私がいたたまれない気持ちでお茶を飲んでいると、茶店の外がにわかに騒がしくなる。
『まったく土方さんどこに行っちまったんだよ。』
『本当ですね、いつも時間には厳しい方なのに…』
聞こえてきたのは、新選組の原田さんと沖田さんのやりとりだ。
(そういえば土方さん、見回りの途中だった…)
そう思って、ちらりと土方さんを見ると新選組副長の顔に戻っていた。
『騒がしい奴らに見つかる前に戻るとするか…』
そう言って立ち上がると、土方さんは茶店の出口に向かう。
私は慌ててその背中に声をかけた。
『あの、土方さん。お忙しいのにすみませんでした。…ありがとうございました。』
お礼を行って頭を下げると、振り返った土方さんが一瞬だけ笑みを浮かべてすぐに歩き出す。
『迷子になるなよ』
そう言って茶店を出て行ってしまう。
土方さんの一瞬の笑顔があまりにもキレイで私はドキドキしてしまった。
土方さんが行ってしまうと慶喜さんが私の耳元で言う。
『やっと○○と二人になれて嬉しいな』
耳をくすぐるような吐息まじりの声に、私は顔を赤くしながら慶喜さんを軽く睨む。
『もう!慶喜さん!からかわないでください。』
そう言って頬を膨らませると、慶喜さんは楽しそうにクスクス笑う。
『ごめんごめん。でも私は本当のことしか言わないよ。恐い保護者もいなくなったし、今からは○○と二人きりだからね』
私は慶喜さんの言葉につい吹き出してしまう。
『慶喜さんたら、恐い保護者だなんて言うと、土方さんに怒られてしまいますよ』
私の笑顔を見て、慶喜さんも笑う。
『○○はこの後どこに行くつもりだったんだい?』
『そうですね、あとは紅を買いに行こうかと思ってました。』
私がそう言うと、慶喜さんが立ち上がる。
『じゃあ行こうか。私が○○に似合う紅を選んであげよう』
そう言って二人で茶店を出ると、慶喜さんは私の肩を抱いて歩き出す。
私は近くに感じる慶喜さんの温もりにドキドキしてしまう。
二人で紅を選んでから、散歩がてらに歩いていると小さな神社を見つけてお参りする。
神社の境内に並んで腰掛けると、慶喜さんがさっき選んだ物とは別の紅を取り出して私の手にのせる。
『これは?』
私が不思議に思ってたずねると、慶喜さんが優しく微笑む
『それは私と会う時専用の紅だよ…貸してごらん。』
そう言って、紅を少し指にとると私の唇に優しくのせていく。
間近になった慶喜さんの顔にドキドキしてしまって、私は思わず目を閉じる。
『ほら、できた』
慶喜さんの声に目をあけると、慶喜さんが優しく微笑んでいる。
『やっぱりよく似合う』
そう言って満足そうに笑う慶喜さん。
私は恥ずかしくなって俯いてしまう。
私が俯いていると、慶喜さんが肩を抱いて耳元でささやいた
『○○、その紅をつけたところも、さっきみたいな無防備な顔も、私以外に見せてはいけないよ…いいね』
私は赤くなって頷くと、慶喜さんの肩に寄り添ったのでした。