私は龍馬さんからの文を握りしめて、必死で走っていた。
龍馬さんからの文には、翔太君が怪我をした、と書かれていた。
文を読めない私は、秋斉さんにお願いして内容を確認するとすぐに置屋を飛び出してきたのだ。
(翔太君…嫌だよ…どうしよう…翔太君に何かあったら私…)
私が必死になって翔太君達が泊まっている宿屋に駆けつけると、丁度龍馬さんが外に出てきたところだった。
『龍馬さん!翔太君は?翔太君は無事ですか?』
走ってきた私を見て、龍馬さんが驚いている。
『○○、おまん島原から走って来よったんか?』
私は肩で息をしながらうなづくと、もう一度龍馬さんに詰め寄った。
『そんなことより…翔太君は!』
龍馬さんは私を落ち着かせるように、背中をポンポンと撫でながら言う
『翔太は部屋に…』
そこまで聞いて、私は宿屋に入って翔太君のいる部屋へ急いだ。
『翔太君!』
襖を開けて部屋に飛び込むと、肩に包帯を巻いた翔太君が目に入った。
いきなり部屋に飛び込んできた私を見て、翔太君は目を見開いて固まっている。
『起き上がって大丈夫なの?痛む?…何かいる物は?』
翔太君の側に駆け寄って矢継ぎ早に質問を浴びせる。
私は、パニック状態で翔太君の手を握って泣きそうになってしまう。
『○○…ちょっと落ち着け』
泣きそうになっている私の肩に手を置いて、翔太君がしっかりした口調で言う。
『まず、ちょっと服着るから…』
その言葉に、あらためて翔太君の姿を見て慌ててしまう。
包帯を巻く為か、翔太君は上半身の着物をはだけた状態だった。
『きゃっ!ごめんなさい!』
真っ赤になって俯くと、翔太君が手早く着物を整える音がする。
(どうしよう…上半身だけだけど、翔太君の裸見ちゃうなんて…)
一瞬見た翔太君の逞しい体を想像して、ドキドキしてしまう。
(翔太君…あんなにたくましかったんだ…)
そんなことを思って私は慌てて、首を振って想像をかき消した。
『○○…もう顔上げて大丈夫だから』
翔太君の声に私がゆっくり顔をあげると、翔太君がちょっと照れたように笑っている。
『まさか○○が入ってくると思ってなくて…ごめんな。』
『ううん。私こそ、何にも言わず急に入ったりしてごめんなさい…翔太君が怪我したって知って…心配で…』
私が言うと、翔太君はちょっと苦笑いをうかべた。
『怪我って言っても、全然大したことないから…稽古中にさ、ちょっと張り切りすぎてヘマしちゃって…打ち身だから心配すんなよ』
翔太君が、決まり悪そうに笑って言う。
その笑顔を見て私もホッとして少し笑ってしまう。
『良かった…翔太君に何かあったらどうしようって…』
言いながら、自分の体が震えていることに気づく。
『あれ?ホッとしたからかな…急に震えが…』
そう言って、翔太君に笑いかけようとすると、翔太君が怪我をしていない方の腕でグイッと私を抱きしめた。
頭を抱えこまれて、翔太君の胸に顔をうずめるような体勢になってしまう。
『ごめんな。心配かけて…○○が来てくれて、すげー嬉しかった…』
頭上から聞こえる翔太君の声と、耳元で聞こえる鼓動に、不安と緊張が消えて行くのがわかった。
『会いに来てくれてありがとう…怪我が治ったら、今度は俺が○○に会いに行くから…』
私は翔太君の言葉に頷きながら、翔太君の鼓動を確かめるように再び頬を寄せるのでした。