お使いの帰り道、私はとても困っていた。
私の足下には一匹の子猫が、私を見上げてちょこんと座っている。
(うぅっ…可愛い…でもまさか置屋に連れて帰る訳にもいかないし…)
私はしゃがみこんで、猫にしゃべりかける。
『ごめんぬ…連れて帰ってあげられないんだ…』
そう言って立ち上がって歩き出すと、少し後ろをついて歩いてくる。
私が立ち止まると、前に回り込んで私を見上げる。
私ががっくりと肩を落とすと、後ろから声をかけられる。
『○○、そんな所でなにしてるんだい?』
振り返ると、慶喜さんが不思議そうな顔をしながら近づいてくる。
『慶喜さん…実は…』
私が足下に視線を落とすと、慶喜さんも私の足下を見る。
『わぁ、可愛い猫だね』
猫を見た慶喜さんの顔がほころぶ。
『はい…懐かれてしまったみたいで。でも…置屋に連れて帰る訳にも行かないので…』
私が困っている理由を伝えると、慶喜さんが足下の子猫をひょいと抱き上げた。
『なるほどね〜。…おっこいつ、べっぴんさんかと思ったら、男前だったのか〜』
そう言いながら、慶喜さんが猫に頬ずりする。
『このまま放っておくわけにもいかないし…』
慶喜さんに抱かれてゴロゴロと喉を鳴らす子猫を見つめると、慶喜さんが楽しそうに言う。
『こいつ、私と一緒で女を見る目があるね、○○を選ぶなんて私と気が合いそうだな』
慶喜さんの笑顔に胸がドキドキしてしまう。
『よし、決めた。こいつは私が連れて帰るよ』
『えっ!』
突然の決定に驚いてしまう。
『そんな簡単に決めちゃって大丈夫なんですか?』
私が心配すると、慶喜さんはクスリと笑って言う。
『大丈夫。…でも、○○に一つお願いがあるんだ。』
『お願いですか?』
私が首を傾げると、慶喜さんが頷いて言う。
『そう。○○にしかできないこと。3日に一度は会いにきて』
慶喜さんのお願いを聞いて、私は笑顔で頷いた。
『はい!子猫が寂しくないように、毎日でも!』
そう答えた私に、慶喜さんが首を振る。
『違うよ、○○が会いに来るのは子猫にじゃない。私にだよ。…でも、毎日来てくれるなら、通い妻だね。いっそ、…嫁に来る?そしたら子猫も一緒だしね。』
そう言って微笑む慶喜さんの笑顔と言葉に、私は何も言えず赤くなってしまうのでした。