今日は秋斉さんのお供で、京のはずれにあるお寺に来ている。
秋斉さんは住職さんとお話されているので、私は庭を眺めながら待たせてもらっている。
(お供で来たのに、私何にもしてないけどいいのかな?)
そんな風に考えていると、後ろでクスリと笑う声がする。
振り向くと、扇子で口元を隠した秋斉さんが優しい目で私を見ている。
『秋斉さん、お話終わられたんですか?』
『えらいお待たせしてすんまへんどしたなぁ。住職さんがお話好きやさかい、予定よりようけ時間かかってしもて…』
そう言いながら、立ち上がろうとする私に、そっと手を貸してくれる。
秋斉さんのさりげない気遣いに、私はいつもドキドキしてしまう。
『ありがとうございます。…じゃあ、帰りましょうか。』
私が立ち上がってそう言うと、秋斉さんはちょっと微笑んで言う。
『まっすぐ帰ってもえぇんやけど、少しだけ寄り道してかまいまへんか?』
『はい』
私が頷くと、秋斉さんは嬉しそうに笑って私の手をとった。
『ほな、行きましょか』
二人で住職さんにご挨拶してお寺を出ると、秋斉さんは来た道とは逆に向かって歩いて行く。
私は少し後ろをついて歩きながら、秋斉さんに尋ねてみた。
『秋斉さん、今日はどうして私を連れて来たんですか?』
『急にどないしはりました?』
秋斉さんがチラッと私を見る。
『あの…お供なのに、荷物を持つわけでもないですし…ご住職とのお話も…お二人で済まされてましたから…』
私がそう言うと、秋斉さんは優しく微笑んで私の手を握る。
『○○はんにご用があるんは、今からどす。』
そう言って、そのまま手をつないで歩き続ける。
(今から?ってことは、寄り道の先でってこと?)
『今から、どこへ行くんですか?』
『秘密どす。』
そう言って秋斉さんは、私の反応を楽しむような笑みをうかべる。
その笑顔を見て、私はますますわからなくなってしまう。
そのまま、しばらく歩くと秋斉さんが急に立ち止まる。
『○○はん、申し訳ないんやけど、ここからしばらく目つぶってもらえるやろか?』
『えっ?』
突然の申し出に戸惑っていると、秋斉さんが私の肩に手を添える。
『大丈夫。こないして、わてが○○はんをちゃんと支えて連れて行きますから』
そう優しく囁かれて、私が戸惑いながら目を閉じると秋斉さんがゆっくり歩き始める。
秋斉さんに支えられながら、なだらかな坂道を上がっていく。

しばらく上ったところで、秋斉さんが立ち止まる気配がする
『もう、目開けてよろしゅおすえ』
秋斉さんの言葉に、ゆっくりと目を開けると、
少し下に一面のすすきの原、その向こうに夕焼けに染まる京の町が見える。
『綺麗…』
思わず呟いた私の言葉に、秋斉さんが優しく微笑みながら言う、
『綺麗ですやろ…。わての秘密の場所なんえ…この時期にしか見られへんこの景色を○○はんと一緒に見たかったんどす。』
思いがけない言葉に驚いて秋斉さんの顔を見上げると、ほんのり頬が赤くなっている。
私の視線に気がつくと秋斉さんは、はにかんだ笑顔をみせて言う。
『柄にもないこと言うてしもたやろか?』
私が首を横に振ると、秋斉さんがそっと私の頬に手を添えて唇に触れるだけの口づけをくれる。
私が、頬を真っ赤にすると秋斉さんがクスリと笑う。
『ホンマに…可愛らしいお人や』
そう言いながら、愛おしそうに私を見つめる。
『秋斉さん…』
恥ずかしくなって、私は秋斉さんの胸に額をあてて、秋斉さんから顔が見えないようにする。
すると秋斉さんが優しく抱きしめてくれる。
『○○はん、また二人でここへ来てくれはりますか?』
私が頷くと、秋斉さんは抱きしめた腕に少し力をこめる。
私達は夕焼けに染まる京の町を背に、お互いの気持ちを確かめるように何度も口づけを交わしたのでした。