*お出かけ*土方side
俺の朝は早い。
夜明けとともに
起床して日課をこなす。
散歩。剣術の稽古。
俳句や読書。
ひとり暮らしをはじめて
台所仕事にも随分と慣れてきた。
未来ってのはすごいもんだ。
例えば、炊飯器…。
米を炊くのがどうも苦手だった
俺でも簡単に米が炊ける。
味噌汁なんて湯を沸かして
混ぜるだけで出来る。
なにより…
沢庵が袋詰めされて
店に並んでいるのには驚いた。
様々な種類の漬物もある。
あいつがあのとき作った
沢庵の握り飯。
本当に美味かった。
今日は久しぶりに○○に会える。
総司たちも一緒なのが
気に食わねぇが…
○○の顔が見れるなら悪くない。
携帯電話とやらの使い方を
教わった時のあいつは
いつものガキっぽさとは違って
知的で愛らしかった…。
電話の帳簿を開き
○○の名前を見つめる。
こいつで文のやり取りまで
出来ると言ってたな。
「教わっときゃあよかった…」
いつもと変わらない朝なのに
時間が長く感じる。
何をしても落ち着かない
俺の視線はふと炊飯器に向いた。
「………折角出かけるんだから、昼飯を作って行ってやろう」
俺はいくつも握り飯を作った。
あいつほど上手くはないが
試衛館でも屯所でも
男所帯でやってきたから
お手の物だ。
握り飯を作り終えて
時計を見ると
思ったほど針は進んでない。
「………」
「もう無理だ…散歩しながら行きゃあなんとかなるよな…」
………
こうして俺は
3時間も早く待ち合わせ場所に
到着することになった。
居ても立ってもいられず
○○に何度も電話してるのに
全く応答がない。
知らず知らず身体からは
怒りと苛立ちが湧き出てくる。
「まさか…総司の奴が
あいつに何か悪さしてるんじゃ」
くそ…
迎えに行けばよかった。
そんなとき
人混みの中に○○を見つけた。
俺の方に近づいてきて
○○が口を開く。
「お待たせしました!!電話出れなくてすみません!!電車の中にいたか…」
俺は○○が喋り終わる前に
声を上げてしまった。
「電話というものは、会話して初めて意味があるもんじゃねぇのか!?なぜ出ない!!」
「えっと…」
○○が身体を震わせる。
総司たちになだめられ
自分の大人げなさにはっとする。
「…ったく…」
「あれ…それどうしたんですか!?」
○○が俺が手に持っている
袋に気づいた。
「もしかして作ってくれたんですか!?」
「………」
握り飯のことなんて
すっかり忘れてしまっていた。
「土方さんも楽しみだったんですね!!」
総司に冷やかされて
頭にカッと血が昇るのを感じた。
「おい総司!!」
俺の振り上げた手を
するりと交わし総司が笑う。
「あははは、いいじゃないですか、お腹空きましたし、今日は天気もいいですし、どこかで土方さんのおにぎりをいただきましょう」
○○の幼なじみも
「へぇ意外なところあるんだな!!」
と、笑っていた。
ふんとそっぽを向いた
俺に○○がそっと
「ありがとうございます」
と、囁いた。
それだけで飯が
一杯食えそうだった。