着物を作りに呉服屋さんに行ってから、2週間程すぎた頃。
いつものようにお座敷から帰ってくると、秋斉さんに部屋へ来るようにと呼ばれた。
(なんだろう?)
お座敷の荷物を部屋に置いて、着替えてから秋斉さんの部屋に向かう。
『秋斉さん、○○です。』
襖の前で声をかけて、部屋へ入ろうと襖を開けるとすぐに綺麗な着物がかけられているのが目に入る。
着物に見とれて固まっていると、秋斉さんがクスクスと笑いながら言う。
『そんなとこにおらんと、中にお入りやす』
秋斉さんの声で我にかえって、私は慌てて襖を閉めて部屋の中へと進む。
『さっき呉服屋から届きましたんや』
そう言って、秋斉さんが満足そうに着物を眺める。
秋斉さんが私に似合うと言ってくれた、淡い水色の反物で作られた着物だった。
『…綺麗…』
私がつぶやくと、秋斉さんがふわりと笑う。
『あきまへん…まだこの着物は未完成どす。』
秋斉さんの言葉の意味がわからず、首を傾げて秋斉さんを見つめると、そっと頬をなでられる。
『この着物は、○○はんが着た時に一番美しゅう見えるように作られたさかい、○○はんが着てへん今は未完成や』
秋斉さんに見つめられて、胸がドキドキと音をたてる。
『着てみておくれやす。』
秋斉さんの言葉に頷いて、着物を手にとって羽織ってみる。
『どうですか?』
着物を羽織って秋斉さんに向かって両手を広げてみせる。
『中の着物が邪魔どすなぁ』
そう言われて、私はどうしようかと考える。
『えっと…じゃあお部屋で着替えてきますね…』
そう言って、部屋を出ようと振り返ると、秋斉さんが私の腕を掴んで引き寄せる。
そのまま秋斉さんに抱きしめられて、片手が羽織った着物の中に滑り込んで来る。
背中に秋斉さんの手の感触がしたかと思うと、あっと言う間に帯がほどかれる。
解かれた帯が畳の上に落ちる音がする。
秋斉に抱きしめられているので見えないが、秋斉さんが少し腕を緩めたら着物がはだけてしまう。
心臓がうるさい位に音をたてる中、秋斉さんを見上げると、指先で唇をなぞられる。
薄い笑みを浮かべた秋斉さんの表情から目が離せなくなって見つめていると、不意に抱きしめられた腕が緩んで、着物の前がはらりと開く。
肌襦袢が露わになって、私は慌てて着物の前をかき集める。
恥ずかしさに俯くと、顎に手を添えて持ち上げられる。
ゆっくりと下りてくる秋斉さんの唇が私のそれに重なると、舌先がスルリと忍び込んでくる。
最初はゆっくり何かを確かめるように動く舌が、次第に激しさを増して、私は思わず吐息を漏らす。
激しい口づけに翻弄されて、膝から崩れ落ちそうになってしまう。
そっと着物を集めた手を外されて、再び前がはらりと開くと肌襦袢の合わせにそって秋斉さんの指が滑る。
初めて感じる刺激に耐えきれず、秋斉さんにしがみつくと、そのままゆっくりと畳に倒される。
着物の裾が重なり合ったまま畳に扇のように広がって、肌襦袢だけがわたしの体を隠している。
『綺麗やな…』
上から見下ろしている秋斉さんが呟いて、柔らかく目を細める。
『どんなに上質な着物かて、かなわへん』
そう言って、首筋から胸元まで指を滑らし、再び口づけをくれる。
体が燃えるように熱くなって、私は秋斉さんの着物を掴む。
口づけが首筋に落とされ、舌がゆっくりと動くのを感じて、思わず声を漏らすと、秋斉さんがクスリと笑って耳元で囁く
『あんまり声だしたら、誰かに気づかれてしまいますえ』
意地悪な言葉に、秋斉さんの胸を叩くと秋斉さんがクスクス笑う。
『声が出えへんように、わてが口をふさいどきます。』
そう言って、口づけで口をふさぐ。
肌襦袢の合わせに、滑り込んだ手の熱さが私の体をさらに熱くして、私は与えられる刺激にいつしか意識を手放してしまうのだった。

しばらくして気がつくと、私の上に着物がかけられている。
ふと隣に目をやると、秋斉さんが愛おしそうに私を見つめていた。
さっきまでの出来事を思い出して、恥ずかしくなって顔を隠すと、秋斉さんが優しく囁く、
『その着物を着た姿も、着物の下に隠された肌も、見せていいんはわてだけどすえ』
その言葉に頷くと、秋斉さんは満足そうに笑って、私の額に口づけを落とすのでした。