今日は俊太郎さんのお座敷に呼ばれている。
あの日、俊太郎さんが似合うと言ってくれた赤い反物で作った着物に袖を通すと、なんだか気恥ずかしくてつい笑みがこぼれてしまう。
(俊太郎さん気がついてくれるかな…)
ウキウキしているのを、花里ちゃんにからかわれながら、私はいそいそと揚屋に向かった。
お座敷に入る前に、浮かれているのがバレないように、気持ちを落ち着かせる。
『○○でございます。』
襖開けて中に入ると、俊太郎さんが杯を傾けながら、微笑んでいる。
その微笑みに、落ち着かせたはずの気持ちがまた高鳴る。
『おいで…』
俊太郎さんが手を差し出して私を呼ぶ。
吸い寄せられるようにそばに行き、差し出された手に手を重ねると、優しく握りしめて横に座らされる。
『今日は何や、いつもと雰囲気がちゃいますなぁ』
私を見て、俊太郎さんの目が優しく細められる。
『どこが違うか当ててください』
杯にお酒をつぎながら私が言うと、俊太郎さんが少し考える素振りを見せて言う、
『化粧…髪型……』
『違います、もういいです』
私が、少し口を尖らせて言うと俊太郎さんがクスリと笑う。
『よう似合ってはります。』
俊太郎さんの言葉に驚いて見つめると、俊太郎さんがもう一度言う。
『その着物、思った通りようにおてる』
俊太郎さんの言葉にじわっと頬が熱くなる。
『気づいてらっしゃるのに、気づかないふりをするなんて…俊太郎さんズルいです。』
そう言って、ポカポカと俊太郎さんの肩を叩くと、俊太郎さんが困ったような笑みを浮かべて、私の手首を掴む。
『○○があんまり可愛らしいから、つい、からかいとうなってしまうんどす。』
掴まれた手首が熱い。
俊太郎さんにまっすぐ見つめられて、私は何も言えなくなってしまう。
言葉を探して俯くと、
引き寄せられて俊太郎さんの膝に倒れ込むんで、膝枕をされるように抱き止められる。
上から見下ろされて、私はその視線だけで身動きが出来なくなってしまう。
じっと俊太郎さんを見つめると、優しい手つきで頬を撫でられる。
宝物を扱うみたいな優しい手つきに、夢をみているような気分になる。
うっとりと目を閉じると、唇に一瞬柔らかな感触が重なった。
驚いて目を開けると、俊太郎さんが色っぽい笑みを浮かべている。
『そない無防備な顔見せられたら…我慢できんかった…』
そう言って、私の唇を指でなぞる。
私が真っ赤になって体をおこそうとすると、思いがけない力で押さえられて、そのまま畳に倒されてしまう。
『この着物、○○の白い肌によう映えとる…』
首筋を撫でながら言われて、私はやっとの思いで声を出す。
『俊太郎さん…駄目です…』
震える声でそう伝えると、俊太郎さんが切なげな表情を見せる。
『なんで?』
俊太郎さんの表情に胸が詰まって言葉が出てこない。
『藍屋はんの言わはるように、決まった旦那はんがいはるんか?…それとも、わてが嫌いどすか?…他に、心に決めたお人がおありどすか?』
私は黙って首を横に振りつづける。
(俊太郎さん以外に、想いを寄せる人なんているはずがない)
気がつくと、私は泣いていた。
こぼれ落ちた涙を指先で優しく拭って俊太郎さんが言う。
『島原の決まりやから?』
私が頷くと、俊太郎さんが優しく髪を撫でて言う
『○○はええ子やな…安心し…○○の困ることはせえへん…』
そう言って、涙で濡れたままの目元に口づけを落とす。
『こうして口づけして…』
目元から離れた唇が頬に額に落ちてくる。
『ほんの少し、○○を確かめるだけどす。』
口づけが唇に落とされて、深く口づけられると、体が熱くなって力が入らなくなってしまう。
長く、深く口づけられるうちに俊太郎さんの指が私の首筋から胸元に降りて、少し強引に着物合わせが開かれる。
抵抗を試みても、力が入らず俊太郎さんはビクともしない。
開かれた胸元に俊太郎さんが口づけをする。
一瞬きつく吸われて、痛みが走る。
俊太郎さんの体が離れて、私は慌てて体を起こすと俊太郎さんに背を向ける。
乱れた着物を直しながら、痛みが走った所に目をやると、着物合わせで隠れるギリギリの所が赤く色づいていた。
不意に後ろから抱きしめられて、俊太郎さんが耳元で囁く
『○○の肌には、やっぱり赤がよう似合う。』
そう言って赤くなった部分を優しくなでる。
『困らせないっていったのに…』
私がつぶやくと、
『かんにんしておくれやす…○○とわてが黙っとったら、誰にも気づかれんさかい…二人だけの秘密どす』
そう言ってうなじに口づけられて、私は甘い秘密の誘惑に抵抗出来なくなってしまうのでした。