(ふ〜、今日はなんや疲れましたなぁ)
そう思いながら帳簿をめくっていると、襖の向こうから声がかかる。
『秋斉さん、ちょっといいですか?』
『どうぞ』
と声をかけると、襖が開いて○○はんが顔を出す。嬉しく思っている自分を隠して声をかける、
『○○はん、どないしはりました?』
私の前に正座すると、○○はんがまっすぐに私を見つめる。
(この子はほんまにえぇ目をしとる。)
そんなことを考えていると、○○はんがとんでもないことを言い出した。
『私、太夫をめざします。』
私は思いがけない言葉にギョッとしてしまう。
『突然どないしはりましたんや?』
平静を装ってそう言うと、○○はんはまっすぐ私を見つめたまま続ける、
『置屋の…秋斉さんのお力になりたいんです。』
(ほんまに…人の気もしらんと…)
『太夫になったら客をとらなあきまへんえ?』
私の言葉に○○はんが俯く。私は○○はんの顎を持ち上げて言う、
『太夫はあきまへん。私以外に触れさせとぉありまへん。』
私の言葉に○○はんの顔が赤くなる。
(ほんまに可愛いお人や…私をこんな気持ちにさすんやから)
そんなことを思いながら私は○○はんの唇に優しく口づけをしたのだった。