にはそのようなことを考えていたため、マシンの準備を早め
に行い練習走行をしておきたいと思っていた。
 2016年10月、秋DOAに参加。大雨の中の2日間で弱点が見つかった。WR250Rに
取り付けたマップケースに雨が浸入。マップが破れて手巻きで走りきった。マッ
プケース周辺には雨除け・風除けのシールドを装着する必要性を強く感じた。
 2017年4月、春のDOAに参加。今まで重かったマップケースを使用していたが、
ハンドル周りの重量軽減による操縦性の向上を狙い、Nシステムのマップケースを
導入した。併せて、ウインドシールドも装着した。この時は別なマシントラブル
が発生したが、自分で復旧しなんとか走りきることができた。
 この後、以下のような準備を行った。

5/2(火)プレエントリー完了、プレエントリーフィー振込完了。
5/17(水)フェリー往路復路予約。5/20(土)タイヤ注文。IRC BR-99:90/90-21 M/C 54R WT 2本:120/90-18 M/C 65R WT 2本5/20(土)リアフェンダーをノーマルに戻す。リアウィンカーを交換する。
5/21(日)ヤマハ主催のスクール、ライドオンダートに参加。実質的なオフロード初乗り。練習・肩慣らしになったかと思う。
5/24(水)タイヤ到着受取、フェリー代金支払完了。
5/28(日)マフラー・サイレンサーをノーマルに戻す。
6/4(日)ウィンカー再度交換、ナンバープレート脱落防止対策。
6/9(金)エントリーフィー振込完了、本エントリー用紙記入完了と郵送完了。
6/11(日)サイドバッグ仮取り付け。
6/15(水)フロントブレーキ固着解消、サイドバッグに荷物入れて取付け具合を確認、マップケース操作スイッチ取り付け位置修正。
6/17(土)ライトバルブ交換、ウィンカー交換、メーター周り配線処理、マップケース取り付け位置の調整、ラリーコンピュータ用のスイッチ取り付け方法見直し→うまくいかないのでとりやめ。
6/18(日)クラッチ交換、リアスプロケットをノーマル43Tに交換、リアブレーキ固着解消、ライトガード型紙作成。
6/19(月)パワーコマンダーのセッティング変更(ノーマルマフラー用セッティング)、サイドバッグが安定するように、車載工具入れの箱のみ取付け。
 6/24(土)クラッチ周りの組付けやり直し、クラッチケーブル、アクセルワイヤー点検・注油、ブレーキ前後のフルード交換、プラグ交換、マップケース取り付け位置微調整。 イグニッションプラグ取外しに苦労した。プラグは酷い錆。
 6/29(木)野口シートから加工完了したシートが届く。こちらからの発送から到着まで3週間。
 7/1(土)野口シート装着。US仕様純正のシートを加工したもの。アンコ盛はしていないが衝撃吸収材を入れて表皮を張替え。ノーマル比3cmUP。
 7/2(日)シートの様子確認と練習がてら、林道を軽く走行。とても暑くて疲労した。スプロケットのギア比が高く走りにくい。
7/8(土)前後オフロードタイヤに組み替え、翌日のツーリングの為、オンロードタイヤ装着のスペアホイールに交換。スプロケットを46Tに交換。携行品やダッフルバッグの中身を確認。ダッフルバッグとヘルメットにゼッケン貼り付け。
7/9(日)シートの様子を確認するため、ウニ丼を食べにぬいどう食堂までツーリング。470km走行。帰宅後にオイル交換、ドレンボルト類のワイヤリング加工、オフロードタイヤを装着済みのホイールを交換。
7/10(月) 装備品と書類関連を確認し荷造りする。
7/11(火) ダッフルバッグの中身と装備品を確認、荷造りする。
7/12(水) 引き続きダッフルバッグの中身と装備品を確認、荷造りする。 

    

 
明朝7/13(木)朝早くに出発予定なのだが、仕事の都合もありなかなか準備が捗らない直前2週間だった。毎日仕事が終わってから夜遅くまで準備に没頭した。トランポにダッフルバッグ、ライディングウェア、プロテクター類、車両、諸々を積み込む。車両横のゼッケンプレートだけ製作が間に合わず、現地で製作するため工具等も積み込む。出発準備が完了しないまま、とりあえず24:00に仮眠をとることにした。
 こうして準備をコツコツと進め、青森県弘前市から八戸市を経由し、北海道苫小牧、そしてスタート地点の北海道芦別市に移動を開始したのだった。

 
北海道4DAYS 7/13(木) DAY-0
 3:00起床、荷物準備の続きを行う。あれやこれや…と思い付くものをとりあえずクルマに積み込むが、きっと忘れ物があるだろう。
 4:00自宅出発、クルマに給油して東北道?八戸道を走る。3時間程度しか寝ていないので、かなり眠い。途中、休憩がてら止まった折爪SAにて、少し気になっていた足と指の爪を切る。これで眠気がスッキリと落ち着いた。
 6:30八戸のフェリー埠頭に到着。乗船手続きをして乗船待ち。だんだん陽が射してきて暑く、汗ばんできた。待ち時間が勿体無いので、売店でお弁当とビール、お土産を購入。車内で弁当を食べていたら、呼ばれて船体に誘導された。    7:30シルバーフェリーのシルバープリンセスに乗船、混んでいないお風呂でさっぱりした後、部屋でビールを飲んで寝る。睡眠不足の足しにする。
 8:45出航。シルバープリンセスの2等寝台は完全個室で快適な船旅が楽しめるので、おすすめ。シルバーフェリーの新型船は、全てこの船体みたいになるのだろうか?
 16:00苫小牧に到着。下船案内が流れてからしばらくクルマで待機していたが、奥まった場所でトラックに挟まれる形で縦列駐車していたのが災いしたのか、なかなか下船できない。
 16:30ようやく下船、とりあえず夕張郡長沼町を目指して移動開始。途中、千歳空港近くの道路を通過(R36~R337を北上)したときに、タイミングよく旅客機が滑走路に進入してくる様子が見えた。錯覚なのだろうか、すれ違う旅客機が空中で静止しているように見えてびっくりした。新鮮な旅の風景だった。
 17:45夕張郡長沼町に到着。クルマに給油し、携行缶にもガソリンを給油。ここで注ぎ口を忘れたことに気付いた。やむなくホームセンターにて灯油ポンプを買う。
 18:00北海道のアフリカツイン(RD07) ライダーの阿久津さんと会う。一緒にジンギスカンを食べながら談笑。お店は長沼成吉思汗、いわゆるジンギスカンを食した。ビールが欲しいところだが、我慢する。鍋の形が変わっていて、鍋の中心部の鉄板で肉を焼き、周りの深い部分で野菜等を煮るというものだった。〆はラーメンを入れて煮込んで食べるのだが、甘めのタレで煮込んだラーメンは美味しかった。
 20:00阿久津さんに近くの温泉まで案内してもらって別れた。小さい体で器用にアフリカツインに乗る姿はカッコよかった。温泉に入ってさっぱりする。思えば、暫く忙しくて仕事や準備に追われていたので、久し振りにのんびりしたクルマ旅をしているように感じた。
 20:30芦別に向かって移動開始。高速道路を利用したが、昨年も走っているので快適に走行できた。芦別市に入ってから、近くのコンビニで朝食とビールを購入。
 22:30スタート会場の芦別温泉スターライトホテルに到着。モトワークスというショップのトラック周辺で発電機をずっと回していて煩かった。耳栓をしていても気になるほどだった。あまりに煩いので様子を見に行くと誰も居なかったので、近くの人に声を掛けて発電機を止めさせてもらった。しかし、暫くすると誰かが発電機を始動してまた煩くなった。
 会場近くのコンビニで買ってきたビールを2本飲んで就寝。トランポのスライドドアとバックドアの網戸のおかげで、風通しの良い状態で寝られた。

 

北海道4DAYS 7/14(金) DAY-1
 車中泊だったが、比較的しっかり寝ることができた朝だった。5:30頃に起床した。身支度を整えて気合を入れる。既にマシンの準備を終えている様子の#38菊池さんに声を掛けさせてもらい、愛車のKTM950 SUPER ENDURO Rの写真を撮らせていただいた。自分はKTM950ADV-S、KTM990ADVと乗り継いでいるのだが、同じルーツのLC8エンジンを積んだマシンが目の前にあってドキドキした。この後、だんだん集まってくる顔見知りの方々に挨拶し談笑した。
   自分も準備を開始する。バイクをクルマから降ろしてマップケースや付属品を装着。朝からとても暑い。汗が滝のように流れた。自分は準備する時間が足りず、リアのゼッケンプレートを取り付けていなかったので、現地で製作して取り付けた。これはなかなか上手くいった。
 作業をしていると、#60小川さんと初めてお会いする#67泉本さんがやってきた。なんでも、アンダーガードを忘れたので現地であり合わせの材料で作るのにドリルが必要だという。もちろん、快く貸出した。その他にも、自分が持っていた手持ち材料を使えそうだと言う事で譲った。準備不足で不安な自分だったが、たまたま持っていた道具や材料が他の方の役に立つのは嬉しかった。不安感が和らいだ。
 8:00、受付が始まった。手荷物の準備を進めて受付と書類確認、持物検査はスムーズにパス。たまたま自分の後ろに並んでいた#46出津野さんが、何回も荷物をとりにトランポの方へ行ったり来たりしていた。気の毒だったので、順番が進んだ時に一緒に荷物も前に移動しておいた。自分も初めてTBIに行った時は右往左往していたなぁ、と思い出した。自分も1回荷物を取りにクルマに戻ったりしたが、暑さだけでなくここでも体力を余分に消耗していたと思う。
 この後に公式車検となるのだが、ここでまさかのトラブル。右後方のウィンカーが点灯しない。先週のツーリングでは普通に点灯していたのに?周りにはいろんな方々が心配して寄ってきてくれた。中でも、スタートを見送りに来ていた和田さんと三原さんには色々とアドバイスをいただいた。(ありがとうございました) やむなく色々と点検してみたところ、ウィンカーが壊れており配線が基盤側から切れていたようだった。持ち合わせていた予備のウィンカーと交換した。予備のウィンカーを持ってきたのは、昨年も出場していた#13中村さんがラリー中にウィンカーが排気ガスで溶けて壊れていたのを見ており、予備は必要なんだなぁとなんとなく持ってきていたものだった。
 ウィンカーを交換するには、サイドバッグ→シート→サイドカバー→リアフェンダーと外していかないと、ウィンカーに辿り着かない。時間はあまり余裕がなく、焦って作業を行った。それにしても暑い。陽射しが照りつけるなか、額から汗が滴り落ちた。鉢巻替わりのタオルは、あっという間に絞れる程に濡れてしまった。急いで組み上げて再車検を受けた。今度は無事にパスしマップを受領。慌ててマップケースに巻いた。トラブル対応で時間が無くなってしまったので、マップの下見やマーカー塗り、ガソリンスタンド等の距離を控えることはできなかった。
 昼食のお弁当は海鮮丼で、とても豪華で北海道らしい昼食だった。受け取って食べたが、色々準備が進んでおらず気持ちが落ち着かない。そして食欲がない。それでも食べてスタートに向けて気持ちを切り替えていかなければならなかった。
 ホテルで開会式とブリーフィングが行われた。ブリーフィングでは当日の注意点やCPの位置、CPやSSの開設時間などを知らせるのだが、ここで大活躍するアイテムがマジックとガムテープである。ガムテープにメモしてあちこちに貼り付けて活用するのだが、ガムテープはそのままだと嵩張ってしまう。
 #74井手川さんがガムテープをそのまま持ってメモしようとしていたのだが、周りのエントラントから芯を抜いてコンパクトにする方法を教えてもらっていた。スタート前の段階で、エントラント同士が仲良くしている様子が、ラリーだなぁと感じた。
 ブリーフィング後、ホテルから出て急いで準備し、スタートに備える。フル装備でバイクを押してスタート順に並んで待つ。ここでも暑さが 体力をジリジリと奪っていく。汗がまた噴き出てきた。僅かな日陰に入ると、それだけでとても涼しく感じた。
 DAY1の距離は157.71km、SSは1本。最初のスタートはゼッケン順なので、自分は後方側69番目のスタートだった。応援に来てくれた方々、お見送りの方々に見守られながらスタートした。まずは1日目を無事に終えたい。距離は短いものの、何かミスや事故、トラブルがあれば簡単にリタイヤしてしまう。それがラリーだと思う。
 順調に、慎重に走りながら、144.44km地点のSS1に到着。SS1の距離は5.07kmだった。タイヤの空気圧はフロント0.9kg/cm2、リア0.9kg/cm2で調整した。
 たまたま、順番が#65吉川恵さん、#74井手川さんの後ろになった。井手川さんは「追いついたらホーン鳴らしてくださいね、譲りますから!」と仰ってくれたけど、いやいや、追いつくわけがないじゃないですか…。著名なエンデューロライダーにトレーニングを全くしていないド素人は到底追いつく事はできない。でも、そんなお声掛けをいただけることに感謝。普段ならなかなかお会い出来ない方々に会ってお話し出来るのも、ラリーの醍醐味の一つだと思う。 今回初出場だった#51#52村上さんご夫妻は、人生初のSSということで緊張しているようだった。初めてのラリー、初めてのSS。誰でも最初はそうなのだけど、とても緊張する瞬間だと思う。
 もちろん、何回経験してもSSのスタートや走行中は緊張するのだけれど、何回経験しても飽きる事のない瞬間だと感じるのは自分だけではないと思う。だから何回やってみても面白かったと感じるのではないだろうか。
 SS1をスタートしてみると、砂利が少な目の林道で意外に走りやすかった。タイヤのお陰なのか、自分の技量それなりに走れていたような印象だった。しかし、前走車の#74井手川さんがたてた砂埃はだんだんと薄くなっていった。どんどん離されている実感があった。流石である。 SS1を走り終えて少しリエゾンを進むと、今日のキャンプ地に辿り着いた。暑い日だったのでとても喉が渇いていた。ビールを少しでも早く飲みたくて、手前のコンビニで買って来たのは自分一人ではなかった事を申し添えておく。
 ゴールすると、#39渡辺さんが困っている様子だった。ラリーメーターのセンサーが壊れたのか反応しなくなってしまったとの事だった。話をよく聞いてみたら、たまたま自分の手持ちのセンサーが使えるかもしれないとの事だったので、貸して試してもらうことにした。なお、貸したセンサーは自分の車両には使えないタイプだった。しかし、なんとなく思いつきでダッフルバッグの中に入れておいたのだった。センサーが反応したとの結果だったので、快くセンサーはお譲りした。初日でトラブルが原因でリタイヤするのはとても切ないので、そのセンサーで残りの3日間を走り終えて欲しいと思った。
 この後、ビールを飲みながらテントとコット(小型の簡易ベッド)を張った。暑い夜でも、コットを使えば身体の下に風が通るので比較的快適だ。自分は腰痛も気になるので愛用しているが、クッション性が高いので試してもらいたい装備の一つである。テント設営後は、車体の軽整備としてチェーンオイルの塗布と各部点検を行った。朝に交換したウィンカーは、きちんと作動していた。
 風呂に入ってサッパリした後、ジンギスカンを食べて更にビールを飲みながら友人知人と談笑した。「チームフロンティア」の3人(#33近藤さん、#34齊田さん、#35水出さん)また、#39渡辺さん、#13中村さんともテーブルを囲んで夕食を楽しんだ。色々お話をさせてもらって面白かった。普段はなかなか会えない方々との語らいの時間はとても楽しかった。
 テントの中ではマップの確認を行った。注意すべき箇所のマーカー塗りと、ガソリンスタンドやコンビニの距離を控えておいた。今朝の時間がなくなってしまった分を、ここで挽回したつもりだった。
 DAY1の成績は総合26位だった。まぐれだとしても、30位以内に入っていた事は嬉しかった。翌朝のスタートは26番目の7:12:30。時々そよぐ風を感じながら、心地よくテントの中で眠りについた。

  

 

北海道4DAYS 7/15(土) DAY-2  
 4:00頃だろうか。周りのテント内でのごそごそという音に促され、早めに目が覚めた。陽はまだ射しておらず、とても涼しかった。天気はいいものの、テントが朝露でぐしょぐしょに濡れていた。地面が芝生という事もあり、芝生から蒸散した水蒸気が冷えた空気で結露したと思われた。フライシートの内側もびしょ濡れだった。やむなく、タオルで拭き取ってダッルバッグの重量が増えないように配慮した。まだ1泊目で手馴れていないものの、比較的手早く荷物を片付けてダッフルバッグに詰め込む。
 朝食は6:00から、ブリーフィングは6:30から、スタートは7:00から。自分のスタート時間は26番目で7:12:30だった。
 公式通知の貼紙があり、ルート変更があるようだ。林道が通過出来ないらしく、一部ルートが変更になりツーリングマップルを参考にしながら走る必要があるとの事だった。403.98km地点から444.53km地点にツーリングマップルを見ながら移動するだけなのだが、これはこれで面白い。SSERのイベントはこれで3回目だったが、初めてレギュレーションで決められた装備品の地図(ツーリングマップル)が活躍する事となった。
DAY2の距離は473.52km、SSは2本。午後のSSはモトクロスコースのようだ。スタートして6.24km地点のSS2に向かう。SS2の距離は5.03km。昨日のSS1の逆走だった。タイヤの空気圧は昨日よりも下げてみてフロント0.8kg/cm2、リア0.8kg/cm2に調整した。SSに入って走り出すが、朝が早いからだろうかペースが上がらない。もちろんエントラントの全員がイコールコンディションで走っているので、他の方々も同じように感じていたのかもしれない。原因は何だったのだろうか判らないが、今後は早朝とか夜間とか、身体が温まっていないうちからでも全開走行出来るような練習も必要かと思った。
 SSを終えると、長いリエゾンとなった。時折現れる林道を快適に走る。林道の中では時々日陰があり、その僅かな日陰がとても涼しく感じた。しかし、連日の猛暑で水分が全くない路面は容易に砂埃が舞い上がる。これを前走車が巻き上げるため、ウェアも顔もヘルメットのシールド内も埃まみれになった。前走車の巻き上げる砂埃が落ち着くまでゆっくり走っていたら、脇から別の車両が追い越そうとしたりして、慌ててアクセルを開けることもあった。それくらい、前走車との距離が近いと前が見えない状況だった。
 途中CPがあり、そこまでの道中で時間調整のために休憩しようとしていた。しかし、ちょうどいい場所がなく道端の木陰で数人が涼んでいるのを発見、一旦通り過ぎたが戻って休憩した。確か、小学校の脇の木立で二宮金次郎の銅像が傍にあった。多くのエントラントが入れ替わりやってきては走り去っていく。ここで暫く休憩した。リエゾンでは、北海道ならではの丘をいくつも越える直線道路、川沿いの雄大な湿原の風景、海沿いのダート、海原を見渡す高台(というか、崖の上)などの景色も堪能できた。リゾートラリー、ここにあり。
 368.64km地点、SS3に到着。釧路市高山モトクロスコースという場所だった。既にSSを走行している車両が、凄い砂煙をあげて爆走していた。細かい砂埃が風に乗って流れてくる。走り難いイメージを感じ取った。細かい砂の路面のように感じられたので、タイヤの空気圧はフロント0.7kg/cm2、リア0.7kg/cm2と少し低めに調整した。
 走り出す前にコースの入口付近を見ると、エントラントが競技長の春木さんを取り囲んでいた。何かあったようだ。自分も近寄って耳を傾けると、このSSから先で更にルート変更があるとの事だった。結局、このSSの後に今朝通知のあった交差点に直接移動してオンルートに戻ること、との事だった。
 気を取り直してSSの順番待ちに並ぶ。そして、スタートした。走り出してすぐに意外にグリップすると感じ取った。これなら少し低めに設定したタイヤのエア圧とも相まって、快適に走れそうだ。しかし、調子に乗ると転倒して大きくタイムロスする可能性も否めない。そう、自分は練習もしていない素人ライダーなのだ。練習・トレーニングを重ねてきた方々と同じ土俵で走らせてもらえるだけでも有難いのかもしれない。多くの前走車が走った後の細かい砂の路面は、油断するとハンドルを取られる場所もあったが、スムーズに走ることができた。ただ砂埃が凄いことだけがネックだった。
 真剣に走っていたせいもあるのだろうが、あっという間に走り終えてしまった。気持ちよく走ったつもりだが、タイムは大きく伸びないだろう。自分が走りやすいと思うからには、ベテランの方々には更にタイムを縮めるコースだったのだろうと予想した。
 SSを走り終えてリエゾン走行に備える。空気圧の調整と一旦降ろしたサイドバッグを装着する。ポンプで空気圧調整する。暑くて汗が流れた。空気圧は前後1.5kg/cm2にしておいた。オンコースのままだと、ここからキャンプ地まで約100kmだが、ルート変更があったので少しは楽に移動できるかもしれないと思った。モトクロスコースから出発する時まだコースにいるエントラントは数人、ごく僅かだった。僅かなタイムロスが重なって、貴重な時間を大きくロスしていたのだった。
 ツーリングマップルを見てルートを確認、走り出す。自分は一旦R44に出てからR391を北上する事とした。順調にルートを進み、R391を3km程度北上してから気付いたのだが、ガソリン残量が少ない。給油ランプが点灯していた。この先にガソリンスタンドがあるのか?それとも無いのか?不安が頭をよぎった。悩んだ挙句、思い切って来た道を10km程戻りR44のガソリンスタンドで給油した。モトクロスコースを出てからこの間、他のエントラントを見かけることは全くなかった。もしかしたら、自分が最後尾になっているのかもしれないと思った。気を取り直してR391を北上する。444.53km地点のコマ図に相当する目的の交差点までは約44kmあったが、かなり遠く感じた。
 途中、夕暮れが迫る湿原の中を走行した。対向車もまばらで、快適な舗装路の移動だった。スピードがあまり出ない小排気量車のもどかしさもあったが、のんびりと風景を堪能しながら走ろう、と違う観点で楽しんだ。単調な舗装路での移動だったが、野口装美で加工してもらったシートのおかげなのか、それほど苦痛を感じることはなかった。ハイシートをベースに加工してもらっていたので膝裏の余裕があり、正座するような膝の窮屈さは感じなかった。
 途中、数台のエントラントと合流し、自分が走行しているルートが間違っていないことに自信が持てた。コマ図どおりに走るならともかく、目安になるものがツーリングマップルだけというのもラリーの中においては不安になるものだなぁ、と思った。目的の交差点に到着し、他のエントラントと共に小休止。その後、ルートを辿りキャンプ地を目指した。キャンプ地近くでは見覚えがある風景があり、今日の目的地が昨年使用した場所であることを感じさせた。
 とりあえずゴール。テントを設営し、寝床を確保。マシンの確認等は後回しにしようと考えていた。しかし、周りを見るとタイヤ交換を行なっている。ここで悩んだ。タイヤを確認すると、リアはまだ6~7部山だった。ここまでの走行距離と現在のタイヤ消耗を考えると、明日以降のタイヤの消耗もさほど多くないのではないか?という楽観的な考えに落ち着いたが、結局就寝直前まで交換すべきか否かモヤモヤと考えていた。
 何気なく「そういえばウィンカーが切れていたりしたら明日スタートできないよなぁ」などと考えつつ確認してみたら、スタート時の反対側、リア左側のウィンカーが点灯しないことに気がついた。これは後回しにできない修理対象のため、やむなく交換を行なった。スペアのウィンカーを持っていて良かったなぁ、と改めて感じた。交換作業はグランドスタート前に練習したようなものだったので手早く作業できた。それでも、時間を確認すると30分近く費やしていて、ついでにタイヤ交換もしてしまおうか?という気持ちはだんだん影を潜めてしまった。周りを見渡すと、バイクを整備しているのは自分を含めて3名ほどしかいなかったような気がする。
 食事をとって近くの温泉に入りに行った。近藤さんに誘われて一緒に向かう。狭い民宿?のお風呂だったのだが自分が行った時点ではまだ混んでいなかった。しかし、お風呂から出てみてびっくり。行列を作って順番待ちをしていた。先にお風呂に行こうと誘ってもらってよかったなぁ、と安堵。今日はたくさん走った一日だった。明日は更に長い距離を走る予定だ。疲れてはいたが、翌日の長距離走行に備えてルートや休憩場所、ガソリンスタンドの確認をするためにロールマップを下見してから就寝した。

 

  

北海道4DAYS 7/16(日) DAY-3
 この日は様々な事が起きて、忘れられない思い出の日となった。雨が降ってくるかと警戒していたが、なんとか天気はもっていた。手馴れている訳ではないが、テントとコットを手早く畳む。荷造りをしていると、#61江原さんがコットに興味津々でいろいろ聞かれた。腰が痛くならなくて夏場は背面が涼しいコットだが、軽量なモデルは高価というデメリットもあることを教えた。最近は中国製の安価なコピー品も出回っているので、そちらを試してみるのも良いかと思っている。
 朝食は6:00から、ブリーフィングは6:30から、スタートは7:00から。自分のスタート時間は35番目で7:17:00だった。ブリーフィングの場所近くでは、何故かパトカーが停車していて、警戒心を煽った。特段悪い事はしていないのだが、バイク関連のイベントで警察が介入してくるとあまり良い印象がない。
 そんな時、近くにいた#1菅原さんとお話しさせてもらった。昨年も何回お話しさせてもらったが、人生の大先輩という風格がある。「今年は暑くて大変ですね」と言うと、「まだ大したことないですよ、南米の暑さはこんなんじゃないから」などと返されると、まだまだ頑張らなくちゃいけない、と奮起するしかない。実際に、そのような現場のお話をご本人から伺う事が出来たのは、いい思い出になった。
 ブリーフィングでは、北海道警察の講話があった。死亡事故も多く、特に二輪車が地元車両と接触する事故が多いとのこと。教えてくれた言葉の「キーを抜くまで気を抜くな」をメモのガムテープにも書いておいた。事故を起こしては楽しさが悲しさにしかならないので気をつけなければ。DAY3の距離は515.19km、SSは2本。スタートして朝のSSに向かう。
 21.82km地点、SS4に到着。SSの距離は3.80kmだった。空気圧は昨日のモトクロスコースの感触が良かったのでフロント0.7kg/cm2、リア0.7kg/cm2に調整し スタート。SSに入ってアクセルを開ける。頑張っているはずなのだが、ペースが何故か上がらない。前走車の砂埃がだんだんと薄くなっていくのを感じた。つまり、差が開いているという事だ。練習不足、準備不足。いろんな事を考えたが、その時点で集中力が欠除していたと思う。
 SSを終えてリエゾンに入ってからは、楽しみにしていたホッカイシマエビを目指して走っていた。とある漁港に立寄り、茹でて冷凍してあるものを解凍してもらって食す。自分の嫁がお土産に欲しいと言っていたので、思い切って500gを購入して宅配便で送った。これで来年の北海道4DAYSの出場の許しをもらおうという作戦だ。エビを食すと濃厚な味がする。このエビを使った天丼を出してくれるお店が近くにあるのだが、時間が早いので開店していなかった。昨年食べて感動しただけに、残念だった。また機会があったら訪れよう。
 リエゾンを進んでいくと、そろそろお昼時という時間になった。羅臼の道の駅近くを一旦通り過ぎるも、その先でお店が無いような気がして戻った。なんとなく入ってみた道の駅では、#17吉野さんと会って話をした。一緒に昼食を…と誘われて心が動いたが、今日は時間配分がタイトだったのを思い出し、道の駅で食べることにした。建物の2階に上がってみると、#33近藤さんがいたので相席にしてもらった。頼んだ丼は大盛りで\2500と少々高価だったが、現物を見てみたらかなりの大盛りでとても満足した。正直、食べ過ぎた。
 昼食後は近藤さんと一緒にリエゾンを走った。中排気量?の690ccと小排気量の250ccとが一緒にリエゾンを走るのは、どちらかに負担がかかるような気がしたが、意外になんとかなった。タイヤには優しくない走りになったような気もするが、気にはならない。これが1000ccとか1200ccのツインエンジンと一緒だったら、とても辛かったのかもしれない。観光スポットの知床峠を素通りし、CPに向けて急ぐ。少なくとも、雨が降る前に少しでも距離を稼いでおきたいと思っていた。
 CPに到着してカードをチェックしてもらうと、大会委員長の山田さん自らコーラを紙コップに注いで手渡してくれた。お礼を言いながら飲んだコーラは刺激的で気分転換になった。暑かったから余計に爽やかに感じたかもしれない。偶然近くにいた#74井手川さんが「雨降る前に距離稼がなくちゃ。」と話しながら、急いで走り出したのが印象的だった。
 リエゾンに戻って走り出してしばらくすると雨の匂いがした。そして、ポツポツと雨が降ってきた。大粒の雨だったので、本降りにならないうちに慌ててカッパを道端で着込む。あちこちでエントラントが同じようにカッパを着込んでいた。カッパを着込んで一安心しながらリエゾンを走り進めると、次第に雨は強くなり、本降りになった。どちらかと言うと大雨であった。長い舗装路のリエゾンが続いたのだが、シールドが内外の水滴で前が見えなくなってしまい、少しペースを落とさざるを得なかった。乾いた林道で舞い上がった砂埃が、シールドの内側で水滴と混ざり視界をさらに悪くしていた。
 しばらく我慢して走っていたが、次第にシールド内側が曇るようになってしまった。やむなく休憩してシールドを清掃することにした。昼食後、ずっと近藤さんも一緒だったのだが、彼はブーツの中が濡れて不快だったらしく、立ち寄った商店の店主に新聞紙をもらって対処していた。予想外に復旧に時間がかかり、更に近藤さんの準備が終わるまで待っていたが、遅れを取り戻すべくリエゾンを走り出した。
 時間も結構タイトで余裕がないことはこの時点でわかっていた。少し長い休暇だった分、これから先は休憩がほとんど出来ないだろうと予想した。少しすると近藤さんが何かを訴えていた。ラリーメーターが水没して表示されず距離がわからないらしい。やむなく、自分の後ろを付いてきてもらうこととした。
 途中で何箇所か道路に電光掲示板があったのだが、そこには「大雨洪水警報 走行注意」の文字が赤く光っていた。これから先の長距離林道は大丈夫なのだろうか?ちょっと不安になった。通過した市街地では、道路で所々小規模な冠水がみられた。この後のリエゾンでは15km、一般道を少し挟んでその後20kmと結構な距離の林道を走った。雨は全く弱くならない。むしろ強くなっているような錯覚がした。もしかしたら、錯覚ではなかったのかもしれない。
 しかし、今では既にわからない。林道の中では道が溢れた雨水で流されて、川のような状態だった。油断すると、雨水が産んだ深い轍にフロントタイヤがとられそうになった。目の前のギャップに夢中になっていると、後続車両が見えなくなったりしたので時々ペースを下げて調整した。この雨の中で距離もわからず走るのは、色々と危険が伴うので出来るだけ避けたい。また、同行している友人に怪我や遭難の憂き目にはあわせたくないので、余計に慎重に走った。林道を抜けられる見込みが感じられるまで、長く厳しい走りを強いられた。
 20kmの林道を抜ける少し手前で、#21鎌田さんが停車していた。何かトラブルでもあったのか?と思って声をかけたが、ブログ用の写真を撮っていたらしい。あの大雨の中、たった一人で佇んで写真を撮っていたとは…流石、プロである。2人を先導しながら高速道路の入り口まで走ったつもりだったが、気がつけば鎌田さんの姿が見えない。どうしたのだろう?と心配したが、こちらも時間に余裕が全くなかったので先を急いだ。
 高速道路では、ひたすら我慢のライディングを強いられた。高速道路のリエゾンは、小排気量では過酷だった。もっと早く走りたいがエンジンへの負担、タイヤへの負担、余計なガソリンの浪費…いろんな要素が絡むのでガス欠や トラブルの原因になりやすいと感じた。
 なんとか高速道路を走りきり、メーターの給油ランプを気にしながらガソリンスタンドを探した。ガソリンスタンドを見つけた時、「この景色は見たことがある」と感じた。昨年も通過して給油したガソリンスタンド、野口商店 愛別SSだった。このお店は、閉店時間はとっくに過ぎているのに「ガソリンがなくなったら困るだろう」と考えて、最後に給油しにくるであろうエントラントを待っていてくれたようだった。自分達はまだ最後ではなかったようで、後から数台のエントラントが給油しに訪れていた。給油量は9.3L、残容量は2.0Lあまり。ちょっと危険な領域だった。そして、時間は18:30を回っていた。
 給油後は、SSに大急ぎで向かった。SSの閉鎖は19:00。間に合うのかどうか、わからなかった。
 500.99km地点のSS5に到着。SSの距離は6.47kmだった。SS前のCP100手前で、急いで空気圧調整をする。空気圧は0.8 kg/cm2程度としたかったのだが、少し落としすぎてフロント0.7kg/cm2、リア0.7kg/cm2となった。辺りは既に薄暗く、少しでもいいタイムを目指すには不利な状況だった。ここで、まさか使うとは思っていなかった補助灯とハイビームの組み合わせで、少しでも路面を照らす事とした。
 SSインは手元の時計で18:58、ギリギリで間に合った。スタートして走り出すと、やはり暗くて前が見えにくい。前走車の残した轍すら見え辛い状況だった。それでも最善を尽くしてなんとか無転倒で走り終えた。あとはキャンプ地に向かうだけである。しかし、疲れていたのかSS出口後のルートを間違って右に進んで行き、止まりにぶつかった。
 19:30頃、すっかり薄暗くなりつつあるキャンプ地に到着した。あれだけ降っていた雨は止んでいた。思い返せば、高速道路を降りる手前で雨は止んでいたのだった。とりあえず、空いている場所にテントを建てる。傾斜地しかなかったので、かなり斜めになってしまった。高い方を頭にして寝るように設営した。
 疲れを感じながら着替える。急いで食べないと夕食がなくなってしまうので、先に夕食を食べることにした。しかし既に副菜はいくつかが空になっていた。夕食は空いているテーブルに相席させてもらい、談笑しながらいただいた。#57濱田さん、#71村上さんとご一緒させていただいた。楽しく談笑したりして気がついたら、お風呂の受付時間21:00を僅かに過ぎていた。
 気を取り直して整備することにした。車体の各部点検、チェーンオイルを給油してパルクフェルメへ停めた。この後にお風呂に行ってみたが、やっぱり駄目だった。結局、この夜はお風呂には入れず我慢の夜となった。いろんな事があって疲れた1日だった。
 翌日のルートや休憩場所、ガソリンスタンドの確認をするためにロールマップを見たかったのだが、睡魔に負けて寝てしまった。22:30頃には就寝したと思う。夜半に雨が降ったのかもしれないが、そんなことは全く気にならない程に斜めに建てたテントの中で深い眠りについた。

  

北海道4DAYS 7/17(月) DAY-4
 斜めに建てたテントの中で起床する。外の様子を伺うと、曇り空ではあったが雨は降っていなかった。それだけでもLuckyな事だと感じる。いつもより早く荷物をまとめてテントとコットを畳む。今日は雨の予報もあったため、天候を考えてカッパを着込むこととした。
 慌ててカッパを着る手間を考えると、今のうちに着ておいた方が疲れないと思った。着込んだぶんスタートまでは暑さを感じるのだが…。周りを見渡すと、昨日の雨で湿ったウェアを干すため、あちこちのエントラントが舗装の上に衣服や荷物を広げていた。
 朝食は6:30から、ブリーフィングは7:00から、スタートは7:30から。最終日のせいなのか、時間は少し遅めの設定だった。身支度を整えていて気が付いたが、毎日同じ事の繰り返しだったので身体が順応しているのか、時間前に色々と準備が出来るようになったのが印象的だった。自分のスタート時間は40番目で7:49:30。昨日よりも5番遅くなっていた。後続の方々が本気を出して追い上げていた。スタートの順番待ちでは、GPSのバッテリーが切れそうになっているのに気付くも、あと2分くらいでは対処出来ない…やむなくそのままスタートした。DAY4の距離は170.82km、SSは1本。どうやら、今日のSSは昨日の夕方のコースをもう一度走るみたいだった。
 スタートして最終のSS6の走行後にGPSのバッテリー交換をしようと思っていたが、途中で電源が切れている事に気付き、路肩にバイクを停めて交換。SSに早く到着したかったがタイムロスとなった。 GPSのログはバッテリーが切れたところから現在地まで直線で結ばれた。約500mくらいだろうか。まぁ、しょうがない。
 SS手前ではタイヤが減っている事を勘案して、空気圧はフロント0.7kg/cm2、リア0.7kg/cm2に調整した。正直、昨日走行してからそのままだった。14.81km地点、SS6に到着。SS6の距離は6.45kmで、昨日と全く同じルートだった。SSは既に開設されていて、どんどんエントラントが吸い込まれていく。
 昨日と同じ林道だったので、思い切りアクセルを開けるしかないと思ったのだが、順位が多少上がったとしてもさほど問題でもないだろう、と思う自分もいた。そんなことを考えていたら、あっという間に自分の順番となった。そしてスタート。
 走り始めると、昨日の雨のおかげなのか適度に湿っていてタイヤがグリップする。昨日よりは確実にペースアップしている実感があった。よし、頑張ろう!と思い直してひた走る。すると、右コーナーでビッグオフが転倒していた。白いアフリカツインの#49新井さんだった。道路から外れて路肩にいた。ヘルメットの中で「ゴメンなさーい!」と言いながら通過。
 しばらくすると、また右コーナーでビッグオフが転倒。白いKTM1190ADV-Rだったろうか。しかも見通しの悪いコーナーのイン側で林道を2/3程度塞いでいた。ここでも「ゴメンなさーい!」と言いながらアウト側を通過した。次第に路面に残る轍からメッセージが見えたような気がした。手練れの方々のアクセルワークやライン取りが鈍重な自分でも理解できたような気がした。その後、自分なりに頑張って走り、ゴールした。
 タイム的には2名の転倒者を避けるのに10秒弱くらいロスしたかと思う。減速・再加速だけでもタイムロスに繋がるので、時の運もタイムには影響するかもしれない。無転倒で全SSを走り終えた充実感を感じつつも、先ほどの転倒していた二人が気になる。
 CPの開設時間までは余裕があったので、手前付近のコンビニに寄ってみた。時間は11:00くらいだった。多くのエントラントが休憩中だった。暑くて我慢ならなかったので、カッパの上を脱いだのだが、その直後に雨が降ってきた。周りの人から揶揄われ(からかわれ)ながら、雨宿りしつつホットコーヒーを楽しみ、「十勝産あずきのあんまん」を食した。かわいいコンビニの店員さんに聞いてみると、夏でも北海道では中華まんを売っているらしい。
 ふと気がつくと、自分が休憩中に多くの方が出発し、残っているのは僅かな人数だった。雨は止んでいる。カッパの上は着ない事とした。そしてまた、リエゾンを走った。ゴール地点に近付くにつれて、もっと走りたいような物足りないような気持ちになってくる。この感覚は、過去に出場したTBI、昨年のH4Dでも感じたのだが何故だろう。走り足りないという訳でもないし、早くゴールして着替えてサッパリしたいはずなのに。
 最後に走った林道では、対向車も多いこともあったが出来るだけのんびり、ゆったりと走行した。今回のラリーを回想しつつ、景色を眺めながら走るホコリのたたない林道は快適だった。程なくしてグランドゴール。自分がゴールしたすぐ後に、アフリカツインの新井さんがゴールしていた。声を掛けさせてもらったら、怪我はなかったとのこと。バイクがちょっと傷付いたのは残念だけど、大きな怪我がなくてよかったと思った。
 ゴール後、パルクフェルメにバイクを停めて、いろんな方々と談笑した。昼食もいただき、メロンとサクランボ、トウモロコシもいただいた。メロンもサクランボも、びっくりするくらい甘かったのが印象的だった。
 昨年はウェアを着替えないままメロンやサクランボをいただいたのだが、今回は着替えて身軽になってからだった。そのせいもあるのか、とても開放的な気分だった。温泉に入りサッパリした後、表彰式に出席した。皆爽やかな顔をしていたように感じる。今回の大会は、リタイアが皆無だったとのこと。これはエントラントの皆が頑張った証だし、レベルが高かった事を示していたと思う。

  

 

 自分は総合40位と奮わない成績であったが、記録的な暑さ、大雨洪水警報が出るほどの大雨の中、小排気量でエンジンを思い切り回して、無転倒で走った北海道はいい思い出となった。自分の中では、まだ2回しか北海道をバイクで走っていない。だから、まだ知らない北海道がたくさんある。そして、もっと多くの景色を見てみたい。
 だからまた来年、2018年の北海道4DAYSを走りたいと思っている。次回はもちろんもう一台の愛車、ビッグオフのKTM990ADVで。