今日は慶喜さんと一緒に紅葉を見に来ていた。
京の町から少し離れた山の中を慶喜さんと手をつないで二人で歩く。
『慶喜さん、今日は連れて来てくださってありがとうございます。』
私が笑顔で言うと、慶喜さんも優しい笑顔を見せてくれる。
『この近くに温泉があってね。たまに来るんだけど、そこの露天風呂から見る紅葉がとっても綺麗なんだ。○○にも見せてあげたいな』
『そうなんですね。素敵ですね、紅葉を見ながら入れるお風呂なんて…』
私は、その露天風呂の光景を思い浮かべてうっとりする。
すると慶喜さんは、つないでいた手を引いて、今度は私の肩を抱く。
私は急に近づいた慶喜さんとの距離に、ドキドキしてしまう。
『じゃあ今から温泉に行こうか。』
『えぇっ!今からだと、帰りが遅くなってしまいますよ…』
突然の提案に驚くと、慶喜さんがにっこり笑って言う、
『大丈夫、だって帰るのは明日だからね。』
『あの、それって…温泉に泊まるってことですか?』
『うん』
当然のように頷く慶喜さんを見て、私は慌ててしまう。
『で、でも…秋斉さんに泊まるだなんて言ってこなかったし…』
小さな声でそう言うと、慶喜さんは笑って言う、
『秋斉には私から話してあるから大丈夫』
そこで、私の耳に口を寄せると、
『今日は○○を帰さないってね』
と囁いた。
その言葉に、私は真っ赤になって俯いてしまう。
真っ赤になった私を見て、慶喜さんがクスクス笑う。
結局そのまま私は慶喜さんに連れられて、温泉にむかうのだった。
夕方になって温泉に着いた私達は静かな離れの部屋に通される。
『○○疲れてない?』
部屋に二人になると、慶喜さんが優しく聞いてくれる。
『だ、大丈夫です。』
緊張のあまり声がうわずってしまう。
慶喜さんと二人きりなのは、お座敷でもよくあることなのに泊まりだと思うと、ドキドキしてしまう。
私の緊張した様子を見て、慶喜さんが優しく頭を撫でながら言う、
『先に温泉に浸かってくるといいよ。山道を歩いて疲れただろうからね。』
慶喜さんの優しさに少し緊張が緩む。
『はい…』
私は小さく頷いてお風呂へ向かった。
離れには専用の温泉が付いていて、温泉からは山の綺麗な紅葉を眺めることができた。
お湯に浸かって手足をゆっくりのばす。
『気持ちいいな〜、それにこんなに綺麗な景色独り占めなんて、凄く贅沢…』
そう呟くといた時、外の茂みがガサガサと音を立てる
(何?…)
思わず体を固くして身構える。
相変わらず茂みがガサガサと揺れて、音はだんだん近づいてくる。
(猿?…熊だったらどうしよう…)
音が間近に迫った時に、私は思わず悲鳴をあげてしまう。
『キャー』
悲鳴と同時に慶喜さんがかけこんでくる。
『○○!』
『慶喜さん!』
慶喜さんはかばうように私を抱きしめる。私も慶喜さんにすがりつくように抱きついてしまう。
音の正体は狸だった。
『○○大丈夫だよ。ほら、狸だから』
慶喜さんの声に顔を上げると、可愛らしい狸が驚いたようにこちらを見ていた。
その姿にほっとすると、自分の状況に気がつきまた悲鳴をあげる。
『きゃあっ!』
私は慌てて慶喜さんから離れてお湯に浸かる。
(恥ずかしい…)
『あの…見ました?』
私が恐る恐る尋ねると、慶喜さんが少し顔を赤らめてつぶやく、
『少しだけ…』
私は恥ずかしさのあまり、慶喜さんに背を向ける。
『あの…ごめんなさい。悲鳴をあげたりして…熊かと思って…』
私がそう言うと、背後で着物を脱ぐ音がしたかと思うと慶喜さんがお湯に入ってくる。
『け、慶喜さん!』
私が驚いて声を上げると、慶喜さんは笑いながら言う。
『また、熊が来たら大変だからね。大丈夫、○○には触れないよ…一緒に紅葉を楽しもう。』
慶喜さんは言葉の通り、私に触れずに湯に浸かっている。
(触れないって言っても、一緒の温泉に入ってるなんて…それだけではずかしいのに…)
背中に慶喜さんの視線を感じてドキドキしてしまう。
『綺麗だね』
慶喜さんがぽつりとつぶやく。
『えっ?あっ、そうですね…山が燃えているようですね…』
私がそう言うと、慶喜さんがクスクス笑うって言う、
『違うよ、確かに紅葉も綺麗だけど、私が言っているのは○○のことだからね』
その言葉に私は真っ赤になる。
(ダメだ…このままじゃのぼせちゃう…)
『あの、慶喜さん…私、先にあがりますので、ちょっと目を閉じていただけますか?』
『いいよ』
私はチラリと後ろを見て、慶喜さんが目を閉じているのを確認してから足早に脱衣場に向かう。
脱衣場に入って、少しだけ戸を開けて慶喜さんに
『慶喜さん、もう目を開けていただいて大丈夫です。』
と、声をかけて戸を閉める。
(はぁ〜、ドキドキした)
私は急いで体を拭いて浴衣を着ると、そそくさと部屋に戻る。
部屋には夕食が用意されていて、私は思わず笑顔になってしまう。
(美味しそう)
そう思いながら、ふと隣の部屋を見ると布団が敷かれていて枕が2つ並べてある。
ドキドキと心臓が音を立てる。
私はとりあえず襖を閉めて、見なかったことにする。
落ち着こうと深呼吸していると、後ろから慶喜さんに声をかけられる。
『何してるの?』
驚いて振り向くと、少し着くずした浴衣姿の慶喜さんが不思議そうな顔をして立っている。
その姿が色っぽくて、私はまたドキドキしてしまう。
『な。なんでもありません…夕食をいただきましょうか。』
ごまかすようにそう言ってお膳の前に座る。
二人で夕食を楽しんだ後、縁側に並んで腰掛けながら庭を眺める。
慶喜さんはちびちびと日本酒を飲みながら、私の髪の毛を弄ぶ。
時折首筋に触れる慶喜さんの指がくすぐったくて首をすくめると、慶喜さんがおかしそうにクスクス笑う。
『もう、慶喜さん。くすぐったいですよ』
そう言って、少し睨むように慶喜さんの方を向くと、とても優しい目をした慶喜さんが私を見つめている。
思わずその表情に見とれていると、慶喜さんの胸に抱き寄せられる。
『○○』
優しい声で名前を呼ばれて胸が苦しくなる。
私がそっと慶喜さんの背中に手を回すと、慶喜さん私の額に口づけする。
『○○大好きだよ』
慶喜さんの告白に赤くなりながらも
『私も…』
と答えると、慶喜さんに上を向かされる
『○○、紅葉みたいに真っ赤だね』
そう言いながら、軽く口づけられる。
私が恥ずかしさに、慶喜さんの胸に顔をうずめると、慶喜さんに抱き上げられる。
そのまま布団の上に下ろされる。
『いいね?』
慶喜さんの言葉に真っ赤になってちいさくうなづくと、甘い口づけをされる。
そのまま布団に倒されると慶喜さんが甘く囁く
『愛してるよ…』
私はその言葉にこたえるように、慶喜さんに身をゆだねたのだった。