14th TBI参戦記


 こんにちは、今回は私のビッグオフロードクラブ
参加1周年を記念しまして参加してきた、14thTBI
の参戦記を齊藤が執筆いたします。
 今回、初めてSSERのイベントに参加いたしまし
たが、非常に楽しく全行程1週間を終えることがで
きました。順位の話をすると72台中52位で完走と
いうぱっとしないものでしたが、昨年のサンドワー
クスの反省を踏まえて今回の目標とした「壊さない・
怪我しない・飛ばない」という“3ないテーマ”は達成
できたので、まぁ良しとします。また、今参戦により
自分の課題が明確になったので、レベルアップのた
めのテーマを実感できました。この辺については本
文で述べたいと思います。

   DAY−0 〜 やっぱりラリーは家を出てから始まって・・・
 4月28日AM5時、愛犬ANDYに約一週間の別れを告げ、横浜の我が家を後に。(奥さんは興味ないらしくまだ寝てるし・・・)数分後、忘れ物を取りに我が家へ。気を取り直して、AM5時30分出発。(やっぱり奥さんは寝てる)
 家を出て15分も走れば、東名横浜町田ICから西行を開始。本日はGW初日の前の日だから、道もそれほど混んでなくオンロードタイヤのアドベンチャーは淡々と距離が伸びる。
 昼頃には、名古屋を越えて大津SAに到着。ここまでの道中でSSER参加自走車両には出くわしていない。昨今のSSERは高年齢化が進んでいると聞いていたが、高年齢化の波に呑まれてアンチ自走組の勢力が拡大しているのだろうか?それとも、中部地区以東からの参加者が少ないのか?などと考えていると、バカミーセントラルチームの濱田氏と木下氏がSAに飛び込んできた。このお二方はツールドニッポン経験者であり、昨年秋(9月)の定例ツーリングに参加してくれており、またその他のイベントでも何度かお会いしたことのある方なので、休憩がてらしばし談笑。
 小一時間休憩後、3人そろって大津を発ち、お二方は山陽道→しまなみ海道経由で四国入り&前日泊という、理想的な計画。一方私は、本日神戸尼崎のKTMディーラー“インパラ”でタイヤ交換後フェリーにて翌朝四国入りという計画のため、吹田で別れ一路尼崎へ。
 小一時間走ったら、無事に“インパラ”さんに到着。この店の店主は、昨年950でSSERのイベントに参加経験のある方で、以前この方のライドした950が美馬のモトクロスコースで豪快にジャンプしている動画を見たことがある。インパラでは、タイヤ交換加えて、道中抜けかけたフロントパイプ(前の方からアフターファイヤーの音がしてたし・・・)スプロケの変更など行い、準備万端で大阪南港に早着。かるーく4時間くらい待って船は出発。GW入りということもあり、船内はロビーや廊下で寝る人がかなり多く、まるで難民船(驚)。船内を徘徊しても、これだけの難民の中に埋もれて参加者の区別が付かない状態なので、さっさと寝ることにする。

 4月29日、早朝四国着でスタート地点に向かう。途中コンビニで朝食休憩していると、夏に開催される北京toモンゴルに参加するという人が、友達の応援に行くから後ろついて行っていい?というので、快諾し先導するが、松田さんからいただいた「は○しー2世」の称号どおり、いきなりミスコースするも、後続のスペシャリストがSSER臭をかぎ分けてオンコースに誘導してくれたおかげで、無事会場着。この先思いやられます...(注:「は○しー」とは、ミスコースを繰り返し人の二倍近い距離を走っているにもかかわらず、オンタイムで戻ってくるor人並みのタイムで戻ってくると言う様子を表現している by 松田)

   DAY−1 〜 初日は気を引き締めて!!! 
 会場着でまずは一服。あまり人もいないし、車検にはまだ時間があるし、さてどうしたらいいもんか?と途方に暮れていたのですが、こんな時はチームメイトともあきさんに連絡。「おはようございます。齊藤です。今着きましたよぉ」「おふぁよ〜ぅ、もうちょっと寝るねぇ・・・」「ツ〜、ツ〜、ツ〜、・・・・」ともあきさんは、まだお休みのようなので頼りにならないので、早めに車検準備。(最初からそうしてりゃよかったんだけど、初めてのことって不安ですね。)
 無事車検を終えコマ図を受け取り、コマ図張りに精を出す。周りを見渡すと、徐々に人が増えてきて、コマ図貼りをする人も増えてきます。風が強くてコマ図が飛ばされる人や、テーブルごと飛ばされる人も・・・そんな人たちを横目に自分も、貼り貼り、貼り貼り、ハリハリハリハリハリ!!!!(怒) 6日分あるもんだから、いくらは貼っても減っていかないですよ(唖)(ブリーフィングまでの間、貼りまくってましたが、途中疲れて顔見知りと猥談・・・じゃなかった談笑)
 参加者を見回すと、やはりKTMが結構多い。アフリカは1台。ダカールは3台。GSはOHVが2台にR259が1台。あとは軽いオフ車が沢山あってXR以外はよくわかんない。一つ言えることは、いわゆる猛者は一部なのかな?ということだけは感じ取れました。この状況なら、総合で真ん中あたりに入れたら大成功かなぁ。などと、夢を見出す自分・・・。

  

 ブリーフィング終了後、ゼッケン順に出発で、自分は37番目。ブリーフィングで、最初のコマ図の変更について説明があったのだが、スタートラインにたった時点でも意味がわかっていないので、最初は人影を頼りに行く作戦。ちなみに、ブリーフィング時の話では、「この変更を理解できないようでは、毎日ミスコースで迷いますよ〜」(参加者大爆笑!) 笑えない自分が妙に孤独感を感じてしまいました・・・ (だって「は○しー2世」の称号が・・・)案の定、二つ目のカーブで迷子(唖)
 何となく進んでいくと、前の方にライダーの影を視認したので、ついて行く作戦決行!!!が、作戦失敗!!!案の定ミスコース。そういえば、松田さんが「人の後をついて行くとミスコースするよ〜」って言ってた。その通りです!ミスコースです!!人についていこうなんて甘い考えしていた自分が悪いんです!!!心を改め、ICOの距離を修正して、セルフナビゲーション開始すると、驚くように(いや当たり前なんですが)オンコースの連続で、今大会最初のSSへ。
 SS1に着く頃、なぜか腹痛。思い当たるのは、キャメルバックを新品から一度も洗わずに使っていた。初めのうちはなんだか薬のような味がしていたような???。運良く、SS1入り口にはトイレがあり、暑いわけでもないのに大汗掻きながら3度ほどトイレに駆け込んだ。本日の愛車の愛称は「アド便」に決定。(すまん我が愛車よ・・・)
 時間は無情にも過ぎ去り、自分の番がきて、早くトイレに行きたいから早くゴールしたいという思いだけで、SS1終了。(乙)
 その後は人里離れたコースを延々と走るので、お漏らしを覚悟で我慢して走る走る走る。不思議と走っていると便をもよおさないもので、すぐに次のSS2に到着、さっさとトイレに駆け込みたいのとキャンプ地で薬を貰いたい思いで、空気圧など調整せずにそのままコースイン。SS2は途中に分岐があって、自分は当たり前のようにミスコース。ミスコースする直前に一人抜いたんだけど、私に抜かれたその人もつられてミスコース。気を取り直して、トイレに行くべくコース修正し、無事SSゴール。SSゴールの頃には辺りは暗くなっていて、その辺にでもしてしまおうかという気分になるが、そこはスポーツマンシップに則って先を急ぐことにする。
 山を降りていくと、3台ほど道の真ん中で止まっている様子。なにやら話を聞くと、バイク音がうるさくて苦情が出ているようで、道の半ばで制止されたらしい。たしかにSS2終わってから、所々民家の横を通り抜けてきていて、この先はさらに民家がありそうな様子。これまで走っていった人たちが、わざとうるさくしたとは思えないのですが、シングルエンジンのオフロードバイクが何十台も暗くなってから走ればうるさいと苦情がでるよ・・・で、結局これ以降にきた車両はエンジンを切って押していくことに・・・
 軽いのはいいよなぁ、緩やかではありますが上り坂が続いていて、燃料半分以上残っているアド便号ではとてつもない重労働です。後ろから、SSER代表の山田さんが押してくれたのですが、その現場ではトラブル対処の先頭に立つべき人だったので、「大丈夫です!」とやせ我慢で断ったものの、50mほど押したところで休憩、その後は休憩するインターバルがどんどん短くなって逆比例で休憩時間が長くなっていくという定石通り。なんでこうなるの?こんなところを暗くなってから何台ものバイクが走れば、苦情の一つも出るでしょ?ちゃんと住民に許可とってるの?などと、苛立ちながらも、押す押す押す!!!
 とその時、苛立ちをさらに助長する出来事が!!! 「大丈夫〜」という声が前の方から聞こえたと思うと、か弱い(本当か?)ギャルズに白馬に乗った助っ人参上!!! この紳士は、住民の苦情に対し真っ先に「普通にツーリングしてるだけです」って言い放っていた強者で、なんと答えて良いのかわからない自分には“頼れる男”みたいに移っていたのだけれども、ギャルのバイクをせっせと押しあがり、ギャルズ&ヤサ男たちはあっさりと視界の外へ・・・(唖)「おまえ“普通”のツーリングだったら、俺のことも助けてくれてるだろ〜?」と小声で叫ぶしかなく、現実にはやっぱり上り坂が残っていて、はぁ〜〜〜〜〜〜。
 とりあえず、初日からSSERの洗礼を受け、魔の押し地獄を体験後、下界へ降りたら、便をもよおして、コンビニトイレに直行。コンビニ出たら、涼しそうな顔をしたエントラントが「どうしたの?そんなに汗を掻いて。」と待ってましたといわんばかりの質問に、「いやぁ、苦情出ておしてたんですよ」というと、こやつは「あ〜良かった、デカイので来なくて」と勝ち誇って立ち去っていくじゃありませんか。(なにに勝ち誇っているんだか、理解不能。)
 この時、「こいつとヤサ男だけは許すまい!!!」と心に誓って、キャンプ地に向かった。(後で聞いた話では、コンビニ男はラリー経験豊富らしいが、その発言からはそんな事はまったく想像できないくらい幼稚なオーラを感じた。)
 到着後、ともあきさんが出迎えてくれ、今日あったことをいろいろはなし、こういう態勢での運営を決行するといづれは住民からの通報で警察による“TBIエントラント狩り”が行われないか不安になったので、ともあきさんに不安をぶつけてみたところ、「捕まらないように走るのも大切だよ。周りの人が早いからといって自分のペースを乱さないで、普段のツーリングのときと同じように走ればいいんだよ。別にMAXオーバーしたっていいじゃない、命がかかっている訳じゃないんだし。」という返事だった。 この言葉を聞いて落ち着いた。そうだよなぁ、TBIで捕まって自分の人生が変わってしまうのもアホらしいよなぁ。と冷静に考えると興奮も収まり、おかげで、睡眠はしっかり取れた。(ともあきさんナイスアドバイスでした)

 

   DAY−2 〜 順調な滑り出し・快晴〜
 一夜空けて、自分の設定した起床時間は4時。携帯のバイブで目を覚ます。本部に張ってあるリザルトを確認すると、真ん中くらい。ミスコースしたのは自分だけではないようで、むしろ大多数がミスしたみたいで、タイムに大きな開きは見て取れない。
 TBIの朝は初体験なので、黙々と準備をすると意外と時間に余裕がうまれ、今日はどうしようか?温泉でもないかな?と、ともあきさんと相談しているうちに、時間が過ぎてブリーフィング開始。ブリーフィングで聞き逃してはまずいので、前のほうに行きたかったが、悠長に時間をすごしたおかげでいい場所がとれずに、後ろのほう・・・。案の定、山田さんの声は低くて聞き取りずらい。前に行かない自分が悪いので、聞き取れなかったことは周りの人に確認するが、恥ずかしいので明日からはもっと前で聞けるように場所取りをしようと反省。
 今日からは、前日までの総合順位のとおりにスタートなので、先頭に比べて約20分遅れのスタートをする。で、恒例のミスコースをこなして(朝は頭が働いていないのか、ミスコースしやすいように思う)。程なくしてSS3突入。ここでもやっぱりパンクしたくないので、空気圧F2.0・R1.9キープ。フロントが高いのは、今までリムを2セット歪ませて駄目にしているので、安全策。正直、私のレベルは、空気圧の違いを感じ取れるレベルではないので、トラブル回避が最優先。SSを終えると皆さん空気圧を調整しているが、私は目視で全体をチェックしたらすぐにスタート。こうやって、リエゾンを稼ぐことにする。

 この日もDAY−1に引き続き天気がよく、ダートを走っていると軽く汗をかく程度で、SS後、ゼッケン1菅原会長の後をつかず離れずで行くが、結構ペースがよくて簡単には抜けそうもないので、抜かずに行くことにする。ところが会長が後ろを気にしだしたので、なんか煽っているみたいなのもいやだし、抜くに抜けないし、もう一台前につまっているようだし、適当に休憩。(会長ごめんなさいm(_ _)m、悪気はなかったのです)。
 その後は、四万十川に沿って淡々と走り、初体験の沈下橋を渡って林道に突入し、少し走ったらSS4の開設待ちの集団に追いつき、日没を待ってから当初の予定より6キロ長くなって全長18キロとなったSSをスタートした。
 SSを走っているうちに日が完全に暮れ、周りの木々の影響もあると思うが半分くらい走った頃には真っ暗になり、また少し雨が降っていた。この暗闇と雨に慣れていないライダーを一台抜いて、また一台抜いて、長いもんだからミスコースしてないか不安になっているうちに、後方から追い上げる爆走軍団に虫けらのように抜かれ・・・。でも、おかげさまで2スト臭を頼りにゴールに無事たどり着いた。ゴールには空気圧調整中のともあきさんがいたので、そこからはランデブーで本日のキャンプ地に向った。(途中ビールを買って)
 夜キャンプ地に到着してから雨がポツポツと降ってきた。雨の中、一日を思い起こしていると、走りながら何のために自分は走っているのか分からなくなっていたことを思い出した。「コマ図に導かれ、淡々とルートを消化する毎日。時にはタイトなタイム設定で先を急ぎ、急いでいるうちに時間の余裕が出来て、結局チェックポイント前で時間調整。自分がしたかったのはこんなことだったのだろうか?」と、走りながら考えていた。つまり、TBIを走ること自体に迷いを感じながら、走っていたわけで、今回の全日程の中で一番辛い日だったと思う。そういう、感傷的になった自分を忘れさせてくれたのが、一緒に走った仲間であったと思う。特に励ましあったというわけではなかったが、この日のこういう感情を乗り越えられたのは、リエゾン中、時折一緒に走ったともあきさんや若林さん(ダカール)たちがいたからだと思った。この二日目が、精神的に一番辛い日だった。

   DAY−3 〜 「TBI名物」というにはやさしい雨
 今日は朝から雨。肩が水に使った状態で目覚め、寝起きは最悪。あ〜ぁ、と思いながらテント片付けてぇ、ウェアを着てぇ、ブリーフィング出てぇ・・・と、まだTBI2日目の朝なのに、なんの緊張感もなくルーティーン作業。昨日と違うのは雨だけで、それ以外は“今までどおり”といった感覚で物事が進んでいく。こんなもんなのかなぁ、とバイクに跨り、今日も先頭から約20分遅れでスタート。おかしい、非日常を求めて四国くんだりまでやってきたのに・・・。
 そんな思いは、この日はずっと続き、雨or霧の中を淡々と走る。一応、DAY−3は観光日というインフォメーションであったが、こんな天気じゃ観光も何もあったもんじゃない。案の定、楽しみにしていた四国カルストは霧に覆われ、先頭を走っていた自分は文字通り先導役。幸い。こんな霧の日にカルストに来る物好きなどいるはずも無く、対向車とすれ違うこともなく走り抜けたが、なんだかなぁ。
 そういえば、この日は大事件があった。SS5を何事もなくいつもどおり空気圧パンパンで走り終え、チェックポイントを締め切り時間の15分前に通過すると、「その先で一台がけ落ちしているバイクがあるから」との情報をいただく。じゃぁ、気をつけて探しながら走ろうかねと先頭を行くと、いましたいました、橋の手前に数台のバイクが止まっています。どうやらここが現場のようで、先についている人に聞いてみると、橋の下に落っこちているらしいのです。
 で下を覗くと、「えっ?!」10mくらいあるじゃん!横から木の枝が張り出してはいるものの、バイクも人も真っ逆さまに落下したに違いない。のだけれども、ライダーは無傷。バイクは?で数名が下に降りているので、上から見学していると、エンジンがかかって、バイクが動いて、数本のロープがかかって、6人くらいの人が群がって、バイクがさらに動き出して・・・。あれよあれよという間に、バイクは林間を押し上げられ、最後は高さ2m弱の石垣をロープで引っ張りあげられ、走行可能状態に!(最後の引き上げは手伝った)こんなもんなんですねぇ。で、上から見ていた感想としては、まるでアリが自分の体よりも大きな餌を協力して運んでいるようでした。不謹慎だったかな?
 私のバイクも去年の秋のサンドワークスの時はにはあんな状態で引っ張られていたのかなぁ。と、懐かしくなったりして、今更ながらに、その時の皆さんに改めて感謝。で、その場を立ち去ろうと出発したのだけれども、タイミングが良かったのか悪かったのか、しばらくの間自分を先頭に後ろに10台くらいが追走。いやぁ、気持ちいいのなんのって、「俺についてコイ!!!」みたいな?やみつきになりそう・・・(ウフッ!)
 その後、いつの間にか分かれて、私が先導役を勤める集団の台数は4台くらい?で、雨&夜のSSに到着。看板を見ると「久万町」の記載があり、聞いたことのある地名なのだけど、雨だし暗いしでやっぱり観光とかいう気分じゃない。SS直前で止まって雨をやり過ごそうとするが、いっこうに止みそうもなく、次々とSSインしていくので、自分も今までどおり空気圧の調整なしでSSイン。バイザーを上げて、目に入る雨も気合で走行。ま、転ばず・ミスコースせず走りきったのでOK。

 

 その後は後続の仲間を待ち、徒党を組んでキャンプ地へ急ぐことにするが、雨&夜の林道はまだまだ長く、先頭を行くとコーナーの先が予想できずに怖いのなんのって・・・。でも、だんだんコツを掴んできて、カーブ出口でリヤを滑らせるとフレームマウントのハイビームが行き先を照らしてくれて、心の準備ができることに気がついたら、後は宿に向かってゴーーー!!リヤタイヤをガシガシ削りながら、宿へと急ぐ。林道を抜けたら雨も弱くなってきて、ペースも上がって、本日のビパークである暖かいコテージ着。
 宿の乾燥室はすでに到着しているエントラントのウェアで満杯で、まるでスチームサウナ状態(悪臭付)でも、無理やり自分の分も掛けて、タイヤ交換の準備に入る。ここまで3日間、タイヤをいたわらずに滑らせたまま走った結果、リヤタイヤはボロボロになり中央部のブロックはあと数ミリとサイド部新品という状態。予定通りに、3日目でタイヤ交換し残りの日程に備える。しかし、家までの自走を考えると、走り方を変えないといけないので、周りのアドバイザーが言っているように、明日以降は低い回転数でのトラクション走法にトライだ。
 明日への反省はさておき、今日は妙にテンションが高い。雨&夜のリエゾンでリアを滑らせながら光軸を振っての走りに非常に満足したため、現時点の実力ではあの走りはいわゆる“ライディングハイ”だったのだろう。そのまま舗装リエゾンもタイヤのことなんか無視した高回転キープで走り抜けてしまった。その興奮を宿にまで持ち込んでしまったため、普段から口数が少ないほうではないことは自覚しているが、いつも以上に口数も多く笑顔も5割り増しのようで、仲間との会話も今日の反省をすればさらにテンションが上がり、「分かりやすいやつだなぁ」と言われる始末。おまけで、ピンクナンバーで参加のピンクギャルとも会話が弾み、ともあき氏と3人でプチ合コン気分を満喫してから眠りについた。

   DAY−4 〜 Road to MIMA
 今日は、夜に美馬のSSを控えている。聞くところによると、毎回ビッグには鬼門となるSSらしく、以前は明け方まで走っていたなんてこともあったらしいし、「コーヒーセットでも持って入ろうかな」なんて声も聞こえる。で、残り3日はICOも壊れているし、ともあきさんのコバンザメ(金魚の糞!?)として生き延びる。(ともあきさん、ほんとに助かりました)
 こうなると、自分が能動的に走っていないので、記憶があいまいとなってくる。はっきりと覚えていることは、この日は天気が良くて、海沿いのチェックポイントでは今日が観光日?と疑いたくなるような素晴らしい景色が広がっていて、コマ図に誘導されて走っている自分には今どの辺にいるのか分からないのが残念。しかし、TBI慣れしたともあきさんのリエゾン移動は、容赦なく先へ・・・(このへんは、流石といったところだ) この時は、そんなに急がなくてもと思ったが、時間が経って今思うに、1日をトータルでコーディネイトすると最善の選択だったと思う。この点は、ともあきさんの後ろをついて走った3日間の大きな収穫だ。後になってこういうことに気づくのだが、このときは必死についていくことだけが最優先で、文字通り必死(爆)。
 次のチェックポイントの前に時間調整のためのコンビニ休憩をとる。ともあきさんは、コンビニで飯を食うことはあまり好きじゃないような様子だが、私は結構コンビニ好きで、北海道にいた頃も休憩といえばコンビニ、イカシタ店に入るのは人数がいるときだけで、コンビニ休憩がデフォルトなので、かえって落ち着いたりする。コンビニ休憩すると、現地ならではの食い物にありつけないのが難点なのだが、その分にできた時間の余裕をどこかにまわせる。これも一つの考え方で、次回はコンビニメインでプラニングしてみようかと・・・(さすがに昼食1週間コンビニは、飽きるだろうけど)。
 で、サクサクとコマを進めていくと、ISDEでシルバーゲット&最近では“モタードライダー”の前田氏と遭遇し、しばしの間ランデブー。舗装区間だったためか、氏もマッタリと走行している。予断だが、氏は私と同級生。後で聞いたのだが、オフロードに乗り出して、1年で初ISDE参戦するも初回は惨敗、二度目はそのたぐい稀なるライディングセンスで見事シルバーゲットに相成ったらしい。いつか私も・・・(嘘)。
 話がそれたが、前田氏とのランデブーは何てこともないのだけれど、なんだかうれしい一時だった。快晴なのに真っ黒のKTMウェアに身を包み、真っ白のヘルメットの首元からなびかせているKTMオレンジのスカーフがカッコいい。少年の頃テレビで見るヒーローを見ているような感覚で彼に見とれてしまいました。小一時間ランデブーしたら彼は、4stのブロロロ〜〜〜んという音共に、視界の遥かかなたへ・・・。
 リエゾンをサクサク行ったら、峠の駐車場で休憩しているKTM400(前田氏)とKTM950ADVを発見。そのブルーメタリックのKTMは今年夏の北京ーウランバートル参加車両でテストを兼ねてTBI参戦中らしく、ワンオフのアルミサブタンクがリアで輝いている。そこで、ちょこっと休憩を入れていると、先を急ぐビッグが2台。ダカールと100GS(43Lタンク)だ。この二人とはTBIを通して仲良くさせてもらっていたので、急いで追いかけることにした。が、追いつかないよ・・・。速いはずで、ダカールはインターナショナルクラス優勝だし、GSもその走りは猛者と呼ぶにふさわしい走り。(今回、ともあきさんに加えこのお二方も私のライディングアドバイザーとして、数々の助言をしていただきました)
 駐車場から先は、ダートが始まっておりそんな二人に追いつくのは無茶な話で、追いついたときには休憩中・・・。小休止の間、1台のセロー(かな?)に先行されるが、他は我々より後ろにいるはずなので、先を急ぐ。先を急ぐのには理由があって、今日の最後のSSは美馬のモトクロスコースで、前日の雨の影響で路面状況が悪化していることが予想され、「なるべく早く着いて路面がさらに悪化する前に抜けよう」(byともあき氏)という作戦。なるほど・・・。
 で、セローをパスして美馬に着いたら、ともあきさんを含めた3名の先輩方曰く、“若い者順で!”とありがたいお言葉を頂き、私が先頭でチェックイン。今日は空が明るいうちにビパークに着いた。動かないICOとコースでは不要のマップを外し、しばし仮眠をとることにする。で、軽い眠りにつくと自分を呼ぶともあきさんの声が、いつの間にか時間が経っていてスタート直前時間だ。急いで準備して、スタート位置までパリダカ男の池町氏の先導で移動。なんせ、自分が最初のコースインなので、ミスコースの不安がよぎる。その不安そうな顔を見て、池町氏も不安になったのか、「ロープを良く見れば大丈夫だから」と声を掛けてくれた。
 “イヤだ”と言っても、スタートしなきゃいかんので、スタートすると、いきなり下の見えない(暗くなっていてライトが照らしていない)下りがあるようで、ソロソロと進んだつもりなんだけど(周りから見たら勢いよく飛び出したらしい)そのまま、落差1mのたいしたことのない下りの先にあるヌタ岩場にフロントを取られて転倒!後で聞いたのだが、このとき観客のカメラのフラッシュは最高潮に・・・(恥)。大リーグ並みだったとか・・・。気を取り直して再スタートすると、思ったより走れる路面で以外に転倒回数は少ない。延べ10回もしてないのではなかろうか?かるーく、いい汗を掻いたくらいでSS終了。
 100GS(43Lタンク付)の方の前を走っていることが多く、氏曰く、「君が僕の目の前で転んでくれるから、路面の状況が良く分かったよ、ありがとう(笑)」と・・・いい案内役になったようです。で、意外と大変じゃなかったなぁという感想だったのですが、案の定、翌朝のSSはグレードアップすることに・・・
 なにはともあれ、今日は非常に気分よく走れたので、仲間はみんなテンションが高かった。しかし、残念なことに日々のハードなスケジュールで体力を消耗気味であったノリさんは、ヌタのSS中にも体力を消耗し、最後の林間のゴール直前でケガをしてしまい、無念のリタイヤとなった。こればっかしは自分の判断なので仕方ないが、氏にはぜひ再度TBIを攻略してもらいたいと思う。きっと今回は悔しい思いをしたからこそ、次回、完走後の爽快な気分を味わえることだろうと思う。

   DAY−5 〜 聖地美馬、本領発揮!
 昨日のプチヌタ美馬から一夜明けて事件は起こった・・・。夜のコース設定が甘かったらしく、一部のエントラントから「えっ?もう終わったの?」とかいった、朝のコース走行への期待をうかがわせる言葉があったらしく、コースアレンジャー池町氏のオフィシャル魂に火をつけてしまった、おかげさまでコースのほかに“シングルトラック5キロ延長”の知らせ・・・。
 “シングルトラック”ってなに?なんて思っていると、やはり困難な方向に向かっているようで、こっちにとっては迷惑な話らしい。私が雑誌などでたまに見るシングルトラックとは、ようするに林間コースのことで、けっしてアドベン号では入っていかない獣道を意味していると思っていた。で、そんなところを走れと?

 

 ま、こういう機会でもないと走らないし、はまったら助けてくれるオフィシャルもいるのだから、まぁ経験しとくかということで昨夜のコースで落とした順番に従いスタートする。SS前半で使用するコースは昨夜の闇夜のコースとはうって変わって、比較的走りやすい路面で昨夜のことが嘘のように無転倒で進んでいく。このまま行けばこれ以上順番を落とさずに済むか?と期待したが、ギャラリー前の上から見ても結構急な登りをコースをエスケープを利用せずに難なく超え(バイクに助けられたね)、延長された“シングルトラック”に入ったら、やっぱり獣道!いわゆる“クロスカントリー”だし!!
 で、オフィシャルが待ち構えているところでは、ことごとくはまってしまい、オフィシャルの(というか、今回のコースアレンジャー池町氏の)思う壺といったところでしょうか?獣道の経験が無いとは言えひどいもんでしたよ。雑誌などでたまに目にするような“ゲロ”という程ではないのですが、林間コースなので乾燥することは無く雑草も生い茂っていて滑りやすい、道沿いに走っても横から小枝がバシバシ体をたたくし、尾根沿いに走るもんだから道を外れるとどこに行ってしまうのやら?
 でもって、一つ目の難関はバイク二台が通るのは困難なくらいの木と木の間をシケインを避けながら上らなきゃいけなくって、二つ目の難関は斜度30度くらいでいかにも滑りそうに落ち葉が引きつめられている登り坂で、幅は広いのだけどちょうど中央に浅い溝が出来ていて、これに沿ってバイクの向きを修正しなくちゃいけなくって・・・三つ目はカウルが無ければなんてことの無いはずの倒木(ちょうど目の高さ)避け。四つ目は道の真ん中を遮る丸太・・・
 三つ目・四つ目は自力でクリアしたけれど、一つ目はオフィシャルが押しながら、二つ目は4度目のトライでクリア直前までたどり着き、やっとオフィシャルの手助けを得て脱出。散々ですね・・・次回までにはこういうところを自力で人並みにクリアできるようにならないといけないなぁ。
 二つ目の難関には、北日本自動車学校の学生さんたちと池町さんなどの力あふれる若い面々が待ち構えていて、学生さんたちはさすがにきつそうだったなぁ。ともあきさんの時もキレていたみたいだけど、私のときもキレてましたよ。ほんとすんません、迷惑かけて(to 学生さんたち)。池町さんはさすがというか、ヒョウヒョウとエントラントのバイクを引っくり返したり、坂の途中から再スタートのところまで運んだり(エンジン切ったまま急坂を降りるのも難しいですよね)。私も一度運んでもらって、その時お話をしたんですが、
 池「コースどうだった?」
 私「ビッグのみんなも苦労せずに走ってたみたいですよ。最後の急な登りも意外とクリアできたし」
 池「そやろ。ああいうところは見た目ほどはまらんよな」「で、ここ(目の前の急坂)どう?」
 私「林間というのも初体験で、歯が立たないです。けど、サポートがあるのは願っても無いチャンスですよね。」
 池「そやなぁ」
で、ニコニコしながらまたヘルプに行ってしまった。こんなちょっとの会話でしたが、彼の人柄を肌で感じれて非常にうれしかったです。このときから彼のファンになりました。ちなみに、二台の100GS(OHV)は私の後から来て、池町さんの「BM行くよ〜(重いの来たぜ〜。学生さんたち、引き上げよろしく〜)」の掛け声を跳ね除けて、二台とも一発でクリア!恐るべしGS!!!
 余談ではあるが、OHVのGSには計り知れないポテンシャルが秘められているようで、今回のような滑りやすい路面を淡々と登っていく様を、各地で目撃されているらしい。誤解の無いように付け加えておくが、今回の二台のライダーは二人とも“巧い”!!!(松田さん、今ホットなのはGSですよ!!!きっと来年はGSがわんさか!!!)で、脱出したのは1時間以上後。(あ〜ぁ〜、溜)
 でも、ともあきさんたちは待っていてくれて(ともあきさん、本当にありがとう)、結局、美馬出発は10:30、我々の他には片手で足りるくらいしかエントラントは残っていない。こうなってくると、CP−1の開設時間が気になる。待っていてくれて、タイムオーバーだけはご勘弁!若林さんにいたってはクラス優勝がかかっているのに、よく待っていたと思う。その余裕、どこから来るのか?それとも、これまでの我々の舗装リエゾンのペースから間に合う自身があったのだろうか?自分がその立場だったら待てなかったかもしれない。
 その後、渋滞するリエゾンを無事に抜け、閉鎖時間12:30のところ11:50にチェックを受けれた。さぁ、次のチェックポイントは15:30まで、ここで、ともあき一行には次なる欲望が・・・。
 そう、飯or風呂という、日常の生活では当たり前なこの行為が、この一週間の非日常な生活では“この上ない贅沢!”に思えてくる。すると道端に“ヴィラ穴吹”施設がぁっ!!なんと風呂付レストラン付ではないですか!!!ということで早速ともあき一行は入浴タイム。\(^ ^)\、で、“先に出た者が一番早く出てくる食事を注文しとく”というみごとな連係プレーをかまし、“きのこ丼”にありつく様。う〜ん、朝の美馬はなんだったんだろう?

  

 その後、文字通り朝の美馬での出来事が嘘のようにサクサクとリエゾンを消化し、夕方のSSに日のあるうちに到着。このビパーク直前のSSを終え、後は“酒を買って帰るのみ”と、うきうき気分でコマを進めるも、行けども行けども自販機が現れず、後から来た濱田さん他数名を巻き添えにしてゴールの目の前でプチミーティング。そして、ゴールを通り過ぎて自販機を探しに行くことに・・・
 無事、酒もゲットで今度こそウキウキでゴールすると、“ペナルティーだよ”の言葉がオフィシャルから発せられた。明日の朝にならないと裁定が降りないが、逆走とみなされているようで、最悪は1時間のペナルティー。1時間は深刻で、順位が重要な人や合計タイム10時間オーバー(失格)の恐れがある人など、個人個人の事情がある。私はというと美馬の結果からブロンズの夢が経たれ、後は完走だけが結果として残るので1時間つこうがかまわないから気にしてないのだが、人によっては複雑で、仲間のために祈るしかなかった。
 で、通称“酒ペナ”を気にしながらも夕飯を終え、本日から発生しているフロントフォークオイル漏れの修正にと、いろいろな人からのアドバイスを伺った結果、自分の工具だけではどうにもならなそうなので、前出のISDEシルバーメダリスト前田氏に相談を持ち込む。実は前田氏はKTM広島の代表で、当然整備もバッチリ!!いい方法が無いかと相談したつもりだったが、結局代表自らの手で掃除をしてくれて、応急処置はあっさり終了。「これで駄目なら、禁断のサンドペーパー作戦しかないな」と思いながら、前田さんに感謝すると共に、自分はこの瞬間から前田氏のファンとなった。その後、“ペナルティー1時間(かもしれない)”と、引き換えの“ビール350ml”を大事に飲み干し、明日に備えて熟睡することにした。

   DAY−6 〜 最終日も淡々と
 起床4時、起きて気になったのは昨晩の“酒ペナ”の件だ。人によってはタイムオーバーの危険や優勝争いへの影響など、仲間のことなので真っ先に掲示板を見に行くと、“注意”としてゼッケンが張り出されているだけで、ペナルティーとはどこにも書いてない。ライト不点灯やチェックポイント不通過はペナルティがあるが、運よく自分たちはノーペナ。大喜びでテントに戻るが周りは起きてこないので、いそいそと片付け始めると、そのうちともあきさんが起きてきたので第一声はもちろん「ノーペナ!注意だって!」続いて、若林さんにも同じことを告げるとほんとに喜んでいる。自分のことのようにうれしい。ブリーフィングで山田さん曰く、「憲法記念日だから・・・」とのこと、フゥーン。

 

 スタート順が下がった自分は今日は先頭から30分後くらいのスタートで、のんびり準備をしているとなんだかあわただしい人たちが数名。どうやら、レギュレーション上の携帯品チェックをやっているらしく、預けた荷物から取り出したりしている。自分の場合は、本当に遭難する可能性が皆無ではないので、きっちり携帯品を持っているため、まったくあわてることなくスタートを待つ。抜き打ちチェックのおかげで若干スタートが前後しているようだが、自分の予定時刻は変わらずにスタート。すでにICOが駄目なので、ノーマルの区間距離でコマ図を進めると、すぐにSSスタート地点に着く。今日のSSは昨日通ったリエゾンの逆走らしいが、漫然と走っている自分にはだからといって何の影響も無い。最終日も手を抜かずに行くのみだ。
 最後のSSは空気圧を下げたままだったので、パンクが心配だったのだが、“激しくかつソフトタッチなグリップで!!!”というコンセプトを打ち立ててみる。何のことだか分からないだろうが、最後だし持てる実力でハードに攻めたいのだけれども先輩方のアドバイスどおりに低回転できちんとグリップさせるのも忘れないように!、みたいなイメージを汲み取って欲しい・・・で、気持ちよく数台を抜いて(まぁ、皆さん最後だから安全に走っていたようで)ゴール。このSSは珍しく空気圧を落として走ってみたのだが、やっぱり違いが分からなかったが、後で確認したところ今回の全SS中で一番いい順位だった。まぁ、最後だからセーフティで走りぬけた人もいるだろうから、その順番だけでは判断できないが、一週間を通してレベルアップしたような気分だった。
 ゴール後、人込みを避けて先へ進むと若林さんがいたので合流。景色に目を向けると視線の先に広がる満天の雲海!!!SS中ずっと登ってきたが、凄い標高差だったようだ。その雲海を見て「あ〜、自分はこういうのが見たくてツーリングを始めたんだっけかなぁ」と、昔を思い出した。
 今大会最後のSSも終わり、あとはチェックポイントの時間だけを気にしながら、リエゾンを行くのみ。最後のリエゾンくらいは、ゆっくり走りながら四国の景色を記憶に焼き付けよう。澄み切った空気を吸い、あおくなりかけた山肌や川に掲げられたこいのぼりの群れを楽しみながら、先へと進んでいくとチェックポイントのオフィシャルとエントラントの大群が駐車スペースに止まっている。コマ図で確認するとまだ予定のチェックポイントには程遠い。どうやら、予定のコースがガケ崩れで通行不能らしく回避ルートの準備をしていたらしい。

 

 結局、みんなでエマージェンシーマップを開封し(ここでやっと自分のいる場所が分かった)、回避ルートの説明を受け、また淡白に進む。一度せき止められたエントラントの波が一度に大群で開放されたので、相当台数のツーリング集団のようだ。しかも、一週間の慣れからかみんな結構飛ばす。その勢いで市街地に突入しそうだったので、私の脳裏には初日の忌まわしい事件がよぎった。あの時の、住民の本当に怒っている顔はトラウマとなっている。昼間だから、同じ状況になるとは思えないが、もともと大群で走ることが嫌いな自分はアクセルを緩めた。
 回避ルートからオンコースに復帰してからは先頭をともあきさんにバトンタッチ。その後、先頭車両のともあきさんが何度かミスコースまがいを繰り返す。4日目は漫然と追走していただけだったが、5日目と今日は自分もノーマルメーターで区間距離とコマ図と現実の一致をチェックしながら走っている。おかげで、ともあきさんのミスコースは未遂で防げた。きっと、二匹の子分を従えながらリエゾンプランを組み立てて走るということは、それだけストレスが溜まっていくのだと思う。何度もしつこいが、ともあきさん本当にありがとう。ちょっと早いけどお疲れ様、いつかこのご恩はお返しします。
 最後のチェックを無事通過し、重量級車にはやさしくないツヅラ折れの細い道をインターナショナルクラス優勝をほぼ手中に収めたダカールに続いて下り、後続を待ってからコンボイで食事にありついた。
 食後、自分は皆と別れて大好きなコンビニ休憩。時間があるので景色を見ながらしまなみ街道を楽しみながらたらたら走っていると、時間はあっという間に過ぎてマキシマムタイムが気になる時間帯になってきたので、最後の最後は若林さんの言う“ハングオン”でゴールに向ってまっしぐら。途中記念撮影しているともあきさんたちを止まれずに追い越して、無事ゴール。
 ゴール後、さわやかな風の吹くなか、子供の頃に過ごした田舎の夕刻のようなゆったりとした時間が過ぎ、いろいろな思いを巡らせながら時を過ごして、あたりが暗くなった頃、閉会のセレモニーが始まった。まずは、ツールドブルーアイランド賞の授与、受賞者はあの橋から転落した方で、次に主要なクラス優勝、インターナショナルクラスは長い間一緒に走ったダカールの若林さんだ。彼はよく私の後ろから追走して走りのアドバイスをしてくれていて、そんな仲間が表彰されて本当にうれしい。
 その後は総合優勝から順々に表彰されていく。今回からファンになった前田さんは2位で私もなぜか悔しい。たんたんと表彰されていっているようだが、傍観していて思ったのは、30位くらいまでは個別に表彰され一瞬ではあるが表彰台の主役として輝いて見える。不本意な人も、誇らしげな人も、無表情な人も、みんな受賞&コメントの一瞬は主役なのである。で、30番以降はバラバラと・・・。次回は、一瞬でも主役になってみたいと感じた。

   〜最後に〜
<今回の残念なこと>
1.目標・目的がはっきりしないまま終わったこと(初めてだから仕方ないかな)
2.ノーマルメーターがあるのに、コバンザメ走行を選んでしまったこと(“易きに流れ”て
  はいけないね)
3.住民の苦情が出たこと(自分だけの問題ではないのだけれども残念なことに思う)

<今回の良かったこと>
1.何はともあれ、“完走”の二文字
2.毎日十分な睡眠時間(最低でも3時間強、ほぼ毎日5時間弱)が取れたこと。
3.中盤までは、ブロンズメダルの夢が見れたこと。
4.雨&夜でも意外に普通に走れたこと。
5.そして何よりも、一週間走り抜いて仲間と呼べるような仲間が出来たこと。
番外.やせた・・・ V(^ ^)V

 もう一つ、インターナショナルクラスチャンプが私のライディングについて面白い分析をしてくれたので、それに対する自分の所見と共に記す。
チャンプ(チ)「YOUのハングオンは、高校時代に峠で膝摩っていた頃のなごりでしょ?」
所見(所):高校時代はバイク乗ってないし・・・。でも、20代前半の頃ツーリングバイクでタイヤの端っこを使うにはどうしたらいいか試行錯誤していた頃に身に着けたスタイルは、フロント乗りで回頭してアクセルを早めに開けるというものだった。
(チ)「北海道出身ということは、スキーできるよね。だから林道でもスピードに対する順応が早いんだね」
(所):そうかも。アスリート系の領域ではなかったけれども、「周りに自分より早いのはいない」なんて言う、“井の中の蛙”をやっていたくらい、スピード狂だった。うーん、あながち外れてないと思う。チャンプするどい!

   〜追記〜
 楽しい一週間だったことに間違いは無い。のだけれども、何かが足りない気がする。それは完走という結果はあれども数字で表されている結果なのか?一週間という割にはいつの間にか終わってしまったからなのか?その理由がわからない。ただ思うことは、今回仲間として一緒に走ってきたエントラントたちを観察して、そのTBIに対するスタンスはまさに十人十色。だけれども、自分にとってのTBIとはなんだったのか良く分からない。エントリー用紙を出した頃は“旅”の延長という捉え方だったような気がするが、参加直前は“それなりの結果を”という淡い期待を抱いたりもしたし、始まって自分の順位が毎日張り出されるうちにその数字が具体的になってきたり、いつの間にかツーリング気分を忘れてリエゾンは消化試合みたいになって・・・。
 何がしたかったんだろう?と、疑問を抱きながら後半に突入していた。結果として「初めてだから、何が何だか分からないうちに終わるよ。」という松田さんの予言どおりになったような気がする。ただ今回のTBIには満足していないということは分かる。もしかしたら、“もっとハードでやっとのことで完走するくらいのほうが満足感は高かったのかもしれないな”と、ふと思ったりもするのだが、もうちょっとハードってどれくらい?今回よりちょっとハードにしたらリタイヤしたかもしれない。なんにせよ、次に出るであろうTBIは必ずブロンズ以上をゲットして一瞬でもいいからあの表彰台で主役になってみたいと感じて私のTBIは幕を降ろした。
 さて、自分はこの先何を求めて何に満足していくのだろうか?きっと、ともあきさんが自身のHPで述べているように、TBIは私にもいつか爽快な満足感を与えてくれるだろうことを期待したい。

           

  
HPレポート編集者より

 一部の写真は、F650GDで参加していたともあきさんにおわけして頂き、ありがとうございました。ともあきさんのレポートは、ご自身のホームページ及び、次期発売の「BMW BIKES」でもご覧になれますので、そちらも合わせて、お楽しみ下さい。