風邪でお稽古をやすんでしまった。
ひとりで部屋で横になっていると、寂しくて心細くなってくる。
眠ろうと目を閉じても、寝つけずに寝返りを繰り返していた。
その時突然部屋の襖が開く。
『よう』
軽い挨拶と共に現れたのは、高杉さんだった。
『た、高杉さん!』
高杉さんは、驚く私をよそに枕元に腰をおろすと私の額に手をあてる。
『ちょっと熱いな』
『高杉さんの手、冷たくて気持ちがいいです。』
ひんやりと心地よい手のひらにほっとすると、高杉さんがニヤリと笑う。
『そうか…じゃあ』
そう言って今度は襟元へと指を滑らす。
『ちょっと!高杉さんどこ触ってるんですか!』
私は慌てて布団を引き上げる。
『そう膨れるな、お前がそんなに潤んだ目で見るのが、悪い。』
高杉さんは、そう言って楽しそうに笑っている。
『もう!これは熱のせいです!…こんな時までからかうなんてヒドイです…』
そう言って私は布団を頭までかぶって、高杉さんに背を向けた。
『おい、そんなにすねるなよ…そうだ、見舞い持ってきてやったぞ』
そう言って高杉さんはゴソゴソと何かを取り出した。
私がこっそり布団から頭を出して、高杉さんの手元を覗きこむと、高杉さんは器用な手つきでミカンを向いていた。
『ミカンですか?』
私がそう言うと、高杉さんは剥き終わったミカンを一房私の口元に持ってくる。
『貰いもんだけどな。ほら、口開けろ。』
『自分で食べられますよ…』
恥ずかしくて顔を背けると、身を乗り出して私の口にミカンを押し付ける。
『いいから早く食え。』
そう言われて、口を開けるとミカンを放り込まれる。
噛むと甘い果汁が口に広がる。
『美味しい』
そう言うと、高杉さんも嬉しそうに笑う。
結局ミカン全部を高杉さんが食べさせてくれた。
『ごちそうさまでした。でも、高杉さんは食べなくて良かったんですか?』
私がそう言うと、高杉さんが私の唇に触れるだけの口づけをした。
突然の出来事に真っ赤になった私を見てニヤリと笑う。
『俺はこれで十分…じゃ、早く元気になれよ』
高杉さんはそう言って帰って行った。
残された私は熱くなった頬にますます熱が上がるのを感じるのだった。