私がいたたまれない気持ちでお茶を飲んでいると、茶店の入口から秋斉さんが顔をのぞかせた。
秋斉さんはキョロキョロと茶店を見渡して、慶喜さんを見つけると呆れた顔をして近寄って来る。
『慶喜はん、みつけましたえ』
秋斉さんの声に慶喜さんがギクリとする。
『今日は大事な話があるから、置屋に来て頂くようお願いしとったはずですが』
秋斉さんから静かだけど、うむを言わせない迫力が伝わってくる。
秋斉さんの様子を見て、慶喜さんがしぶしぶ立ち上がる。
『せっかく○○と会えたのに…ごめんね○○、行かないといけないみたいだ…。この続きはまた今度ね』
そう言って私の手をとると、甲に軽く口づけする。
真っ赤になった私に色っぽく微笑むと、秋斉さんに引きずられるようにして慶喜さんは行ってしまった。
慶喜さんが出て行くと、今度は土方さんが私の手をとって立ち上がる。
私は突然のことにびっくりして、土方さんの顔を見上げるけれど、入口を背にしているせいで、表情が見えない。
『行くぞ』
そう言って、私の手を引いて店をでると、そのままぐんぐん歩いていく。
『あ…あの…土方さん?』
引きずられるように歩きながら、土方さんに声をかけるけど、土方さんは前を向いたまま答えてくれない。
(どうしたんだろう?…こんな土方さん初めてだよ…怒ってるのとはちょっと違うけど…)
しばらくして土方さんが立ち止まる。
あたりを見回すと町はずれの河原に来ていた。
『あの…土方さん?』
私がもう一度声をかけると、握った手を強く引かれて私は土方さんの腕の中におさまっていた。
信じられない状況に、鼓動が早くなる。
『土方さん…』
小さな声で呼びかけると、抱きしめていた腕がほどかれる。
土方さんは私に背を向けてしまう。
『すまん…』
背を向けたまま土方さんが言う。
『…慶喜さんに触れられるお前を見て、我慢ならなかった』
(それって…やきもちってこと?)
土方さんの言葉に頬がじんわり熱くなる。
土方さんは相変わらず背を向けたままだけど、耳が真っ赤になっている。
私は嬉しくなって土方さんの腕に飛びついて言う。
『またお団子食べに行きましょうね。今度は二人きりで…』
土方さんはちょっと驚いた顔をした後にいつもの顔に戻って
『仕方ねぇな』
と言って薄く笑うのでした。