*お月見*
今日は中秋の名月。
大きく丸い月のおかげで
影が出来るほど夜道が明るい。
「すごい綺麗だね」
「そうだな」
私は翔太くんと歩いていた。
翔太くんが坂本さんと
揚屋に来てくれて
少し座敷で話をした後に
お月見をしておいでと言われた。
坂本さんも一緒にと誘ったけど
まだ飲み足りないと言って
来てくれなかった。
「(まさかわざと…)」
翔太くんと2人きりなのは
嬉しいんだけれど
どこか気恥ずかしくて
そんなことを考えてしまった。
「○○?」
黙っている私に
翔太くんがふと振り返る。
「あ、ごめん」
「何か考えごと?」
「ううん」
私は首を横に振る。
急に翔太くんが
私の手を取って歩き出す。
「しょ、翔太くん?」
返事はなくて
早足でどんどん進んで行く。
町の外れまで行き着いてから
翔太くんは足を止めた。
「翔太くん…?」
小さく声をかけると
握られた手に力が入った。
「…?」
「俺と居るときは俺のことだけ考えて欲しいんだ…」
言われたことを理解して
ドキッとする。
「私がボーッとしてたから?」
「……うん」
私はクスッと笑って
「さっきは翔太くんと2人きりで嬉しいけど恥ずかしいなって思ってたんだよ?」
翔太くんの顔を見る。
「………」
耳まで真っ赤にしている。
「俺、馬鹿みたいだな」
「そんなことないよ、嬉しい」
私が笑顔になると
翔太くんも口元を緩めて…
月明かりに浮かぶ
2人の影が人知れず重なった。