今朝は朝から曇り空で、ちょっと肌寒かった。
寝癖がなかなか直らなかった私は、上着も傘も持たずに学校に行く時間ギリギリに家をでた。
「・・・・う〜、間に合うかなぁ・・・」
時計をチラリと見ると、あと少しで予鈴がなる。
「あと1分・・」
廊下を走って滑り込むように教室に入った。
教室に入って最初に目が合ったのは、翔太くんで・・・・・
何かを言おうとしてたけど、私は遅刻ギリギリだったこともあって、ふぃっと目を逸らして席に着こうと窓際の自分の席に向かって歩いていった。
その時外の景色が目に入った。
(雨?・・・あっ!傘・・・持ってこなかった)
「どうしよう・・・」
ポツンとつぶやいた声は、本鈴の音と重なった。


シトシトと降り続く雨は止む様子を見せなかった。
まるで自分の心を映しているかのように・・・・
翔太くんは何度も私に声をかけようとしていたけど、卒業も間近、休み時間になるたびに翔太くんは呼び出されていた。
私もなんとなく距離をあけて・・・
手元には、翔太くんからもらったとんぼ玉をキュっと握り締めて・・・・
(・・・・・刹那いなぁ・・・・)
視界がまた少し歪んだ・・・・・・


放課後、窓際で外を見つめて、ふぅとため息をついた。
(雨、止まないよねぇ・・・・それに・・・待っててもしょうがない、帰ろう・・・・)
私は鞄をかかえて、学校を出て行った。

学校を出てすぐ雨脚が強くなり、あとちょっとで家につくところだったけれど、
私はお店の軒先に雨宿りをすることにした。
ハンカチでポンポンと濡れた箇所をふきながら、またため息をおとす。
私は泣きそうになる目元を押さえて、視線を落とす。


一昨日、初めて翔太くんと(一方的に)ケンカした。
もともと人気があった翔太くん。幕末から帰ってきてから以前よりもっとモテるようになった。
翔太くんの気持ちを疑うことはないけど、一昨日出くわした場面は・・・・・・・

それは女の子から告白を受けていた翔太くんで・・・・
その日は、一日体調不良で気分が優れなかったうえに、見てしまったのは・・・・・・・
学年で一番人気(女子談)の女の子が泣きながら翔太くんに抱きついた場面で・・・

その日は翔太くんに黙って早退した。
携帯も電源を切って・・・・
翔太くんを避けるように・・・・・
大粒の涙を流して・・・・・



にっこりと微笑む龍馬さんの笑顔に、また泣き出してしまった。
ポンポンと頭を叩く龍馬さんの優しさに、やっと落ち着きを取り戻すと、ポツリポツリと理由を話した。
「・・・・・・全く、世話のかかる子達じゃのぅ・・・しかし、翔太はこんなに○○に思われて幸せじゃ」
龍馬さんの言葉に、かぁっと顔が赤くなる。心配してくれた龍馬さんがお見舞いにきてくれた。

「・・・・そんなこと・・・」
ない・・・といいたかったけど。
くしゃくしゃを頭をなでてくれる龍馬さん。
心配はいらん、といって微笑んでくれた。
「とにかく養生して、早う元気な○○になるんじゃ」
そういい残すと、また来るといって帰っていった。
次の日、私は熱を出した。

一日休んだ私は、少しだけ気持ちもすっきりして学校に行く予定だったが、
結局、バタバタして行くはめになった。



ふっと、見ると鞄を雨よけにして走ってくる人影が見えた。
(・・・・!!翔太くん!ど、どうしよう・・・・)
いたたまれなくなった私は、駆け出そうとした時、
「○○!!待てよ!!」
翔太くんの声に、動きを止めた。
軒下に滑り込むように入ってきた翔太くんは、私の行動を知ってか、強い力で私を抱き寄せた。
耳元で呼吸を整えるその吐息に、かぁっと耳が赤くなる。
息が整った翔太くんは、ますます腕に力を込めて私を抱きしめた。
「しょ・・・たく・・」
「嫌だ!離さない!」
翔太くんの声の大きさにちょっとビックリした。
「あ、あの・・・」
「誰にも○○は渡さない!!」
「!!!えっと・・・・あの・・・翔・・太くん?」
なにがなんだかわからずに、きょとんとした私は、戸惑いながらもそうっと翔太くんの背中に腕をまわした。
それに安心したのか、腕の力がふっと軽くなった。
「・・・・・えーと、あの・・・どうしたの?渡さないって・・・・?」
私の問いかけに、翔太くんの体が少しビクっとした。
「・・・・・・・・・・・くそ!またからかったな・・・」
「????」
話の見えない私はこっそりと翔太くんの顔を見ると、耳も首まで真っ赤な翔太くんが見えた。



話を聞くと、どうやら龍馬さんが翔太くんをからかったらしく。
「○○を泣かせるなら、わしがもらう」と言われたらしい。
バツの悪そうな翔太くんは、真っ赤になりながら思い出したように私に今度は問いただした。
「で?なんで○○はオレを避けてたんだよ。オレがどんな気持ちだったか・・・」
「ごめん・・・・えーと・・・・その、見ちゃったの」
「見た?」
「うん。・・・・告白されて抱きしめられていたとこ・・・・」
私は、また思い出して視線を外した。
「こっち見ろって!!」
翔太くんが、強めに私を向きなおさせた。
「○○、オレ約束したよな、お前を悲しませない、お前を守るって」
「・・・・うん」
かぁっと赤くなる。
「オレには○○だけしかいらない。○○だけが好きだ」
「翔太くん・・・・」
「泣くならオレの前で泣けよ。言っただろ、泣き止むまでそばにいるって。オレがいないところで○○がなくのが嫌なんだって。」
「うん」
翔太くんの言葉に、また涙が浮かんできた。翔太くんはその涙を優しく指で拭ってくれる。
「好きだよ、○○」
そう囁く声にうっとりと目をつぶると、柔らかな唇がそっと重なった・・・


雨脚が弱まり、帰ろうとした時、「くしゅん」っと私がくしゃみをした。
「大丈夫か?熱は?」
「大丈夫だよ、もう」
「だけど・・・・ほら着ておけよ。」
そういって翔太くんは、自分の学ランを私に着せてくれた。
「病み上がりだし、またぶり返したら○○に会えないだろ。」
にっこり微笑む翔太くんに、
「ありがとう」
といって微笑み返した。

ふわりと柑橘系の香りがする。
翔太くんの香り。
「なんだか、翔太くんに抱きしめられてるみたい」
ふふふっと笑うと、真っ赤になった翔太くんが、
「今日、うちに来いよ。」
と指を絡ませた手をきゅっと握ってきた。
「明日は休みだし・・・・泊まっていけよ」
「・・・・・・・うん」
お互いテレながら繋いだ指をきゅっと握り返した・・・・・・・