*道場*
沖田さんは
剣道の道場で師範をはじめた。
2人で色々考えたけど
他に仕事が見つからなかった。
………
「用心棒ならできますよ」
「よ、用心棒…?」
(ガードマンとか?…なんか違う…)
「この時代にはいないですか?」
「そうですね…」
「子どもは好きですよ」
「………」
(…保育士?)
(素敵だけど…資格ないし)
「困りましたね…」
沖田さんは頭を抱えた。
「剣術なら誰にも負けない自信があるんですけどね…」
ぽつりと呟く。
「剣術…あ!!それだ!!」
それから近所の道場で
師範のお手伝いをはじめたのだ。
………
子どもから大人まで
たくさんの人が通っている道場。
子どもにはすごく人気だし
大人たちからは
尊敬の眼差しを向けられている。
沖田さんの太刀さばきは
剣術をよく知らない
私でも見惚れるほど美しい。
(しかも、瞬息だし…)
稽古時間が終わったのに
なかなか帰ってこない
沖田さんを迎えに来た私は
道場でひとり竹刀の素振りをする
沖田さんを見つけた。
「沖田さん!!」
「あ、○○さん」
私の声に振り返る沖田さん。
「夕飯が冷めちゃうよ」
「すみません、つい素振りに夢中になってしまって」
恥ずかしそうに頬を染める。
「ふふ、楽しいんですね」
「そうですね、刀がなくなっても剣術がこうして続いていることは、とても嬉しい…」
少し遠い目をしてる。
きっと幕末を
思い出しているのだろう。
道場の隅に2人で腰をかけた。
ふと沖田さんが口を開く。
「寝てばかりの生活で身体がなまってしまったみたいで…」
「うん…」
「はじめてお弟子さんに負けてしまったんです」
「………」
横目で沖田さんを見ると
すごく悔しそうな顔をしてる。
「ひょっとして…それで素振りをしてたんですか?」
「………」
沖田さんの
顔がみるみる赤くなる。
「あはは、沖田さんすごい可愛い」
「わ、笑わないで下さい」
私は笑いを必死でこらえた。
「負けず嫌いなんですね、でも、そういう沖田さん好きです」
「………」
沖田さんは顔を赤らめたまま
小さな声で呟いた。
「この時代がどんなに平和でも、あなたを守れるだけの力を持っていたいだけです…」
「…え……?」
今度は私が恥ずかしくなって
顔を真っ赤にする。
すっと沖田さんが立ち上がり
私に手を差し出した。
「帰りましょう、私たちの家に」
「……うんっ」
私は笑顔で
沖田さんの手を取った。