久しぶりに置屋のお仕事にお休みをもらって、買い物をする為に京の町を歩いていた。
(色々見てまわったから、ちょっと疲れちゃったな…まだ買いたい物もあるし、お茶でも飲んで休憩しようかな。)
そう思って茶店を探してあたりを見回していると、後ろから声をかけられる。
『おい』
驚いて振り向くと、浅葱の羽織をまとった土方さんが立っていた。
声の主が土方さんだったことに安心して、私は笑顔になってしまう。
『土方さんこんにちは、今日は見回りですか?』
『あぁ、京の治安をまもるのが俺達の仕事だからな。』
『いつもご苦労様です。』
私がぺこりと頭をさげると、土方さんはちょっと驚いた顔をした後クスッと笑って私の頭にポンと手をのせる
『お前は変わった奴だな。…京の人間で俺達にご苦労様なんて言う奴ははじめてだ。』
そう言って、少し嬉しそうな顔で微笑む土方さんにドキドキしてしまう。
(土方さん、こんなに優しい顔で笑うんだ…)
私がこっそりドキドキしていると、頭に置いた手をおろし土方さんがいつもの表情に戻って言う
『ところで、お前はこんな所で何してたんだ?何かを探してたみたいだが、迷子にでもなったのか?』
『違いますよ!』
迷子という言葉にちょっとムッとしながらも、私は買い物に来ていることと、茶店で休憩しようと思っていた事を説明した。
『なるほどな…それならば少し先に、団子が美味いと評判の茶店があるが、どうする?』
『行ってみたいです。』
私が即答すると、土方さんがふっと表情を和らげて歩き出した。
さっさと歩き出した土方さんに私が戸惑っていると、数歩先で土方さんが振り返る。
『もたもたしてると置いて行くぞ。』
ぶっきらぼうにそう言うと、また歩き出す。
『わわっ!待ってください。』
私は慌てて土方さんを追いかけると、土方さんの斜め後ろを着いて歩く。
(土方さんってちょっと怖いけど優しいな…)
そう思って黙って歩く土方さんの横顔を盗み見すると、急にこっちを向いた土方さんと目が合った。
『なんだ?』
『あ…えっと…まさか連れて行ってくださるとは思ってなかったので…』
急に目が合って、私があたふたしながら答えると、土方さんはまた黙って前を向く。
急に目が合って、私があたふたしながら答えると、土方さんはまた黙って前を向く。
しばらく歩いていると、土方さんが前を向いたままぶっきらぼうに言う。
『お前は目を離すとすぐどこかに行っちまいそうだからな…まぁ見回りついでだ…』
驚いて土方さんを見ると、耳が少し赤い。
そんな土方さんが可愛く思えて、私の口元はついつい緩んでしまう。
そうこうしているうちに、土方さんの言う茶店に到着する。
『ここだ。』
さすがに評判の店だけあって、茶店は混み合っている。
『わぁ〜賑やかですね。きっと本当に美味しいんですね。』
私は思わず笑顔になる。
その様子を見て土方さんは、少しだけ笑みをうかべたかと思うと
『じゃあな』
と言って行ってしまいそうになる。
土方さんを引き止めようとしたその時、茶店の中から私の名前を呼ぶ声がした。
『○○〜』
その声に、土方さんも足を止めて振り返る。
茶店を見渡すと、隅の席から慶喜さんがニコニコしながら手を振っている。
『慶喜さん!』
驚いて声をあげると、慶喜さんが嬉しそうに私のそばにやって来る。
『奇遇だね。○○もお団子を食べに来たのかい?』
『はい…買い物途中で、ちょっと休憩しようかと思って。』
『そうか、混んでいるから私の席に一緒に座るといいよ。』
そう言って、自然に私の手をとる慶喜さん。
すると、見回りに戻ろうとしていた土方さんがいつの間にか私の横に来ていて、
『慶喜さん。○○は私と一緒に来てますので』
そう言って土方さんが私の肩を抱いて引き寄せる。
びっくりして土方さんの顔を見上げると、不機嫌そうに眉間にシワを寄せている。
土方さんの登場に、ちょっと驚いた様子の慶喜さんだったが、すぐに笑顔に戻ると
『土方くんも一緒にどうぞ』
そう言って、不機嫌な土方さんのことなど気にせずに私の手を引いて席に座らせると、人数分のお茶とお団子を注文する。
それを見た土方さんもしぶしぶといった様子で席に着く。
右に慶喜さん、左に土方さん。慣れない状況におろおしてしまう。
『○○に偶然会えるなんて嬉しいな』
そう言って笑う慶喜さんはとても色っぽくて、私は思わず赤くなる。
すると、土方さんが小さく舌打ちする。
(土方さん、なんかどんどん機嫌が悪くなってる気がする…)
『土方さんとも先ほど偶然お会いしたんです。茶店を探していた時に声をかけていただいて、こちらのお店は土方さんに連れて来ていただいたんです。ね。』
ちょっとでも機嫌をなおしてほしくて、私は土方さんに笑顔を向けるけれど、土方さんは
『あぁ。』
と、答えただけでまだ眉間にシワを寄せている。
『ふ〜ん。じゃあ土方くんには感謝しないとね。○○を私のいる茶店に連れて来てくれたんだから。』
そう言って慶喜さんが優しい手つきで私の髪をなでる。その手つきにドキドキしていると土方さんの握った拳に力が入った。
そこにお団子が運ばれて来て私はちょっとホッとする。
『わぁ〜美味しそうですね』
お皿にはみたらし団子とあんこのかかったお団子がのせられている。
それぞれ串を手にとってお団子を食べ始める。
『美味しいですね』
そう言って土方さんに笑顔を向けると、土方さんの頬にみたらし団子のタレがついてしまっている。
気づかずに食べている土方さんが可愛くてクスっと笑うと、土方さんが怪訝そうにこちらを向く。
『なんだ?』
『土方さんついてますよ。』
そう言って、私は無意識に手を伸ばしタレを指で拭ってペロリと舐めた。
すると、土方さんがみるみる真っ赤になっていく。
『…っ。お前!』
真っ赤になった土方さんを見て、私も気がついて真っ赤になってうつむいてしまう。
その様子を見ていた慶喜さんが、ぐいっと私を引き寄せて頬をペロリと舐めた。
その行動を見て土方さんがガタッと立ち上がる。
『○○も頬にあんこがついていたよ。○○は可愛いな。』
慶喜さんの行動に私はさらに赤くなってしまう。
イタズラっぽく笑う慶喜さんと不機嫌そうな土方さんに挟まれて、私はうつむいてお茶を飲むしかないのだった。