*仔犬*

慶喜さんの
お座敷に呼ばれた。

「失礼します」
ゆっくりと襖を開ける。

すぐ慶喜さんと目が合って
頬が緩むのがわかる。

慶喜さんも優しく微笑む。

「く〜ん…」

不思議な声か音に驚いて
辺りを見渡す。

「ふふ、○○、ここだよ」
「……?」

慶喜さんの懐から
仔犬がひょこっと顔を出した。

「わ…可愛い」
「道端に捨てられていてね、どうにも可愛い声で鳴くものだから、連れてきてしまった」

慶喜さんから
仔犬を受け取って抱き上げた。

「く〜ん、く〜ん…」

仔犬はペロペロと
私の唇や頬を舐めはじめた。

「わ、くすぐったい」
「………」

慶喜さんが
私をじっと見ている。

「名前は、決まっ、てるん、ですか?…もう…」

仔犬はまだ私の顔を舐める。
すると慶喜さんが私から
ひょいっと仔犬を奪い取った。

「こら、俺の愛しい○○をあんまり舐めるんじゃない」
「仔犬に嫉妬してるんですか?」

私はくすりと笑った。

「俺が我慢してるのに仔犬はいいなんて不公平だろう?」
「………!!」

顔が火照る。
慶喜さんは仔犬を
座布団の上にそっと乗せて
私の正面に座り直す。

「○○…」

すっと慶喜さんが私の手を取り
手の甲に口づけされる。
そのままペロリと舐められた。

「…慶喜さんっ…」
「砂糖菓子みたいに甘いね」

今度は、口元まで手が引かれて
掌に唇が押し当てられる。

「………」
「いい匂いがする…」

掌に吐息を感じて
身体が一気に熱を帯びる。

どうしたらいいかわからず
宙を舞う視線を
慶喜さんに戻した瞬間。

ぐっと引き寄せられて
私は慶喜さんに倒れ込んだ。

「すみませ…わっ…」

謝る間もなく身体が回転させられ
慶喜さんが私を見下ろす。

「…………」
「仔犬も○○が美味しそうに見えたのかな、気持ちはすごくわかるんだけど…妬けるよね」

悪戯っぽく笑う慶喜さんは
顔を近づけてきて
まず唇をペロリを舐めた。
それから頬や顎。
首筋には長い指が焦れったく
触れそうで触れない。

唇が戻ってきて重なる。
少し強引で深い口づけだった。

「んん……」
一瞬唇が離れた。
「○○、もう我慢できない」
慶喜さんの瞳の熱は
いつもにも増して艶かしい。

私は慶喜さんの首に手を回し
「おまかせします…」
と、小さな声で呟いた。

すぐ激しく強く奪われる唇。
頭の芯が痺れる。
身体から力が抜けてく。

長い夜のはじまりだった。