DOA2020秋・八ヶ岳 参戦記


今回のDOAイベントレポートは、新型ヤマハテネレ700を購入した西口さんがレポートします。

「プロローグ」

 紅葉深まる10月24日25日、DOA(ドアオブアドベンチャーラリー)2020秋・八ヶ岳
に参加して来ました。コロナ禍の中、各方面との困難な調整の上、開催にこぎつけ
た主催者に感謝の意を表したいと思います。
 さて、7月の新発売後、即購入したばかりのニューマシン、ヤマハテネレ700に、
以前から持っていたRC7(ラリーメーター)と電動コマ図ホルダーを早速移設、準
備万端整えた。虎タイガーやアフリカツインだと装着には色々な追加パーツとか工
夫が必要なところ、これが何の加工も無しでメーター上の支柱にボルトオンするだ
けで、既存メーターパネルの視認性を全く犠牲にすることなくバッチリとマッチし
ちゃった。四ツ目LEDのダカールマシンの様な顔に、これまたダカールマシンの
様なメータータワーが再現できて、もう無茶苦茶カッコいい。まずはラリーは格好
から、気分が高まる。
 今回のDOAはコロナ禍の中なので、三密を避ける為トランポでの参加はNGだ。
自走組だけに制限されたので、本来ならキャンプ道具を積んでの参加となるところ
を、八ヶ岳麓の寒空の中で寝る勇気なんかなく、前泊も当日泊も宿を手配した。
本来ならみんなで酒飲んでワイワイと前夜祭を楽しむところを今回は韮崎駅近くのビジホにひとりで泊まることになった為、何か楽しみはないかなと思案。そうだ、地元の赤提灯でも探して美人女将としっぽり飲むのもいいかなと思いつき周辺を散策したところ、ビジホの向かいにお誂え向きの赤提灯を発見。40年前はさぞ美人だったろう女将さんと、年季の入ったオヤジさんが経営する場末の居酒屋だったけど、オヤジさんが自分で市場にネタを仕入れに行っているとの事で、海の無い山梨県なのになかなかおいしいお造りや生ガキをあてにお酒を堪能する事ができた。おやじさんの料理人人生の話とか聞きながら楽しい夜を過ごし、その日は早めに就寝。翌朝は目覚まし時計を待つことなく4時に目が覚め、余裕の時間で現地に到着した。

   

「ラリー1日目」
 今回のBOCからの参加は、BOC旗艦ドカムルティー1200の土谷隊長、KTM250EXCの辻さん、BMW R100GSの江川さん、KTM690EDRのふじゃ君こと藤原さんとボクの5台。KTM1190ADV辻口さんは、気合充分で前泊入りしていたにも関わらず、朝のホテル前でバイクが突然の故障、レッカーでそのままご帰還。BMWエフロクPDで参加予定だった佐多さんはバイクにまたがって出発はしたものの、仕事中のヒザ頭の負傷で足をうまく曲げられないので仕方なく引き返し、急遽参加を断念したとの事。お二方残念でした。また来春頑張ってね。
 さて、到着後はすぐに車検である。コロナに配慮してか、今回の車検は事前に車検チェック表に自分でチェック項目を確認して提出するだけの自己申告制だった。なんか適当だなあ。過去にヘッドライト不調でモンベルのLEDライトをKLR600の前に括り付けて必死に車検を通したふじゃ君や、リアリフレクター不良でクルマ用の重い三角反射鏡をKTMフリーライドのリアキャリアに縛り付けて走った辻さんの努力は何だったのかいな。
 車検の後は、お馴染みのめんどくさいロールマップ貼りの内職だ。もういい加減にSSERみたいに事前に巻いたマップを配って欲しいところです。
 今回のボクのゼッケンは141番。ほぼ最後尾近くだったのでスタートまでには随分と時間の余裕があった。そこで今回4台参加していたテネレ700勢だけでゆっくり記念撮影することに。
 一人は写真家でありパリダカ完走経験者でもある桐島ローランドさん。「一緒に写真撮りましょうよ。私、桐島と申します。お名前教えてもらえますか?」なんて声をかけられて、めちゃ気さくな方だ。スラっと背が高く足が長くてすんごい男前。桐島さんのテネレはオーリンズのサスに換装、さらになんとハイシートに換えてある。ローダウン仕様のボクのテネレよりシート高は10センチ近く高くてタンクとシートが一直線。レーサーみたいでかっこいいぞ。
 もう一人はルマン24時間4輪レースやF1の前座のポルシェカップレースに出たり、ファラオラリーやヨーロッパのモタードレースに参戦したりでマルチな活躍をしている佐野新世さん。あとは、アフリカツインであそ部つながりの西村校長先生。色んなバイクを知り尽くしたそんな御仁達がテネレ700を選んでいるなんて、なんかうれしいなあ。
 そんなことをやっているうちにスタートとなる。まあ、ラリー内容としては別にタイムを計るSSがあるわけでもなく、お気楽ツーリングラリーなので、最高に紅葉が綺麗だった事が印象に残っているだけなのだが、相変わらずわざと距離を狂わせたマップトリックの多いこと。RC-7は10メートル単位までカウントするので距離は相当正確なのに、何百メートルも合わない事が。でもまあこれもラリー、余興として楽しんじゃうことにする。しかしトリックに引っかかり、行ったり来たりしているビギナーなエントラントが多いこと。慣れてくると、「ああまたか」とだいたいわかって来るので、落ち着いて対処すればそんなに引っかかりはしないもの。

  

 途中で、桐島ローランドさんや佐野さん達の有名人グループに追いついたのでしばらく一緒に走っていると、景色の綺麗な橋の上でグループが走りを止めたので一緒に小休止。すると突然桐島さんがバッグからドローンを取り出して飛ばし始め、遥か上空からみんなを動画撮影しだした。さすがプロカメラマンだ。そして楽しみ方を知っている。日経ビジネスでコラムを書いているフェルナンドヤマグチさんなんかもハスクバーナで走っていて、「これ何万人も見ているSNSに顔が載りますけどいいですか?」なんて聞かれたりしながらまた記念撮影。いやいや、DOAはガチな勝負はないけど、こう言うセレブな大人が多様な楽しみ方をしていてどんどん面白くなってきているなあ。
 グループとはそこで別れ、ソロで淡々と進む。トラブルと言えば、RC-7の距離センサーをサスの根元に両面テープで固定してあったのが、振動により接着がはがれて距離表示が突然動かなくなったこと。ラリーメーターとマップの距離が全然合ってないのに気づき焦ったが、しかしこんなのはタイラップで再固定してすぐに回復した。センサーコードがホイールに絡んでちぎれなくて良かった。その後もコース的には特に難所とかなく順調に進み、何台かを抜いている内に早めのゴール。DOAに参加し始めの頃は、一日200キロ以上というルートを走るのが結構きつく感じたが、 SSERの一日400キロ以上という本格的なラリーを経験してからは楽に感じる。先にふじゃ君がゴールしていたので早く風呂に入ろうや、という事で早々に宿に直行する。隣接の温泉でゆっくり温まり、喉が渇いたところで二人宴会に突入だ。お待ちかねのビールで乾杯。氷点下に近いキャンプ場で震えながら野営している人たち、ほんとにご苦労様です。ラリーに来たというより、単なる温泉ツーリングに来たくらいの気楽な旅でした。

  

   

「二日目」
 夕べはビバーク地お馴染みの夜のケータリングサービスはコロナ対策の為中止、寒空の中ではジャズライブもあったらしいが、見ているのは数人だけの寂しいライブだったらしい。野営した人たちの話では、寒くて寝られなかったとのこと。宿とっといて良かった。今日は一日目とは逆のゼッケン順となり、早めのスタートだ。雲一つない絶好のツーリング日和で、朝から富士山がくっきりと見え、スタートを見送ってくれる。
 しかし、標高が上がるにつれどんどん気温が下がり、車載温度計は6度。こんな時に限ってグリップヒーターが何故か故障して効かない。新車の純正部品なのになんでやねん!指がちぎれそうに痛い。頭まで痛くなってきてやる気が失せ、リタイヤすることも頭をよぎったが、予備で持ってきたグローブを重ねてはめてなんとか急場をしのぐ。しかし、2枚重ねだとレバー操作がうまくいかない。途中、拳大の石が転がるガレ場に差し掛かったが、まるで抑えが効かず、転びそうになる。
 しかしここでテネレ700の弱点が一気に出た。とにかくサスのスプリングが固くてガレ場の石を一つひとつ全部拾ってハンドルに伝えるので二重に疲れる。グリップ感が失せるので、スタンディングで重心を下げて振動を膝で吸収してごまかして何とか走破したが、これは要改善ポイントだ。ヨーロッパの大柄な人向けに作ったのか、スプリングをもっとプログレッシブに動く柔らかめのものに換えないと。
  一つ目のCPが近づく。ここは見覚えのあるところだ。土手を下りて川を渡った中州の様な素敵な場所なのだが、ここは野宿会と言う集まりで野宿をする「聖地」とされているところだ。野宿会の会長さんはいわゆるユーチューバーで、通算1500日も世界中で野宿を経験したと言う仙人みたいな人だが、その野宿スタイルに憧れたファンも多くいて、会長さんがテントを貼った所のちょうど真上にテントを貼りたいと熱望する信者もいる程。その聖地とされている野宿ポイントが今回のCPとして使われていた。と言う事で、参加者は川渡りに喜々として挑戦し、派手な水しぶきを上げて渡る。聖地とされている中州は、140人以上のエントラントが歩き回り、タイヤ痕と足跡だらけとなる運命に。野宿会では、野宿地にタイヤ痕をつけるのは禁止とされているだけに、後日ここを訪れた野宿会会長さんは卒倒するかも知れないな(笑)。

  

 二日目のハイライトは去年と同じ高峰林道縦走だった。ヌタチュルだらけだし、先行した4輪組がぐちゃぐちゃに踏み荒らした泥まみれのギャップを慎重に走る。こう言う比較的フラットでガレの少ないダートではテネレ700は俄然走りやすく感じる。切り返しが速く、フロントも軽いので、ヌタチュルで足をすくわれる事が少なく、どんどんペースが上がり、ここでかなりの先行者を抜かさせて頂く。と、こんな風に楽しんでいるうちに最後のCPに到着するが、前から3番目の到着だったらしい。
 あとは山を下りて岡谷市内を走る。途中遅い昼飯を食ってから一般道をパスして高速道路で帰ることに。そして14時半頃ゴール。二百数十キロ走ったが、なんかあっという間に終わっちゃったなあ。

「最後に」
 今回の旅のお供のテネレ700くん。こいつ、高速道路は得意で遠出は快適だし、かなりのヌタチュル悪路もタイヤさえちゃんとしたオフタイヤを履けば250トレール並みに走破するし、一般道法定速度内での低回転クルーズもぎくしゃくする事なく楽にこなす。さすがに重量は200キロあるしシート高も高いので、足付きの悪い林道でグラっとくれば立ちごけする懸念材料もあるが、それさえ何とかなれば、下りのⅠ字のシングル林道で行き止まりになったりしても、そう重くないのでボクみたいな還暦過ぎのじいさんでも一人で方向転換できるし、ソロ林道ツーリングでもなんとか生きて帰れそうだ。
 あと、後日談となるが、ショックの減衰力調整でリアサスの動きが随分と改善され、ガれ場でもすごく乗りやすくなった(とはいえ、フロントはスプリングがまだ固すぎだが)事も報告しておく。ということで、テネレ700は、現在のボクにとってはベストな選択だったと思う。フルサイズのアドベンバイクが重く感じるようになった人には是非。あと、あのオレンジ色のメーカーのカマキリ顔が許せない人にもお勧めのバイクですよ。